41話 ごめんなさい
「はっ、はじめまして。月山萌香、といいます」
上擦った声で礼儀正しく頭を下げてきたのは、先日お見舞いに来たいと申し出のあった美羽ちゃんのクラスメイトで、小柄な美羽ちゃんとは真逆の長身、髪も長くて大人びた印象で、同じ小五とは思えない女の子だ。
だけど僕や小桜さんという初対面の高校生に緊張しているのか、高い背をネコのように丸めながら小柄な美羽ちゃんの背後に隠れながらこちらを伺っていて、どうやら内気な性格らしく、それならココは年上の男として、しっかりエスコートしないと。
「羽生悠助です。お見舞いに来てくれてありがとう。好きなだけ見学していいし、質問があるならなんでも答えるよ」
と、自分でもワザとらしいと思えるほどの笑顔で歓迎の言葉を述べたら、
「ごめんなさい!」
全力で謝られちゃいました。
しかも借りてきた猫のように委縮している様子で、とにかく緊張を解いてあげないと。
「月山さん。そんなに畏まらなくて大丈夫だよ?」
「ひっ、ごめんなさいごめんなさい!」
どうしよう。月山さんがペコペコと頭を下げ続けていて、コミュニケーションを取ろうとすればする程に拗れていく一方だ。
そんな状況に美羽ちゃんが縮こまる月山さんに背伸びをしながら答える。
「大丈夫だよ萌香。おにーちゃんはイイ人だから、デカ女ってイジワル言わないよ」
「ごめん。ごめんね美羽」
「その謝り癖も治さないと、またクラス男子にイジメられちゃうよ」
「ごめんね。いつもありがとう美羽」
そんな光景から、二人の関係と月山さんの苦労が垣間見える。僕も励ましてあげたいけど、事情が分からないまま同情もできないし、ここは触れずに接するべきだろう。あと月山さんは美羽ちゃんとなら問題なく話せる様なので、ここは美羽ちゃんを仲介役にしながら話してみようと思ったのだけど、
「じゃあ萌香が落ち着ける様に飲み物買ってくるね!」
「えっ? ちょっと待って美羽ちゃん!」
と、僕が呼び止めるよりも早く美羽ちゃんが病室から出て行き、しかも小桜さんまで付いて行ってしまい、病室には僕と月山さんの二人だけになる。
気まずい。
せめて動ければ上手く立ち回れたかもしれないけど、ベッドから動けないので何もできず、どうすればいいか悩んでいたら、
「あ、あのっ、お兄さんでいいでしょうか?」
「え? う、うん、好きに呼んでいいよ」
「じゃあその、ごめんなさい!」
「いや、だから謝らなくていいから」
必死に宥めようとしたが、月山さんはそれ以上に必死な様子で、こんな暴露をしてきたのだ。
「まさか本当にお見舞いとは思わなくて! 最近の美羽は体調が悪くて、放課後は病院に行っていると聞いた時は病気じゃないかって。美羽はお見舞いって言ってましたけど、私を安心させる為の嘘だと思って、じゃあ私もお見舞いに行くって言ったらこの有様で、本当にごめんなさい!!」
月山さんは前作でも美羽ちゃんの友達として登場しましたが、容姿・性格は全く違う別人になっています。




