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31話 クイズ大会

 中間テストまで一心不乱に勉強。小桜さんの過去なんてどうでもいいと思える程に集中して、高校受験の時よりも頑張ったと断言できる程に勉強に励み、遂に今日は運命のテスト当日。

 予告通り保志先生が来て、試験開始となったのだけど、


「へぇ~、養護教諭も大変ですねぇ~」

「はい。ですが看護師の方が専門性が高いですね。養護教諭は看護師免許がなくてもなれるので当然ですけど」

「らしいですね~。あと養護教諭ってどういうプロセスでなれるんですか? 看護師とどう違うんでしょうね?」

「それはですね……」


「あの」


「どうしました羽生君? 試験中は私語厳禁ですよ?」

「そうだよ~、静かにテスト集中だよ~」


 あんたらは喋っていいの?

 病室で試験をすると森谷さんに伝えた際、保志先生が養護教諭と名乗ると近しい業種なせいか意気投合。今もこうして和気藹々と雑談を続けているのだ。


「すみません。テストに集中します」


 納得いかないけど、保志先生はわざわざ病院に来てテスト監視をしてくれているし、多少の理不尽は甘んじて受け入れるべきだろう。


 そうして看護師と養護教諭の違いが分かるBGMを聞きながら最初のテスト終了。その後は仕事があると森谷さんが退室してから二教科目がスタートして、今度は雑音がない静かな環境で恙なく終了。

 テスト用紙を保志先生に渡したのだけど、その表情が悩まし気なことに気付く。


「どうかしました?」

「いえ……、ところで質問があるのですが、幼児のお尻にできる薄青い痣の名称が分かりますか? 五文字の言葉なのですが、とうにも思い出せなくて」

蒙古斑もうこはん?」

「それです。ありがとうございます」


 なんのこっちゃと思っていたら、保志先生が手に持つノートに文字を書き込む。

 因みにそのノートは、クロスワードパズルである。


 この人、テスト中に僕がお見舞いで貰ったクロスワード解いてたのか!?

 確かにテスト監視は暇だろうけど、いいのかそれで?


 だが指摘しても面倒臭くなるだけなので無視。

 本日最後のテストに備えて予習しようとしたら、


「すみません。麻雀の鳴きって分かりますか?」

「ポンかチーです」

「成程、では西インドチェリーと呼ばれる赤い果物は?」

「アセロラです」

「成程、ではさくらんぼ生産量が日本一の山形県の市は?」

「そろそろ次のテスト時間じゃないですかねぇ!」


 そうぶった切って本日最後のテストを断行。ヤケクソな集中力でテスト問題を解きまくり、保志先生からのクロスワードクイズも解きまくりながら本日のテストが終了したのである。


「高校入試よりも疲れた」


 そう愚痴りながらベッドで大の字になると、テスト用紙を全て預かった保志先生が帰り支度を始める。


「お疲れ様です。では私は学校に戻ってテスト用紙を各先生に提出します」

「あっ、はい。宜しくお願い致します」


 慌てて体を起こしてから保志先生に頭を下げる。

 言いたいことは沢山あるけど、それでも保志先生には感謝しないとだね。


「なお中間テストは明日もあるので、くれぐれも気を抜かないように」


 お前が言うな!


 と、喉元まで出かかった台詞を飲み込んでから保志先生が退室すると、程なくして高校でテストを終えた小桜さんが入室。そして今日のテストの回答見直しが始まり、分からない問題があったか小桜さんに尋ねられたので、どうしても解けなかった問題を尋ねてみる。


「“M→T→S→H→R”のアルファベット配列って、どういう意味か分かります?」


 ????(小桜さん、首を傾げる)


 その問題は何の科目?

 そう言わんばかりな顔で今日のテスト用紙をチェックする小桜さん。

 因みに正解は「年号」で、あとで森谷さんがサラッと解き明かしてくれました。

 養護教諭は養護教諭免許状を取得した後、教員採用試験に合格することが必要です。これは看護師とは違う免許だそうです。

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