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いずれ普通になる世界にて  作者: 石田ヒカリ
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いづれ知ったこと1

 小説やゲームなどの高校では、主人公の転校や転校生が来て始まる語りが数ある。

 小、中学校の時には夏休み明けに、転校生が来るのはそこまで珍しくないと思うが高校で誰かが転校したとか転校生が来たとかは聞いたことがない。

 もし、高校で転校した人がいるのならその人は普通から逸脱しているかもしれない。

 これが夏休み前に考えていたことだけど、この時は忘れていたことがあった。

 この手の場合には、家、個人の逸脱した理由があり、個人の場合には長期休みに逸脱することも。

 まぁ、察したと思うけど、まずは僕がいる学校ではなくいた学校の時を少し。


 夏休みの序盤、7月下旬に僕がいる学校では勉強合宿と言う名の夏休みの宿題をやらせる為の日が3日もある。

 強制参加ということで、それに対抗できる予定や風邪がない僕は、8時から6時までという普段の授業よりも長い時間勉強するという地獄に参加していた。

「それで、自由参加の学年1位様はお暇なのですか?」

 唯一の休憩時間である昼、屋上の一角にて食事中の学年1位様こと秋月京(あきづききょう)に背後から話しかけた。

「これは、万年2桁ギリギリの月里智樹(つきさとともき)さん」

「おい、今回はギリギリじゃないぞ」

「そうか、ついに3桁に……ドンマイ」

「ギリギリ2桁が2桁になっただけだ。それよりも、なんでここにいるのかを聞いている」

 ちなみにテストの方はいつもの90位代から89位になっていた。

「それ……は……」

 何か意味ありげに背後を見た。

 校舎の裏にある山の中腹辺りを。

「あぁ、なるほど」

「どうしたんだ?」

 なぜ、自由参加の京がここにいるのかをなんとなく分かったが、当の本人は惚けるらし。

「分かったぜ。京がここに来た理由」

「……えっ」

「いや〜京も1日、2日目の肝試しで吊り橋効果、3日目のキャンプファイアーで告白で彼女ゲットって流れを想定してここに来たんだろ」

「あ、ああよく分かったな……」

 どうやら図星のようだ、京が動揺した。

「……もってことは、智樹は誰に告るのか、ほれ言ってみろよ」

「それは言えないな」

「どうせ、告白したらバレるんだから」

「それは……被ったら殴り合いしかないだろ」

 そう言って明後日の方向を見てると昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。


 勉強合宿初日、午後7時少し前頃。

 夕食を食べ終え学生達は校庭に集まった。

 すぐに肝試しの説明が始まり、開始までにペアを組んだり脅かす側の準備時間になった。

 「あれ、智樹はペア組に行かなくていいのか」

 準備時間になってもペア組に行動しないしない自分に京が話しかけてきた。

「いいんだよ。どうせ、ターゲットは今日は脅かす側なんだから」

「おいおい、それでも明日の約束ぐらい取り付けてこいよ。先約がいたら目も当てられないぞ」

 やれやれっと言いたそうなポーズをする京に笑みを浮かべて返した。

「抜かりなし、実は夕食の時に誘ってOKを貰った」

 まぁ、相手が一人になったタイミングで誘ったから運が良かったと思ってる。

「それで京の方は上手くいったのか?」

「えっ。……あっ……え〜と……」

 何だか、京が微妙な反応を…………まさか。

「……先約が…………な……」

 どうやらダメだったようだ。

 京はさぞ凹んでるだろう。

 だが、大丈夫。こういう時に中学3年間を友にしてきた友としてどうしたら良いか分かっているからな。

「よし、そいつらの顔教えろ。なに、吊り橋効果なんて揺れなければ発動しないんだ。でも、京のことだ。吊り橋を落とす方がいいだろう」

「…………いや、いいよそこまでしなくとも」

 なんか引かれてるような……多分、自分を見失うほどショックだったんだな。

「任せろ!結構いい場所で脅かすから仇は取ってきてやる」

「どこ……場所」

「山コースの中盤」

「代わって」

 肝試しのコースは校舎を指定されとルートで周り、校舎裏の山を通ってゴールまで行くルール。

