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53話 リンゴ

「そういう訳で私も美羽も上手くいってます。お兄さんのおかげです」

「いや、僕は何もしてないけど」

「そんなことないです。お兄さんと相談してから気持ちが楽になったというか、余裕みたいなものができたので、だから本当に……、ごめんなさい」

「萌香、そこでおにーちゃんに謝ったら台無しだよ」


 再び月山さんがお見舞いに来たので近況確認してみたら、以前よりも明るい顔で回答。

 悩みを打ち明けることで気持ちが整理できて、つらい境遇を分かってくれている人が近くにいることも心の支えになったみたいだ。


「美羽ちゃんも最近は吐いてないんだよね?」

「うん! もうバッチリ!」


 笑顔でダブルピースを示す美羽ちゃんに一安心。

 最近は自分が関わったせいで問題が増える一方なのではと凹んでいたけど、こうしてお礼を言われると、こっちの方が救われた気分になれるというものだ。


「それでお兄さん、お花は迷惑ということで今回はリンゴを持ってきました」

「ありがとう月山さん。あと前に貰ったお花は本当に嬉しかったし、今も親が持ってきた花瓶であそこに飾ってあるからね」


 そうしてベッド横に飾られている花に注目が集まるが、


「萎れてるね」

「ごめんなさい。私が責任を持って持ち帰りますので」


 美羽ちゃんがそう呟いた後、月山さんが申し訳なさそうに回収しようとしたので、手を伸ばして花瓶を奪取。


「大丈夫! まだ充分綺麗だし、一週間もたてば多少萎れるのは仕方ないから」

「でも、このままじゃ枯れちゃいますので」

「じゃあ押し花! 本に挟む押し花にしてみるから」


 そう無理やり纏めてからリンゴを受け取ると、果物ナイフで皮を剥いて、その手慣れた手付きに二人が感嘆の声を漏らす。


「はい、ウサギの完成」

「凄いですお兄さん。料理得意なんですね」

「小桜さんがよく果物を持ってきてくれて、それで上手くなっただけだよ」


 そう言いながら後ろでスマホ操作をしている小桜さんを見てみると、小さく相槌してからスマホ操作を続行。今も“Yusuke.H”が殺されているのだろうか?


「美羽もやる! ナイフ貸して!」

「いいけど大丈夫?」

「まかせて!」


 そう自信満々に宣言してから別のリンゴを手に取ると、果物ナイフを固定したまま器用にリンゴをスライド回転させて、糸みたいに細長くなった皮がシュルシュルとむけ落ちていく。


「へぇ、上手だね。美羽ちゃん料理できるの?」

「へっへーん。うちで一番料理が上手なのは美羽だからねー。ナイフの切れ味が悪くて使いにくかったけど、それでも楽勝だよ」


 そうしてリンゴが切り終わると、美羽ちゃんが次のリンゴを手に取って月山さんに手渡す。


「次は萌香の番だよ」

「私!? ムリムリやったことない!」

「誰だって最初は未経験だよ。美羽も初めての時は上手くできなくて、血が出ちゃって痛い思いもしたけど、何度も経験を重ねて上手くなったんだよ」

「そうなんだ。美羽は大人だね」

「だから萌香も今から大人になろう。こういう経験は早い方が絶対いいよ。美羽も手解きするし、おにーちゃんも手取り足取り教えるから」


 そう美羽ちゃんに諭されると、不安ながらも決意を決めたという表情になってから、月山さんが僕に頭を下げてくる。


「じゃあその、挑戦してみます。はじめての経験になりますけど、よろしくお願いします!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 待て! 会話がおかしく聞こえるのは俺の心が穢れているからだよな!? そうだと言ってくれ! 純真無垢な少女達の会話なんだぁぁぁぁぁぁあああああ あ、ごめんなさい。カオスになるのでしっかりROM…
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