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いずれ普通になる世界にて  作者: 石田ヒカリ
2/2

いづれ知ったこと2

 見知らぬ男に、手を引かれ扉から出ると広い部屋に出た。

 可笑しい。何がって、部屋から廊下ではなく、部屋から部屋に移動した。

 しかも、扉から出る時に一瞬ここじゃない風景が見えた。

 そして今いる部屋は、奥に行くに連れて階段のようになっていて、適度な間隔で机が並んでいて三十人以上いることから授業中の教室だろう。

「はぁー……理事長、来るのは良いですが奇抜な登場はやめてください」

 どうやら、僕を連れて来た男は理事長らしい。

「授業中に来る事には何も言わないんだね」

「また来るって言った人の言う事ですか」

 この人、理事長のくせに授業妨害してるのか。

「それでは、本日二人目の転入生の紹介」

「……はっ、ちょ、ま、テメェ何つった⁉︎」

 生徒たちが騒めくがそれを気にせず理事長に詰め寄った。

「おい、ずっと聞かなかったんだから説明しろ。そんで、元いた場所に……肝試し‼︎」

 忘れていたことを思い出し、その場で崩れた。

「あれ、お〜い……何だかわかんないけど転入生の月里智樹くんでした」

 そうして首根っこを掴まれ退場していった。

「オワタ、オレノナツオワタ、セイシュンオタワ…………ハハッ」


 引きずられたまま教室を出ると、また廊下にではなく別に部屋に出たが今はそれすらどうでもよく思える。

「エンディングガナガレナイ、スタッフロールハドコ、ノンクレジット?」

 思いつく言葉を口から出すだけの機械とかしていた。

「変に壊れたな……面白いから良いけど、仕事だから早く終わらせたいんだけどなぁ」

 かれこれ体感で10分はこうしているが、現実を受け入れたくないから未だにこうしている。

「バットエンド、ユアールーザー、ゲームアイバー」

「おーい、お〜い、もうそろそろ知り合いがくるからシャキッとしてよ〜」

「カッテニツレテコラレタ、シッタコッチャナイ……ダカラ」

「聞こえてるならしっかりしてよ。大変な事になるよ」

 だが自分の青春に失うものなどもうない。だから、駄々をこねる子供の様に床でジタバタしてるのを見れたり、泣きわめいたりしている所を他人に見られたぐらいじゃノーダメージなのだ。 

 床をゴロゴロしているとドアをノックする音がした。

「どうぞ」

 理事長が短く返事をするとゆっくりとドアが開かれて来客が姿を現わす。

 顔だけでの拝んでやろうと床で寝転げながら見上げると、

「…………。」

 無言でこちらを複雑そうな顔で眺める視線と眼があった。

 意外な顔がそこには有り、動かない来客をいい事に開かれたドアを閉め、埃を払い近場のソファに座り、

「どうぞ」

 無かったことにしようとした。

 再びドアが開き今度はしっかり室内まで入ってきた来客は自分の前に座り、

「何してた」

 来客こと秋月京(あきづききょう)は自分が聞かれたくないことを聞いてきた。

「急に“肝試し”って叫んでからあんな事してた」

「なるほど」

 肝試しで女子を誘ったことを知っている京はすぐに理解し、また嫌な質問をしてきた。

「で、誰誘っての」

「黙秘します」

「過ぎたことなんだから」

「言わない」

「僕の知らない話で盛り上がらないでよ」

 なぜか姿見を持っている理事長に会話を止められた。

「智樹のせいで本題に入るの遅れただろ」

 お前のせいだろとツッコミたくなったが、姿見に映った自分に違和感を覚えたのでやめた。

「まぁ、本題というのが君が気にしているそれのことだけどね」

 違和感の正体の右側頭部に有るそれを握り疑問を投げる。

「これ付いてるっていうか生えてる感じなんだけど」

 それことツノを握り動かすと頭まで動く。

「ぶっちゃけ君、取り込んでるだよ……悪魔を」

「「…………。」」

「ちょ、そんな眼で見ないで‼︎」

 痛い子を見る様な眼で理事長を見る。

「ってそここっち側でしょ⁉︎」

 どうやら、京も同じ眼をしているらしい。

「で、京こっち側って何?」

「地球外生命体?」

「…………。」

 今度は友達が痛い子になってしまった。

「まぁ、そっちの話は後にしてちょっとこっち来て」

 理事長に手招きされ、姿見の前に立たされた。

「え〜と……この辺りかな」

 理事長が背中を触り、背骨を撫で肩あたりの高さで止めた。

「ここから翼が生えてるイメージして」

「………………。」

 とりあえず鳩とかカラスの翼を思い浮かべるが特に何もない。

「これ意味あるんですか?」

「じゃあ、翼がある自分の全身をイメージして」

 言われるがままに翼がある自分をイメージした。

(そういえば悪魔とか言ってたな。なら、コウモリがいいかな)

