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11話 ヒロインの条件

 ブクマ200人突破、ありがとうございます。

 ――え? どういうこと?


 あまりにも突拍子な提案のせいで悲しみよりも困惑の方が大きくなってしまい、しかも小桜さんが真剣な面持ちで僕の手を両手でギュッと握りしめてくる。


 つまり小桜さんが、僕の面倒を一生見てくれるってこと?


 いやいやいや!

 シチュエーションが逆なら絵になったよ?


 怪我をした小桜さんに僕がそう宣言したら男前で格好良かったけど、これはただのヒモ野郎だよね? 小桜さんがお金持ち令嬢だったとしても、男として情けなさ過ぎる!


「小桜さん、気持ちは嬉しいけど……」


 丁重に断ろうとしたけど、小桜さんが体勢を低くしながら僕を見ていて、上目遣いな視線にドキッとして言葉に詰まる。


 もしかして、これが一目惚れというやつなのかな?

 よく恋愛小説で、どうしてこのヒロインは主人公にベタ惚れなのか心底不思議でならないケースがあるけど、こういうのは理屈を超越したラブジェネレーションなのかもしれない。

 ヒロインと一緒の時間を積み重ねたり、重大な事件に巻き込まれたり、ヒロインが抱える問題を格好よく解決とかが一切無いけど、いいのだろうか?


 恥ずかしながら僕には恋愛経験がないので分からないけど、包帯グルグル巻きの負傷者から始まる恋愛もアリなのだろうか? それで小桜さんが僕の恋人になってくれて、退院後は小桜さんが僕の為に献身的に働いてくれて、僕は家でまったりくつろぐニートというラブラブな未来に……。


 アカン、そうなったら死ぬ。

 僕の社会的未来が。


 だけど小桜さんはこんな状態だし、ここはOKと答えておくべきなのか?

 と、この状況でどうするのが正解か頭を悩ませていたら、手紙に続きがることに気付いたので読んでみると、



“ですが事情が事情なので、課題提出で留年見送りとします。

 課題はお見舞い役を名乗りでた小桜美夜さんに提出すること。

 彼女には授業範囲も伝えるので、入院生活に支障がない範囲で勉学に励んで下さい。

 君が一日も早く登校することを願っています。”



 んんんんん?


 つまり課題をすれば留年なして、僕の早とちりってこと?

 そういえば小桜さんが「まだ続きが」って言ってたっけ?

 それが分かった瞬間、小桜さんに確認する。


「責任を取るって、僕に課題を持ってくる役を引き受けるって意味ですか?」


 この質問に、どうしてそんな分かりきった質問をという感じでコクコクと首を縦に振る小桜さんに、僕は首を明後日の方向に向けて、口に手を抑えながら盛大に叫ぶ。


 あっぶねー!

 とんでもない勘違いするところだったー!


 もうちょっとで痛い野郎になる所だった。

 ただでさえ大怪我で痛々しい体なのに、心まで痛々しくなったら目も当てられない。


 これは妹を助けてくれたことに対する感謝で、果たすべき責任としては至極真っ当で納得できる内容だ。それを一目惚れやら養ってくれるやらの妄想を膨らませた自分が恥ずかしい!


 小桜さんは妹の義理でお見舞いに来てくれるんだ。

 だから変な目で見るのは止めよう。


 ????(首を傾げる)


「やっ、なんでもないです! ほんと大丈夫ですから! 課題もバッチリ頑張るので、今後とも宜しくお願いします!」


 この意気込みに、不思議そうにコクコクと頷く小桜さん。

 こうして二人の長い入院生活が始まったのである。

 留年条件ですが、病気・怪我で長期入院の場合は特例が認められる場合があります。そして子供を助けて入院の羽生君は、よっぽど無慈悲な高校じゃない限りこういう対応になると思います。

 そしてここから小桜さんとの入院生活スタートです!

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