07話 死の宣告
ずいっ、ずいっ
メジャーを構えながら迫ってくる小桜さんは目がグルグル・口もアワアワ開きっぱなしのパニック状態で、もう本人さえも自分が何をしているのか分かってない感じだ。そんな謎の執念と見えざる力に突き動かされる小桜さんにもう何をいっても無駄と悟り、諦めてさっさと終わらせるしかない。
「分かりました。ただゆっくり、ゆっくりでお願いします!」
こうして小桜さんがベッドに腰を落としてから身を寄せ、服越しに僕の胸元を触りながらバスサイズを測り始める。
近い、くっつきそう。
もしこの状況で「はぁはぁ」吐息を漏らせば確実に聞こえてしまうので、バスト測定に夢中な小桜さんに気付かれぬ様、理性を保つ為に脳内で羊を数え始める。
羊が一匹、二匹、三匹……
と、ピョンピョン柵を飛び越える光景に精神が落ち着いていくと思っていたら
さわさわ(僕の胸板を弄る小桜さん)
羊の群れが出現。ピョンピョン飛んでいた柵がバギバキに踏み潰しながら脳内を埋め尽くし、もう何を数えていいのか分からない!
そうしてバストが測り終わり、大きな溜息が漏れる。
これがあと二回もあるのか。
だけど少しは慣れたし、このままウエストとヒップを……、
やばい。
やばいやばいやばい!
ウエストはともかくヒップはヤバい!
自分の状況を思い出すのと同時にウエスト測定終了。そうして小桜さんの手がお腹からさらに下がろうとした時、慌ててその手を掴む。
「お尻は自分で測ります!」
女の子に触られて恥ずかしいとか、股間がアレとかな理由じゃない!
知られたら男としての、人としての尊厳を失ってしまう!
だけど小桜さんは遠慮しないでといわんばかりの反応で、てゆーかまだテンパっているご様子で、今は僕のスリーサイズを測るという使命しか頭にない感じだ。
「すみませんメジャー没収します!」
そうして強引にメジャーを取り上げようとしたが上半身しか動かせないので小桜さんを捕まえることができず、それでも腕を巧みに振り回してけん制。そんな睨み合いの均衡状態の末に、小桜さんがメジャーを差し出して、納得してくれたんだと安心して受け取ろうとしたら、
「なっ、フェイント!?」
油断した隙に小桜さんが胸元に潜り込み、小桜さんの顔が僕の股間目前に出現する。
「分かりました測っていいです! でも息を止めて! 特に鼻息は絶対禁止でお願いします!」
そう念入りにお願いをして、あとは神に祈りながら事なきを得られるのを願うばかり。毎年お参り&賽銭をしている地元神社の神様に改めて懇願していたら、病室の扉が開いて、
「羽生く~ん。オムツ交換の時間よ~」
看護師さんからの死の宣告に、僕は天を仰いだのである。
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