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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
96/373

(アリス)20

 アリスが緊張していた。

それだけ手強い魔物なんだろう。

俺は探知スキルと鑑定スキルで探した。

けれど見つからない。

アリスの気配察知より俺の探知スキルの方が上位のはず。

そうなると小型の魔物しか考えられない。

EPを調整しながら精度を上げた。

飛んでいると言うことなので、ついでに3D化。

見つけた。

 近い。

北側の木々の上。

十六匹が群れなし、微かにだが小気味良い翅音を響かせ、

こちら方面に飛来して来た。

 鑑定スキルを連動させた。

コールビー。

Eランク(75)、蜂の種から枝分かれした魔物。

二対四枚翅。

三対六本足。

体長は成虫になると50センチほど。

武器は毒針。

足で獲物の動きを封じ、毒針で仕留め、口で解体して巣に運ぶ。

全身が防具や調剤の素材として売れるのだが、

群なして飛ぶので討伐し難い。


 ランクはアリスの方が格上。

緊張する理由が分からない。

そこで尋ねた。

『恐いのか』

 アリスが子猫姿で総毛立ち、俺を振り返り、

『ふざけないで、恐い訳がないでしょう。

手間がかかるのよ。

奴等は一対一を避けて、いつも群で襲撃してくるの。

それを殲滅するのが七面倒臭いのよ』キッと睨んだ。

 怒りは一時的なもの。

直ぐに口調を変えて俺に言う。

『奴等は自在に飛ぶから注意するのよ。

前後左右、上下、宙返り。

最初は鳥と動きが違うから面食らうかもね。

・・・。

勝負よ。

どっちが沢山撃ち落とすか』

 言い終わるよりも早く行動に移った。

腰掛けていた枝から立ち上がり、器用な仁王立ち。

コールビーをその姿勢で迎え撃つ。

妖精魔法、ウィンドーカッターを放った。

立て続けに五発。

先頭の三匹を仕留めたのだが、二発は難なく躱された。

 コールビーの群は慌てながらも四つに分かれた。

正面に三匹、高所に三匹、右方に三匹、左方に四匹。

アリスを敵と認識した様子。

四方から一斉に、爆撃でもするかのように降下して来た。

一段と加速、距離を縮めた。


 俺は援護する事を伝えた。

『真上は俺が片付ける』

『しようがない、任せてあげる』

 俺の使い勝手の良い攻撃魔法は水魔法。

魔法の練習のほとんどを水魔法で行っている。

一つの魔法を磨き上げ、精度威力を意識して行えば、

全てに通じると信じている。

 イメージは高射砲。

威力EP3のウォーターボール、水弾を自動装填。

アリスを真上から襲おうとする三匹を、

探知スキル3D表示でロックオン、ホーミング誘導。

軌道は相手の動体視力を考慮し、横滑りするスライダーにした。

ここまでの手順を再確認、OK。

三発を続けざまに放った。

 

 アリス目掛けて急降下していた三匹が水弾に気付いた。

速度も威力も脅威だ。

ただ、こちらに向かって放たれた物だが、狙いが外れていた。

無駄撃ちと認識して三匹は加速してアリスに迫った。

 水弾が妙な動きをした。

ククッと横滑り。

気付いた時には被弾。


 アリスを襲おうとしていた残敵の半分が方向を急転換した。

俺を敵と視認したらしい。

こちらに向かって来た。

数は五匹。

 俺は幼気な児童。

堂々と立ち向かう勇気は持ち合わせていない。

けど問題はない。

高射砲のイメージをキープしていた。

手早くロックオン、ホーミング誘導、軌道は横滑りするスライダー。

手順再確認、OK。

五発を放った。

 アリスはと見ると、彼女も善戦していた。

敵を引き付けてウィンドーカッター、そして移動。

枝に飛び移ってウィンドカッター、そして移動。

彼女は俺のような小技が使えないので、強引に軌道を曲げていく。

どのような原理かは知らないが、たぶん、力技。

それでグイグイ曲げて、敵の動体視力を翻弄した。


 国都の外郭南区画。

その外壁に面した一角にスラムがあった。

国都公認という訳ではない。

平民の家を持たぬ低所得者層が集まり、自然発生的に生まれたのだ。

低賃金で働く者達を必要としている限り、

このスラムが壊されることはないだろう。

 町並みからしてゴミゴミしていた。

凸凹が著しい石畳、壊れた玄関、落ちた看板、半壊の屋根等々、

数えたら切りがない。

おまけに路地まで入り組んでいて完全な迷路。

でも、どこからも区画整理しようという声は上がらなかった。

莫大な金がかかるので地主達もお手上げ状態なのだ。

 昼から表通りで酒を浴びている者達がいた。

どうやって稼いだのかは知らないが、山盛りされた肴もあり、

場は大賑わい。

「ひゃはっはっは、これで三日は飲んでいられる」

「彼奴の財布を取り上げたんだろう」

「人聞きの悪い。くれると言うから貰ったんだ」

「どうだか」

 その脇を女が子供の手を引き、逃げるように足早に過ぎて行く。

「目を合わせたら駄目よ」

「うん、分かってる」

 路肩で寝ている者も散見されるが、珍しい光景ではない。

多くは寝たっきりになった者達だ。

スラム住民達が孤独死した者からの疫病発生を怖れ、

表通りにゴミのように捨て置きするのだ。

それを三日に一度、役所の者達が荷馬車で回収して行く。

運ばれる先は国都の外にある国営の焼き場。

細い息をしていても二本足で歩けなければ死体同然に、

平地に掘られた穴に投げ込まれ、

魔法使い達により丁寧に焼き上げられるのだ。


 寝た切りの老人の傍を男が駆けて行く。

この辺りでは知られた顔だ。

それが焦燥感に駆られた顔で駆けて行くのだから、

人目を引かない訳がない。

行き交う誰もがトラブル発生を予感した。

 男が飛び込んだのは古びた大きな建物。

傍目には今にも倒壊しそうに映るが、内部は全く違った。

最新の建材でリフォームされており、新築も同然になっていた。

 ここは外郭南区画のスラムを束ねるボスの一人、

ザッカリーの本拠であった。

ザッカリーファミリー。

建物入り口には見張り、付近には巡回している連中もいたのだが、

男を止める者はいなかった。

中には完全武装の警備の者達が屯していた。

「どうしました」一人が慌てて敬語で尋ねた。

「ボスに急用だ、俺が来た、と伝えてくれ」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 場面変更が急激に変わるので頭が混乱する。 もう少し改行を増やすか記号(☆とかーとか)を入れると分かりやすくなると思います。
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