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滝口君はもてあそぶ!  作者: あざます
1/6

ひとめぼれ

もてあそぶ要素は2話からです。

言葉というものは不思議なもので伝えたい言葉は一向に伝わらないのに、伝えるつもりのないことは伝わってしまったりする。


 私、秋月由樹あきづきゆきは今年で高校二年生になる。別に特別勉強ができるわけではないし、これといった夢もない。ただなにか漠然と幸せになれたらいいなという楽観的な考えでこれまでの人生をゆるく生きてきた。今回のクラス替えも、これまでの友達は一緒なのかなとか新しい友達はできるかななんて事ばかり考えていた。


始業式が終わってクラス分けの表を見て2-Aの教室に入って前に張り出された自分の席に座って隣を見た...その時。


私は初めて恋をした。


彼の横顔の黒い瞳に吸い込まれるような感覚を覚え、しばらくフリーズした。そうしていると彼は見られていることに気がついたのか、こちらを向き怪訝な顔をした。


(ヤバい...!)


急いで顔を伏せて必死に他のことを考えようとした。...けど駄目だった。変な顔をしてたかなとか見られたかなとかいろんなことが、頭の中をグルグルまわってその日は先生の話も何も頭の中に入ってこなかった。

これが彼、『滝口琉樹たきぐちるき』との出会いだった。



教科書配布が終わって解散になると、私は急いで親友の浅葱美保あさぎみほのところに駆けつけた。


「ねえねえねえねえ!ミホちゃんミホちゃん!ちょっとお聞きしたいことがぁ~。」

ミホちゃんは社交的で顔が広い、ミホちゃんならば隣の彼のことを何か知ってるかもしれない。

「なによ...いつにもまして騒がしいわね...。どうしたの?」

「あのね、隣の席のとな...ゲホッゴホッ!ごめん隣の...ゲホッ!」

...慌てて喋ろうとし過ぎてむせてしまった。

ミホちゃんはあきれたような顔をして取り敢えず私を椅子に座らせた。

「...落ち着いた?餌を前にした犬じゃないんだからそんな慌ててしゃべっちゃだめよ。で落ち着いたら何の話かゆっくりと話しなさい。」

「ごめんね~ミホちゃん。え~と...。」


話そうとしたときハッと冷静になった。教室にはまだ帰らずに駄弁っている人がいっぱいいる。こんなところで恋のご相談なんかしてたらみんなにまるわかり!最悪彼の耳に入ったらどうなるかわからない...。ということはここで話したらマズい!

ということで「場所を変えよう!」と叫んでミホちゃんを階段裏の物置の所まで連れ出した。


「どうしたの?今日のユキなんか変よ。」

困惑するミホちゃんを無視して私は話をはじめた。

「今日私の隣になった人のことを聞きたくて...。」

「ほう、そりゃまたどうして?」

ミホちゃんは何かに気が付いたようにいたずらっぽく笑う。あーうんやっぱり隠し切れないよね知ってた。

「実は~...一目ぼれをしちゃいまして...。」

「ほぉーう、なるほどなるほどぉ~。」

ミホちゃんのテンションが一気に上がった。うわぁ~...。

「それで彼の名前とかをミホちゃんなら知ってないかな~...なんて。」

「ついにユキも初恋の時かぁ~...いや~感慨深いわね~、いいわよ教えたげる!」

「ホント!?」

「彼の名前は滝口琉樹!」

「おぉ~!」

「他は知らん!ていうか名前もさっきの出席確認の時知った!」


しまった!その手があったか...ちゃんと話を聞いていなかったばっかりに...。

まあミホちゃんは口が堅いから大丈夫だろう...多分。

でも...滝口君っていうのか...明日話しかけてみよう。

趣味はなんなのかな...もしかしてもう彼女いるのかな...なんてことを考えながら家路についた。




=====================================




 翌日、めちゃくちゃ早く目が覚めた。滝口君に早く会いたかったのかもと思うとちょっと体が熱くなるのを感じる。

普段は寝坊当然、遅刻ギリギリ登校の常習犯だからこの時間に起きるのはすごく貴重だ。せっかくだしいつもより早く学校に行ってみよう。

お父さんがいつも早くから仕事に行くため、我が家はかなり早い時間でも朝ご飯ができている。お母さんは大変だ。

私が着替えて顔を洗って下の食卓に行くと、お母さんが珍獣でも見つけたような顔をしてこっちを見てきた。


「なに...天変地異の前触れ?」

失礼な私だって早く起きることくらい...ある。あったはず。

「いつもは大知だいちに起こされてもまったく起きてこないのに...珍しいこともあるもんだ。」

「私だってたまにはちゃんと起きますよ~だ。」

『たまに』な時点で珍しいのは変わらない気がする...。


炊き立てのご飯をよそって味噌汁と一緒にかきこんでいると弟の大知が起きてきた。


「あれ、姉ちゃん珍しいね。天変地異の前触れ?」

お母さんとおんなじことをいいやがる...。

「そこ!うるさいぞ!」

「へーへー。...でもホントに珍しいね、何かあったの?」

「なんとなくだよ~。」


適当に誤魔化しながら、食べ終わった食器を流しに置いて家を出る準備をする。

本当のことも言えないしなぁ~...絶対弟にいじられるよ。「いってきま~す」と叫びながら勢いよくドアを開けると、気持ちのいい朝の空気が体に流れ込んできた。う~んきもちい!早起きは三文の得っていうのはマジだね。こんなにスッキリするならたまには早く起きてみるのもいいかも。

そんなことを思いながら意気揚々と家を出るといきなり声をかけられた。


「ん、お前は隣の席の...。」


後ろを振り返るとそこにいたのは滝口君だった。

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