プロローグ
処女作です。一応構想はあるのですが、最後まで書ききることができるのかは不明です。読んでいただけると嬉しいです。
ルーカス……目覚めろ、ルーカス……
ルーカス少年が目を覚ますと、鈍い光が部屋に射していた。眩しい朝日ではなかった。見ると、時計は11時を指していた。7時のベルは鳴らず、起こしに来る母親の声も聞こえなかった。それどころか、家の中を見回しても姿さえ見えなかった。
不思議に思いつつも、登校の時間を大きく過ぎていることに気づくと、ルーカスは慌てて家を飛び出した。外は静まり返っていた。町の人間も、捨てられた空き缶すらも消えていた。ルーカスは不意に恐ろしくなった。これまで想像だにしていなかったこと。自分の知っている人間が、いつの日か自分の前から消え去ってしまうこと。言い知れない不安に襲われたルーカスは走り出していた。どこかに誰かいないか。自分を守ってくれる誰か。その目にはもはや、涙が浮かんでいた。
町の端まで来たとき、見覚えのある背中を見つけた。間違いなく、母親だった。ルーカスは駆け寄った。母親の手を握った。泣きじゃくりながら、母親の名前を呼ぶことしかできなかった。しかし、どれだけ呼んでも母親は振り向かず、町の外を見つめていた。輪郭がぼやけた、空虚な世界。その時、母親の手がルーカスの手をするりと抜けて、そこから少しずつ形を失い始めた。