或る怪物
愛だけすこし億劫。だれかのそばにいるのが人間らしい。あまり孤独ではないけれど正しい感情を持ちあわせてはいないと。みょうにくっきりした寂寥感を肯定したくはなくて。夜。徒歩三分のコンビニは天使みたいに光る。メロンソーダはカマキリの体液みたいな。生きていると殺している、街灯のやけに明るい場所、十字架を背負いからだを引きずり灼かれるために歩くような。思い出。脳に焼き付いているのは人生の千分の一くらい。きっとすり減っていって。
人間。神様の息吹に包まれて。わたしは黒い生活をだきながらねむるわ。めざめ、いつ訪れるかわからないもの。血液がすこしずつ侵食されていく。虫。
死に体な夢見心地。だれかのために生きようとすれば、するほど、孤独になる。妬みのかたちをした生き物。だれかのそばにいる生き物。吐いた血で育った華、赤褐色の憂い、味のする皮膚……外皮、内皮、五臓六腑の扱い方。
神様だけが知っていて、
わたしたちは知らない、
或る怪物の在処。