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44話 信頼できる他人

 しまった!

 そういえば飲み物を買いに行ってたんだっけ。


 そして美羽ちゃんの背後に飲み物を持った小桜さんがいるけど、めっちゃこちらを見ていて、一切瞬きをせずに凝視しているだけなのに、まるで銃口を口に突っ込まれた様な気分だ。


「違うよ美羽ちゃん。僕は悩み相談をしていただけで、そうだよね月山さん?」

「ええっと……、ごめんなさい!」

「なぜ謝る!?」


 これじゃ本当に浮気みたいじゃん!

 どうやら月山さんの謝り癖は予想以上に深刻で、これじゃイジメられるのも納得だ。


「ちょっと待って、悩み相談って……」


 そう美羽ちゃんが呟いてから小柄な背丈を伸ばして月山さんにズイッと迫ると、長身の月山さんがどんどん縮こまっていき、身長差は歴然なのに美羽ちゃんの方が大きく見える構図で詰問がスタートする。


「萌香、もしかして?」

「その……、ごめんなさい」


 一瞬で月山さんが自白。

 それから美羽ちゃんが小桜さんをチラッと見てから、僕の方を見る。


 その表情は何か言いたげだけど、どう喋ればいいか分からない感じだ。

 本心としては色々聞きたいけど、こうするしかないか。


「美羽ちゃん、大丈夫?」

「え? ええっと……、大丈夫!!」

「そっか。なら僕は美羽ちゃんを信用するけど、悩みがあればいつでも相談していいから」

「うん。ありがとうおにーちゃん!」


 正直不安で信用できないけど、信用するしかない。

 それに頼れる部外者という存在は貴重だ。

 家族や友達という近しい人には話せないけど、他人なら愚痴代わりに相談できるってパターンもあるからね。


「月山さんも相談があればいつでも来ていいからね。年上として助言するから」

「はっ、はい! その、ごめんなさい!」

「萌香、ココはごめんじゃなくてありがとう! あとその謝り癖をどうするか今相談しよう!」

 

 こうして月山さんの相談スタート。美羽ちゃんの方が大変なのに、それとも自分が大変だからこそ人の心配をしてしまうのか、今度親に頼んで心理学の本を持ってきてもらおう。


 そんなこんなで暗くなってきたのでお見舞い終了。小桜さんも月山さんを見送る為同行して、賑やかだった病室が一瞬で静かになると、バタンと体がベッドに倒れてから、ポロっと本音がこぼれる。


「疲れた」


 別に相談が面倒だった訳じゃないし、月山さんのお見舞いが嬉しかったのも本当だ。

 だけど大勢でお見舞いはマナー違反という話通り、わざわざお見舞いに来てくれたという感謝の裏で引け目も生じてしまう、気苦労になってしまう。


 つまりお見舞いの長居は駄目だけど、ずっと一人も暇だからお見舞いに来てほしいという病人の我儘な言い分にモヤモヤしてから、最後は心からこう思うのだ。


「早く退院したいなぁ」


 入院生活が長くなればなるほど、健康の大切さが身に染みる。

 そう痛感しながら、夕食まで仮眠しようと眠りについたのである。




   ◇   ◇   ◇




 ペチペチ ペチペチ


 ……んん? なんか頬に柔らかい振動が。

 どうやら寝ている僕の頬を誰かが叩いているらしく、夕食を持ってきた森谷さんかなと体を起こしてみたら、


「って、小桜さん?」


 時計を確認したらお見舞い終了時間ギリギリ。

 どうやら月山さんと美羽ちゃんを家に送ってから、急いで戻ってきたらしい。


「どうしたんです? 忘れ物ですか?」


 この疑問に小桜さんが首を横に振ってから、こう答えてきたのだ。


「…………教えて」

「な、何を?」

「…………美羽のことを」

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