08話 汚れちまった悲しみに
ブクマ100人突破、ありがとうございます。
毎年賽銭してたのになぁ。
やっぱり5円玉じゃ効果がなかったらしい。
そしてこのパワーワードは暴走中の小桜さんをも制止させて硬直。そして部屋に入ってきた看護師さんが若い男女2人っきりと知るや否や、ニヤニヤしながら茶化しはじめる。
「あらあら羽生く~ん。私のオムツ交換がイヤだから、彼女にやってもらってるのかな?」
「そんなマニアックなプレイしてません!」
なぜヒップ測定を拒み、食欲がないと嘘を付いたのか、その理由がこれだ。怪我のせいでベッドから動けず、病室から出られないので当然ながらトイレにも行けず、そのうえ腰骨損傷でおまるさえも選べず、赤ちゃん以来のオムツ着用する羽目になってしまったのだ。
勿論これは仕方のないことだが、トイレ以外で致す行為にどうしても慣れることができず、しかも出したものは当然ながらオムツに残りっぱなしで、そのせいで出したくないという思いから食欲激減。ダイエットと割り切って小食を貫いているのだ。
「羽生く~ん、気持ちは分かるけど、ちゃんと食べなきゃ栄養不足で治りが遅くなるし、便秘になっちゃうわよ~」
「分かってます。分かってますけど、僕15歳なんですよ?」
「そうね~、分かるわ~、でも腰をちょ~っと浮かす姿勢は止めようね~。腰によくないよ~」
「だって感触が残ったままで気持ち悪いんです」
「怪我なんだから堂々としていいのよ。教室でウ●コ漏らした子じゃあるまいし」
「そんな絶体絶命な子と一緒にしないで下さい! それもう〝今すぐ地球爆発しないかな?˝って悟り顔で神に懇願する事態ですよね!?」
傍から見れば笑い話だけど、当事者としては死活問題だ。
入院生活は大変と覚悟していたけど、まさかここまで不便で便ができなくなるとは夢にも思わなかったよ。
「まぁまぁ落ち着いて羽生く~ん。そう悲観的にならずに、この状況を楽しむくらいの気持ちになった方がいいよ~」
「このオムツ状態をどう楽しめと?」
「そうね~。彼女と話してる最中に、こっそりウ●コチャレンジしてみるとか?」
この提案に小桜さんがバッと僕から離れる。
ヤバイ、涙が出そう。
「そんなチャレンジするくらいなら舌を噛み切って自害します! そんなアクロバティックな変態そうそういませんから!」
「ん~、確かにマニアック過ぎて羽生くんには早いかな~。彼女さんはどう思う? って、あれ?」
小桜さんを見てみたら、顔がもう真っ赤。
爆発寸前になっている。
「落ち着いて小桜さん! ウ●コチャレンジなんてしてませんから!」
「そうよ~、羽生くんのお尻はお姉さんが毎日綺麗にフキフキしてるから大丈夫よ~」
「あんたちょっと黙っててもらえますか!」
そんな酷いやりとりの後、小桜さんがポーチを取り出して、とある物を僕に手渡してからペコペコと頭を下げまくりながら逃げる様に退散していったのである。
なお、その手渡された物を見てみると、
口臭ケアサプリ(ペパーミント味)
これを尻に入れろと?
どうやら手持ちの消臭アイテムがこれしか無くて、咄嗟に渡してきたらしい。
そんな間違った気遣いに苦笑しながら、現状を再認識する。
今度こそ、小桜さんがお見舞いに来ることはないだろう。
てゆーか次に会ったら、どんな顔すればいいの?
あとこの怪我が完治したら、すぐ横で爆笑している看護師をブン殴ろう。
そう心に誓ってから、恒例のオムツ交換となったのである。
ちょっと下品かなーと思いましたが、しょーもない下ネタとして笑ってくれたら嬉しい。あと「汚れっちまった悲しみに」は、中原中也の詩で、350篇以上の詩を残した有名な詩人です。