表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
68/373

(幼年学校)14

 国都は東方・北方・西方を鬱蒼とした深い山々、

南は巨椋湖を中心にした湿地帯、四方を自然の要害で囲まれていた。

だからと言って孤立している訳ではない。

幾つもの街道が整備され、四方に繋がっていた。

東方は北海道から、西方は九州の先のオアシス都市・琉球まで。

 国都の外周には広大な平地が広がり、

農村や各種の施設等が点在していた。

俺達が選んだ枝道の先には冒険者ギルドの施設があった。

馬の放牧地だ。

堀割と外壁で囲われているので内部は窺いようがないが、

馬の嘶きが頻りに聞こえて来るので、それと分かった。

 俺達は目立つ。

お揃いのカーキ色のローブ姿の四人組。

どう見ても魔法使い気取りの子供パーティだ。

擦れ違う大人達に心配された。

「山に入ってはいけないよ」

「魔物を見たら、急いで逃げるんだよ」等々。

その度に俺達は、「薬草採取するだけだよ」と弁解した。


 人の気配が切れたので俺達は木立の陰に入った。

それぞれが手早くローブを脱ぐ。

俺がローブの下に袈裟掛けしている草臥れたズタ袋は目立たないが、

キャロル達のマジックアイテムのズタ袋は目立つ。

真新しいのだ。高価な品とも分かる。

分不相応、新人冒険者には相応しくない。

稼ぎからすれば、ランク的にはDクラスから持てる装備品だ。

三人揃って裕福な商家の子なので致し方ないのだろうが、

とにかく悪目立ちする。

奪ってくれと言っているかのようだ。


 俺達はマジックアイテムから装備する物を取り出した。

児童にとって金属の防具では動きにくいので、全て革製品であった。

帽子、手袋、胴当て、肘当て、膝当て、長靴。

剣帯には短剣、採取用のナイフ。

 俺は虚空の使用に慣れてきた。

手にするイメージだけ。

左手にM字型の複合弓とイメージすれば、それが左手に。

右手に矢とイメージすれば、それは右手に。

タイムロスなく取り出せた。


 装備を終えた俺達は行動を開始した。

勘働きに優れているからという理由付けで俺が斥候。

次は薬草探索が役目のキャロル。

三番手は盾役のマーリン。

最後尾は後方の安全確認が任務のモニカ、槍役。

これはカールが考えたパーティ編成でもあった。

 冒険者パーティ「プリン・プリン」の初めてのお仕事が始まった。

薬草の採取。

Fクラスの冒険者にとって常時依頼のお気楽なお仕事。

これでポイントを稼げば、

通常は成人から一年の経験と実績ポイントが必要なのだが、

成人と同時にEクラスに昇格も出来た。

 俺は探知スキルと鑑定スキルを連携させた。

脳内モニターに俯瞰した地図、鳥瞰図。

多数の茶色い点滅が示された。

方向から冒険者ギルトの放牧場の馬、と分かった。

緑色の点滅。

これは街道、脇街道、間道、枝道等を行き交っている者達。

怪しい点滅はなし。


 風に乗って遠くで争っている声が聞こえて来た。

風の吹く方向から斜め前方の山中。

暇なのでそちらに探知スキルを伸ばして見た。

すると入り乱れる緑色と黄色の点滅があった。

冒険者パーティと魔物の群が戦っている様子。

青色の点滅。

一人が魔法を発動した。

黄色の点滅が一つ消えた。

間を置いて緑色の点滅が一つ動きを止めた。

そして消えた。

 冒険者は基本、自己責任。

魔物との戦いに限らず、宝物探しも、護衛も・・・自己責任。

俺はみんなには黙っていることにした。

 しばらく行くとキャロルが自生している薬草を見つけた。

五種類ほどが広範囲に広がっていた。

俺が警戒に立ち、他の三人が採取に専念した。

採取した物を竹籠に入れてズタ袋に収納。

これを何回か繰り返した。

 思いの外、大量に薬草を採取した。

帰ろうかなとした時だった。

こちらに向かって来る黄色の点滅、群を発見した。

密かに接近して来た。

明らかに俺達を狙っていた。

奇襲。


 脳内モニターに文字。

「Fクラスの魔物が接近中です。

ゴブリンの群です」

 鬼の種から枝分かれした魔物で、単体だとFクラスの魔物。

身長も児童かと見間違えるほど低いが、腕力は大人並み。

硬い外皮と剛毛に覆われ、額の左右には鋭い角を持っていた。

単純なゴブリン語を使うが、長命なゴブリンは人の言葉も理解する。

人から奪った武器を器用に扱うので群れなすと侮れない。

群を率いる個体にもよるが、

群による狩りではD・Cクラスの力量を示すこともあるという。

 ゴブリンの集落に雌はいない。

雌が全く産まれないのだ。

それで外部から雌を強奪拉致し、腹を借りて集落を維持した。

雑食だからでもないだろうが、雌の種にも拘らない。

人でも魔物でも、雌であれば構わなかった。

獣姦が習性で、毛色こそ違うが常に雄のみが産まれてきた。

これが原因でゴブリンは他の魔物にも忌み嫌われ、

発見され次第、襲撃される側に立たされていた。

常在戦場、ゴブリンを現すに相応しい言葉だ。

 俺は緊張した。

傍には女児三人がいた。

俺が守るべき対象だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