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22話 準備中

 週末になり、休日のお見舞い時間は平日よりも早い13時からで、早々に小桜さんが来てくれたけど不幸にも僕の両親と鉢合わせてしまい、「毎日お見舞いありがとう」「息子に女友達なんて初めてじゃないか?」「こんな息子でよければ貰って下さい」と言い散らかした上に、ワザとらしく病室から退散。去り際にガッツポーズをしながら去っていったのである。


「呑気な両親ですみません」


 この謝罪にいつも通りフルフルと首を横に振る小桜さん。全然そんな関係じゃないのに勝手に盛り上がる両親が庶民まる出しで恥ずかしい。それに小桜さんには下品なイメージが無いから、きっと育ちがいいに違いない。

 そういえば小桜さんの家族といえば……


「妹さん、元気ですか?」


 小桜さんのことは良く知っているけど、妹さんの情報がビックリするほどない。

 てゆーか名前すら知らないんですけど。


 別にお見舞いに来いとか恩に着せたりする気は無いけど、妹が一切現れずに姉の小桜さんだけが毎日お見舞いは違和感があるのだ。

 そしてこの疑問に小桜さんは困り顔で、それでおおよその事情を把握する。


 そっか、嫌われちゃったか。

 命の恩人とはいえ、得体の知れない男が急に抱き着いてきたうえに怖い思いをさせてしまったのだ。本能レベルで会うのを拒まれても不思議じゃない。


 善行をすれば必ず感謝されるとは限らない。分かってはいたけど、身を挺して庇って大怪我までしたのに嫌われるというのは、やっぱりショックだ。


「小桜さん。妹さんには僕のことは忘れていいよって伝えてあげて下さい」


 ????(首を傾げる)


「だって僕に会いたくないから、姉の小桜さんがお見舞いに来てるんですよね?」


 この回答に小桜さんが全力で首をブンブンと横に振ってから、予想外なキーワードが出てきたのだ。


「…………準備中」


 え、何の?

 それから幾つか質問してみたけど、妹さんについては何も答えてくれず、だけどどうやら僕は妹さんに嫌われてなくて、準備が終わり次第お見舞いに来てくれるらしい。


「ええっと、じゃあ妹さんの準備が終わるまで、待ってますね?」


 この探るような回答にコクコクと頷く小桜さん。

 小桜家は上品と思ったけど、どうやら小桜さんと同様に謎が多いご家庭みたいだ。


 そんなこんなで恒例の勉強会スタートとなったのである。

 妹さんは準備中なので、登場はもうちょっと後になります。

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