 触られている場所からコウモリの翼がある自分をイメージする。

 感覚的に変わった事はないが、姿見に映る自分の背中から黒い靄がはみ出していた。

 黒い靄は翼とは言えないギザギザした形で伸ばした腕より少し長いだろう。

「てか、自分がイメージしたのと大分違うだけど」

 振り返り率直に思った事を言うが、理事長は黙ったままこちらを見ている。

「…………。」

「えーと……理事長?」

「……あ、済まない。で、イメージと違うって事だっけ」

「はい」

「だって、僕がイメージしたんだもの」

「なら、イメージ云々要らなかっただろ」

 ちなみに、京はさっきから写真を撮っている。

「必要だよ〜。だって、有るって思わなきゃ形が作れないからね」

 ドカッとソファに座った理事長に自分達も座る様言われたので対面する様に座った。

「では、肝心のどうしてこうなったかの説明」

 すると、何処からか紙の束を出して渡してきた。

「殲滅戦演習プランB」

 デカデカと書かれた文字を読み捲る。

「別に読む必要はないよ」

 そうは言われたが黙読で読み進めていく。

 次のページの頭に期間7月29日から31日と記載されていた。

「合宿の日と丸被りじゃねえか」

「原因は京くんがちゃんと監視してなかったからだよ」

「いやいや、智樹が肝試しで場所を変わらなかったから」

「そもそも、丸被りなのが解っていながら実行した企画の再構成でしょ」

「だよね〜」

「因みに、企画書に印を押したのが理事長です」

 醜い責任転嫁の末、自分は悪くないという雰囲気を出した理事長に京がコイツが悪いと告げた。

「過ぎた事は気にせず、今はこれからの事」

 最もな事を言って無理矢理話をしてきた。まぁ、こんな茶番いつまでもやってたら終わらないから何も言わない。

「で、これとこの状況がどう繋がってる」

 すると、理事長が一応読んでいた紙束を取り上げて裏に丸を描いた。

「この中が演習舞台で1日目の内容が夜戦での各部隊での範囲殲滅。そんで殲滅対象が弱い奴を30だけ、それでもたまにいるんだよ逃げる子がさ」

「それで運悪くそいつと出会したと」

「そんでもって倒れてた智樹を発見した」

 そこまでは吞み込めた。だけど、だけども、

「今までの話にこうなる理由なくね」

 未だにで続けている翼を指差して別世界よりも大事な自分の体の事を聞く。

「……え〜、それは〜」

「…………」

「……偶然」

 最も理由になっていない言葉が出てきた。

「まぁ、偶然だけど、どうしてそうなったかの考察は出来てるから……取り敢えず聞いてくれる」

「わかった」

「そっちの世界に本当に入るか知らないけど、神は解らないけど悪魔なら実際に存在するんだよ。それとこっちでの悪魔の定義についてだけども、悪魔とは概念的な存在で生物に干渉した、しようとしている存在。君がいた世界で神の神託があるだろ、それをこっちでは神ではなく悪魔がしている事になる。

悪魔については、理解出来た?」

「それはなんとなく理解出来たけど、そうすると神は何なの」

「名の知れた神など神では無い、神は傍観者でなくてはいけない」

 京の言う神についてに理事長は肯定してこう付け足した。

「その通り、そして傍観者である理由は神より上惑星(ほし)が生物に対して傍観すると決めたから。

神についてはそこまで必要な話じゃないからここまでいいかな

 話し戻すけど、そんな悪魔が世界を移動する方法がいくつかあるけど、今回は多分2つ。1つは、移動するときについて来た。方法としてはこちらが移動する瞬間に誰かに憑依して着くなり直ぐに出て別の器を探す。結果として倒れている君を見つけた。もう1つは、完全に偶然になる。これは後で説明させることなんどけど、こっちの惑星は今地球という惑星と1つになろうとしているんだよ。それで、1つになる前に地球に無いこっちの惑星の一部をサンプルにして解析そんで解析し終わったサンプルを地球にってことでそのサンプルになった悪魔が近くにいた。まぁ、偶然過ぎるけどね」

 さらっと、こうなった事より凄いこと聞いた気がするけど気のせいだよね。

 それに、今は自分の事第一でいいよね。

「それで、最初に言ってた転入ってこと」

「そ、頭や背中からそんなの出して戻ったら大変だよ」

 背中のは理事長にやられたけど、このまま戻ったら……。

「……解体」

「恐ろしいこと言うなぁ!」

 ボソリっと横にいる京が恐ろしいことを。

「それで、転入はいいとして前の学校どうするの?」

「…………」

「おい」

 遠くの方を見る理事長は自分を無視して次に進めた。

「ほら、これからはこっちで暮らしていくんだからそっちの方をね」

 すると、京がツノを掴みそのままドアの方に歩き出す。

「ちょっ待て」

「今後の事で待たせてる子がいるから早く行ってあげてね」

 呑気にこちらに手を振ってくる理事長を尻目にドアを出る事になった。



 

 


 


 

 


 

 

 

 

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