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55話 鮮血の結末

 この提案に思わず月山さんの胸部をガン見してから慌てて視線を戻すと、説明が始まる。


「緊張で胸がドキドキしっぱなしで、だけど握手している時はドキドキが治まるので、それなら手以外で、できるだけ心臓に近い場所を握ってくれれば大丈夫かなって」


 成程、実に合理的な理論だ。

 月山さんはどう見ても小学生には見えず、女子高生と言われたら信じてしまう程の容姿で、しかも小桜さんの胸よりも豊満っぽくて、つまり82より大きいということではないだろうか?


 そんな規格外な小学生を合法的に触れる機会がおとずれること自体が奇跡であり、つまりこのチャンスを逃してしまえば、この後悔を一生背負いながら生きていかなければならないという苦行の日々が待ち構えていて、つまり僕は今後の人生を左右し兼ねない究極の選択を迫られていることになるのだ。


 ここは紳士的に断るべきか?

 それとも男らしく堂々と胸を鷲掴みか?

 てゆーか男らしく胸を鷲掴みって何?


 と、己の経験の乏しさを呪いながら運命の決断に苦悩していたら、



 むんず!(月山さんの胸、握られる)



「どう萌香? 落ち着いた?」

「えっと、落ち着いた気がする」

「じゃあおにーちゃんは肩を握ってみて」

「あっ、はい。分かりました」


 月山さんの背後から両手が伸びて、抱き付くように月山さんの胸が掴まれる。

 ですよねー、胸は同姓の美羽ちゃんですよねー。


 内心ガッカリの拍子抜けな生返事をしてから肩を握ると、月山さんが椅子に座ってリンゴの皮剥きがスタート。

 月山さんの表情は真剣そのもので、物凄く遅い手付きながらもリンゴの皮は確実に剥けていき、そんな頑張る姿を純粋に見守ろうとしたのだが、隙を禁じえぬ二段構えのラッキースケベが襲ってきたのだ。



 目の前に、鷲掴みにされた胸がある。



 後ろからガシッと持ち上げるように掴まれているせいで月山さんの胸の輪郭がクッキリと分かってしまい、見てはいけないものを見ているような背徳的な気分になってしまう。

 肌色成分ゼロだけど、もう六月という夏間近な季節で服が薄くて、凝視すれば薄い生地の先にあるものが見えるのではという淡い期待がムクムクと膨れっぱなしなのである。


 落ち着くんだ自分!!

 折角頼れるお兄さんという地位を積み上げてきたのに、もし胸の凝視に気付かれでもしたら一瞬で信頼関係が崩壊。純粋で多感な小学生女子から汚物を見るような視線を浴びせられることになれば全治三ヵ月ではすまない心の傷を負ってしまうだろう。


 いやでも月山さんはリンゴに夢中で、美羽ちゃんも背後だから僕の目線には気付けないという状況で、ほんと男という生き物はエロい場面に出くわすと問答無用で抗えなくなると思い知りながら、念のため他に視線がないかを確認してみると、



 じーー(小桜さん、瞬きせずにこちらを凝視)



 ようやく小桜さんの存在を思い出して、しかも森谷さんまで腕組みしながら笑顔の仁王立ちで、一体いつ病室に入ってきたの?


 小説で浮気バレのシーンがあると大概は主人公が面白おかしくボコボコにされて、その描写がざまぁ展開で面白いのだけど、もう僕はそれを笑うことはできないだろう。

 てゆーか中には流血沙汰のバッドエンドがあったけど、流石にそれはないよね?

 と、思っていたら、


「お兄さん! 剥き終わりました!」



 グサッ!!



 ずっと下を向いて集中していた月山さんが嬉しそうに顔を上げると、それと連動して手も勢いよく上がってしまい、僕の頬に手に持っていたナイフが突き刺さってしまったのである。

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[一言] 包丁持ったまま勢いよく動くの危ない…
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