09話 伝えたかった言葉
「小桜さん、どうして毎日来てくれるんですか?」
2日連続の逃げ出しで、もう幼馴染さえも来なくなる状況なのに、今日もお見舞いに来てくれたのでストレートに聞いてみたのだけど、
????(首を傾げる)
「いや僕が変な質問してるって反応されましても。そもそも僕と小桜さんの接点、ないですよね?」
そもそも小桜さんが来るのがおかしい。学校プリントを持ってくるのは担任・クラスメイト・同中の友達あたりが妥当で、見ず知らずの先輩はどう考えてもミスキャストなのに、小桜さんからは善意というか、使命でお見舞いに来ている感じがある。
そう思いながら小桜さんを見ていたら
ガタンッ!
弾かれた様に小桜さんが立ち上がってワタワタと慌て始める。まるで何か大切なことを伝え忘れていた様な焦りっぷりで、そこからバッと身を寄せて、意を決した表情になってから僕の手をギュッと握りしめて、小桜さんの口が開かれる。
「…………っ、感謝、してる!」
初めて聞けた小桜さん声は絞り出したかの様なカタコトで、何かを伝えたいのに方法が分からないといった様子だけど、目を逸らさずに僕の顔をしっかりと真正面から見据えている。
初対面でパーフェクトな自己紹介をされたけど、あれはただの情報で、僕は小桜さんについて何も分からないけど、これだけは分かる。
小桜さんが、真っ直ぐな人ってことが。
なので小桜さんが握ってくれた手を、優しく握り返す。
小桜さんが喋らないのなら、こちらも言葉じゃなくて行動で示すしかない。
「伝えたいことがあるのならちゃんと聞きます。どんなに時間がかかったとしても、ずっと待ちますから」
入院中で時間はいくらでもあるし、何度もお見舞いに来てくれている以上、そうするのが礼儀だ。そしてこの言葉に小桜さんが落ち着きと取り戻して、それから何度も深呼吸をしてから、小さな声で答える。
「ありがとう」
どういうこと?
そう呟きそうになった言葉を寸前のところで飲み込む。
きっと小桜さんの言葉はまだ終わっていない。
だから根気よく待ち続けていたら、小さな言葉がつづられる。
「妹を、助けてくれて」
「そのせいで、怪我をさせて、ごめんなさい」
握手をすることで親近感・安心感が沸くのは有名な話ですが、男からの握手は勇気いりますよね。女からの握手は基本いつでもOKだけど、男はタイミングや好感度も関わってきますからね。




