周りとの差異
毎日が楽しすぎて、もう幸せだよ。ありがとう。
こんなドラマが流行りなのか? なんで他人の幸せで自分が幸せになった気になれるのかよ。虐待された子供のドラマ見たら虐待された気になるのか? そんなの不公平にも程があるだろ。
「おはよう! 沙奈ちゃん!」
「夏樹ちゃん、おはよう」
今日も休みは誰もいない。みんな笑って話してる。話しかけてくるのは大体夏樹ちゃんだ。初めこそみんな珍しがって私の周りに集まってたくせに。
「おはようございます、はい、早く席について。」
「せんせ〜、今日のネクタイいいですね!」
担任の古川先生、今日も大人気。微笑んでるけど本心はどうだろうね。喜んでるのか、めんどくさがってるのか。
一時間目からこの先生だからみんな笑ってたのか?
「星野、あとでちょっと職員室な」
「はい、わかりました」
何の話だよ。あとそこらの女子、勝手に羨ましがんな。一瞥して席に着く。
私の好きな本はどれも獣の出てくる。予測不能のストーリーはいかに興味深いものか、筆者は何を考えて書いているのか、非常に気になる。どこか客観的に読んでいる自分は、涙を流しながら読んでいる人を見て切なくなるものだ。何をしたら涙が出てくるのだろう。泣きそうとかそういう感覚を知りたい。
「沙奈ちゃん、授業終わっちゃったよ」
「え、嘘。初めて寝ちゃった」
「珍しいね、寝不足?? 古川先生のとこいかなくていいの??」
「そうだった、ありがとう。行ってくる」
休み時間何分すぎたんだ? まあいいか。
「古川先生、何の話でしょうか」
「あー、星野。ちょっとこっち......」
「星野さ、最近家大丈夫か?」
は?? 何こいつ。
「どういう意味でしょう?」
「いや、ご両親あんまり家に帰れてないので娘の様子を教えてくださいって電話もらったから。ずっと一人で過ごしてんのか?」
「まあ、はい。元気にしてると言っておいてください。すみません。直接聞いてくればいいものを」
「受験生だし、まだ高校生なのにずっと一人で過ごしてるってなかなかだぞ」
「大丈夫です。慣れているので。あの、もういいですか」
「まあ、成績も抜群だし問題はないんだけど、いつも一人で行動してるし、馴染めてるか?」
いや、そういうことは聞くなよ。デリカシーなさすぎ。馴染めてないのはわかるだろ。
「それも慣れているので大丈夫です。もういいですか?」
「まあ大丈夫ならいいんだけど。何かあったらすぐ言えよ?」
「はい、何かあったら、言います。それでは」
何かあったらな。そんな特別なことないけど。
お手洗い行っとこ。
「沙奈ちゃんってさ、可愛いよね。でもなんか話しかけにくいっていうか、ちょっと不思議なオーラがあって近付き難いよね」
陰口かよ。
「そうだ、知ってた?! 高橋拓海って沙奈ちゃんのこと好きなんだって! 昨日直也が言ってた!」
「あーいうミステリアスな子が好きな人っているよね。可愛いし。でも高橋くんが沙奈ちゃん好きってやばくない? これ知られたら沙奈ちゃんなんも悪くないのにたくさんの女子に嫌われちゃうかもよ?」
「そうだね、でも私たちが言わなきゃ大丈夫だよ。高橋くん、直也にしか言ってないって言ってたし」
「うん、双子の片割れくんにもちゃんと言っといてあげてね」
自分達だけが秘密でも知ってるつもりかよ。誰だっけ、高橋って。同じクラスか? 私のこと何も知らないくせに何が好きだ。高校生ってどうしてこうも恋愛にしか興味がないんだよ。つまらない。だから馴染もうなんて思わない。
寂しい...とかそういうこと言わないし。別に寂しくないし。自分一人で生活する方が楽で自由だから。同情とか心配とかそういうのが一番嫌いなの。そもそも同情されることも心配されることも何もない。でも愛とか感動もないのも事実ではある。
日常の中で他人が同じ物事をどう考えているのか気になり、より暗いものをこの物語の題材にしようと思いました。私自身まだ高校生であり、経験が少ないので"痛い"話が多いかもしれませんが、皆様の生活の中でこのストーリーの存在意義があると思えるような、そんなストーリーにしたいです。一つ一つは短いですが、沙奈の生活はまだまだ続くので楽しみにしていてください。