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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
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(幼年学校)13

 モーニングは他とは違っていた。

冒険者ギルドの併設のカフェなので、まず量から違っていた。

焼き肉大盛り。

これが大人向けの焼き肉大盛りなのだ。

最初は閉口したが、慣れとは恐ろしいもの。

今ではペロリと完食出来るようになった。

これにトースト二枚、スープ、ゆで卵、ドリンク付き。

 運ばれて来たモーニングを口に運んでいると、

キャロルが呆れるように言う。

「そんな量をよく朝から食べられるわね。

これ以上育ってどうするつもり」

 三人は自宅で朝食を食べて来たようで、

手元にはジュースしか置かれていない。

「学校の食堂のモーニングに比べ、ちょっと多いくらいだよ」

 マーリンに含み笑いで尋ねられた。

「今日は何の肉」

 俺は舌触りで確認した。

「たぶん・・・、定番のガゼローンかな」

 国都の周辺は狐の生息域で、それから枝分かれした魔物。

ガゼローンはEクラス。

他にも狐から枝分かれした種は多い。

例えばDクラスのガゼミゼル。Cクラスにはガゼラージュ。

その三種は俺達が昨年暮れの大晦日に遭遇した魔物でもあった。

ガゼローンは国都の人々には珍しくもない魔物なので、

肉は低価格で売買されていた。

「味付けはどう」

「良いんじゃないかな」


 キャロルが切れ気味に言う。

「私の質問に答えていない。

これ以上育ってどうするつもり。

枯れ木にでもなるつもりなの」

 今の俺の体軀は痩身に近い。

幾ら食べても余分な肉が付いてこないので、

このままだと骨と皮だけになってしまいそう。

「だからちょっとでも肉を付けようと、頑張って食べてるんじゃないか」

「もっとバンバン筋肉を付けなさいよ」

「ええっ、今の時期、そんなに筋肉は付けないよ」

「どうして」

「育つ時期に筋肉を付けすぎると、

伸びようとする骨を阻害するだけで何の益もないからだよ」

「えっ・・・、そうなの。

筋肉を付けすぎちゃ駄目なの」

「たぶん駄目だと思う。たぶんだけどね。

村一番の筋肉自慢の人は背が低かった。二番目も」

「それは・・・」キャロルが愛くるしい目を見開いた。

 俺は前世で耳にした説を分かり易く口にした。

「人間はね、赤ちゃんからすくすく、

縦横平均に大きく育つんじゃないと思うんだ。

肉が付いて横に丸くなる時期、骨がスクスク上に伸びる時期、

この二つの時期を交互に繰り返していると思うんだ。

だから僕は筋肉だけは鍛えすぎないようにしてきたんだ。

骨を押さえて上に伸びる邪魔をさせたくないから」


 キャロルが幼馴染みの二人を見て、

「今の話、聞いたことがある」と尋ねた。

「私は初耳」マーリン。

「私も」モニカ。

 俺は三人を見比べた。

「キャロルは二人とは違っているよね」

「何が」

「無責任な言い様になるけど、でも言うよ。

二人に比べてキャロルは動きすぎで、

食べた物全てを消費しているイメージしかないんだ。

たぶん、身体の成長に回す分を残してないんじゃないかな」

 マーリンとモニカが顔を見合わせ、

「あってるかも」口を揃え、頷いた。

「そうなの・・・」とキャロル。

「アンタは道場でも一番最後まで残って鍛えてるじゃない」モニカ。

「そうそう、朝も自己鍛錬とか言ってるし」マーリン。

 俺は話を締め括った。

「育ちきっていない身体を全力で鍛えたら、故障しか思い浮かばない。

少しは手を抜く事も覚えたら」

「そうなんだ」溜め息のキャロル。

 元気を無くしたキャロルを俺は励ました。

「試しに、これから手を抜いてみたらどう。

まだまだ十才、育ち盛りの真っ最中じゃないか。

手遅れじゃないと思うよ」


 モーニングを終えた頃合い、ギルドを見ると人が少なくなっていた。

多くの大人の冒険者は依頼を受注し、現場に向かったらしい。

俺達も立ち上がった。

 先ず掲示板で最新の魔物情報を見た。

平地に出没する魔物はFクラスかEクラス、たまにDクラス。

山中だとCクラスにBクラス。

この一月、AクラスやSクラスの魔物は確認されていないそうだ。

 次に依頼を見た。

俺達が請けられる薬草採取は、大半が年間を通した常時依頼。

それとは別に期限付き依頼が張り出されている事もままあった。

希な病気が発生した場合などだ。

急ぎの仕事なので見返りの報酬も多い。

それだから掲示板の確認は必要なのだ。


 背の高い俺が掲示板の上の方を読み、下をキャロルが読む。

その様子をマーリンとモニカが眺めている。

「急ぎの依頼はなし」と俺が言うと、「こちらもなし」とキャロル。

 俺達は常時依頼を受注した。

東門から外に出た。

内も外も、相も変わらず行き交う人々で溢れていた。

街道から逸れて間道を行く。

間道も人が多い。

行商人、農夫、旅人等々、流石は人も物も集める国都。

俺達は途中で枝道を選んだ。

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