26話 病院の都市伝説
※ホラー要素有り
「“死体洗いのアルバイト”って本当にありますか?」
「そんなのないよ。ただの病院あるある都市伝説だから」
森谷さんに聞いてみると、やっぱりな反応が返される。
小桜さんのホラー小説にそういう話があったけど、やはり迷信だったか。
「でも“死化粧”なら看護師がやってるよ~」
「えっ!? その、聞いてもいいですか?」
「う~ん、怖いというか生々しい話になるけど大丈夫?」
「大丈夫です。無理なら途中でストップ出すので」
それからの僅かな静寂が合図となり、神妙な面持ちで見つめ合いながら森谷さんが小声で語り始める。
「病院で亡くなった患者さんは清拭、つまり身体を清潔にする必要があるの。家族とのお別れ・葬儀があるからね。そして遺体に触れるのは穢れを伴うって考え方が昔からあって、あと遺体を入浴させる“湯灌”、“死化粧”は女性が行うべしって習わしが今も残っているの」
「じゃあ森谷さんも?」
「うん、経験あるよ。それが看護師の役目だから。それに亡くなる直前まで看病した相手なら、ね」
「……そう、ですか」
病院でそういうことがあるのは当たり前で、当然の役回りだ。
ただでさえ看護師は忙しいのに、そのうえこんなことまで……。
もしかしたら接客業で一番大変な業種は、看護師なのかもしれない。
「僕、これからは看護師を最も尊敬できる職業って認識にしますね」
「あらあら、じゃあ羽生くんは私を尊敬してるのかな?」
「当然です。てゆーか感謝しまくりですよ」
そう答えると森谷さんが微笑んでくれたけど、いつもより印象深い笑顔に思えたのは気のせいだろうか?
いや、気のせいじゃないってことにしておこう。
「うふふ、ありがとう。あとさっきの話題は使い所に注意してね」
「当然です。こんな話、ホラー好きの小桜さんくらいにしかできません」
「えぇ~、それこそ使い所間違ってない?」
「あはは、そうかもですね」
そうして笑い合ってから消灯時間となり、森谷さんを見送ってから眠りについたのである。