 つまり、終盤で良い雰囲気になった男女に一発かませられる場所だ。

「やっぱり、復讐したいんだな。だが、ダメだ。この為に演劇部から色々借りたんだから」

 最後まで京が食い下がってきたけど、すぐに開始時間になった為に諦めた。


『キャアアアアアアァァァ!』

 肝試しが開始しされ数分後に校舎の方から悲鳴が聞こえてきた。

「あぁ、この悲鳴が心地いい」

 あと数分後にここに来た人がこの姿を見て驚くとこを想像しただけでも愉しい。

「おっと、悲鳴が近ずいてきた」

 自分の服と演劇部から借りた物に血のりをつけて準備をした。

『学校の行事だから子供騙しなものばっかりだな』

『そぉ〜わたし怖いよ』

『莉沙は、ほんっと怖がりだな……』

 よしよし、来たから始めるか。

『ねぇ、キャンプファイアーの事だけど……』

『ああ、よかったら……』

「ハハッ、死ね、死ね……」

 そこには、人に馬乗りしている少年がひたすらに人を殴っているっていう状況で人の方は、片腕が近くに転がっていて顔も血だらけ(正確にいうと血のり)。

「…………死んじゃった」

 少年は死体(演劇部から借りた人形)を物寂しげに見つめ、やがて男女二人がいることに気付き見上げた。

「…………ハハッハハハハァァ!」

 少年は笑いながら立ち上がり腰に下げた包丁(偽物)で死体(人形)の腹に刺した。そして、包丁を抜いて鮮血に染まったそれを微動だにしない二人に向けて。

「コロス。斬りコロスね!」

 少年は高らかな声で告げ二人に近寄り包丁を振り下ろした……。

「…………………。」

 包丁は当たる寸前で止めたが、いまだに二人が動かない。

「…………おい、お〜い……おーい‼︎」


「まさか、あんな反応されるとは思わなかった」

 あの後、二人共なんとか動いたがこんなことを言われた。

『あれは、肝試しじゃない』『ガチの快楽殺人鬼だと思った』『包丁が来た時に走馬灯が見えた』など言われた。

 正直なところ、どこがダメだったか分からない。

 かれこれ、ダメなところを考えて2、3組を流した。

「血のりの量が多過ぎたとか、包丁持って近ずいた事か、どっちがダメだったのか」

 どこがダメなのか分からないから次も流そうかと考えていると、少し離れた場所に光が見えた。

「あー、ルート間違えたのかな」

 山コースの脅かす側には間違えたルートに行った生徒を正しいルートに戻すルールがある。

「仕方ない、ここが一番近そうだから行くか」

 ついでに少し意見が欲しいからな。

 とりあえず死体人形を持って、出来るだけ物音を立てずに近づいていくと一人の少女がいた。

 どうやらペアと逸れたらしい、近くにそれらしき人がいない。

 少女まである程度近ずいたので、先ずは物音を立てる。

 すると、少女は怯えながら周りを見渡し始めたので徐々に音を大きくして、良い感じに怯えた少女の前に死体人形と包丁を手にして現れ一言。

「………お前も……コロス」

 低い声で告げてしばらく少女は恐怖の顔になり……。

「きゃあああーーーーっ‼︎」

 悲鳴を上げた。

 一回目と違い悲鳴が聞けた。どうやらこのぐらいが良いらしい。

 満足するのはここまでにして元のルートに戻るように言わなければ。

「じゃあ、ルートから外れてるから戻るか」

 案内する為に近づくと、少女は後ずさり手の平をこちらに向けた。

「あとペアの人どこ行った」

 そんなこと気にせずに近ずいていくと少女の手が淡く光を発した。

 そして、今日の記憶はここまでしかない。

 

「おや?おやおや?お〜やっと目が覚めましたか」

 知らない天井、知らない顔、知らない陽気な声、それだけで第一声は決まった。

「どこ?」

 とりあえず、横たわる自分の顔を覗き込む人に聞いてみた。

「う〜む。残念な反応だ」

 今度は自分の顔の高さまでしゃがんだ。

「そ〜だね〜……ここはいづれの世界、ここはいづれの常識、ここはいづれ消える場所」

 眼の前で指を三つ立て言い、次にこう言った。

「さて、謝罪は後にして……ようこそ異端者(エクセプション)よ。じゃあ、移動しようか」



 

 

 


元獣は自分の中で完結した。

これは逃げないと思いたい

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