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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
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(幼年学校)9

 学校生活は順調に進んだ。

座学も実技も村での教育が行き届いていたせいか、

余裕で付いて行けた。

そんな矢先、来客があった。

四日目の授業が終わり、構内の図書館に向かおうとしたところに、

担任のテリーがわざわざ俺を探しに来た。

「おっ、よかった。

お前にお客だ。

織田伯爵家の者だそうだ。

とりあえず応接室に通しておいた。

・・・。

平民のお前に伯爵家の家臣が面会というのも変な話なので、

担任の俺が立ち会う」

 本館の応接室に入ると、にこやかな笑顔があった。

織田伯爵家のお嬢さまがいた。

一人、ソファーで寛いでいた。

ジャニス織田。

俺より二つ上だから今は十二才だ。

 ソファーの後ろに従者二人が控えていた。

一人は守り役のエイミー。

彼女は俺の七つ上だから今は十七才。

金髪二人がいるせいか、室内が華やいでいた。

 もう一人は知らない顔。

無精髭が示す通り、部将なのか・・・。


 俺は戸惑った。

ジャニスは魔法学園の生徒を示す紫色のローブ。

思い出した。

彼女のスキルは火魔法。

でも彼女が国都の魔法学園に在籍している事までは、

全く想定していなかった。

 戸惑っている俺をテリーが救ってくれた。

「どうやら知り合いのようだな」

「はいと言うか、顔見知り程度です。

相手は伯爵家のお嬢さま。

僕は僻地の村の平民ですから」

 ジャニスが割って入った。

「ニャン、遠慮はいらないわ

平民と言っても貴方は旧家の生まれ。

実家は家名を許されているのでしょう。

それに何と言っても始祖は弓馬の神、白銀のジョナサン様。

その本家に生まれた貴方に比べ私なんて塵も同然よ」

 ニャンで入って来た。

猫扱いは無視して・・・、対応に苦慮する。

こうベタ褒めでは・・・。

素直に彼女の言葉に同意していいのか。

それとも生家を形ばかりにでも卑下すべきなのか。

 テリーがまたもや救ってくれた。

ジャニスに問う。

「面識がある事は分かりました。

それでは本日のご用件を伺いましょうか」

「私はニャン本人かどうかを確かめただけ。

用件は後ろの者が申します」

 控えていた無精髭が口を開いた。

「織田伯爵家の国都屋敷に務めるウォルト柴田と申します」

 第一印象は大柄で強面。

彼の言葉はダンに向けられたものではなく、

明らかにテリーに向けられたもの。

「それでご用件は」

「ダンタルニャン殿にだけ」

「それは出来ませんな」

「何故ですかな」

「生徒は学校の庇護下にあります。

親代わりに担任が同席しても問題はないでしょう」

「困りましたな」顔を顰めた。

「私も困りましたな」切り返した。


 互いに苦笑いの応酬。

奇妙な静寂が続いた。

素知らぬ顔でジャニスが割って入った。

テリーに向かい、

「私の用件は済みました。先生、ニャンを宜しくお願いします」

そしてウォルト柴田に、

「私達は別の用事があるので先に帰ります。

馬車は残して置きます」言い捨てると返事も聞かない。

エイミーを促して、さっさと立ち去った。

 あ然とするウォルト柴田にテリーが言葉をかけた。

「後を追わなくて宜しいのですか。

伯爵様のお嬢さまなのでしょう」

 ウォルト柴田はジャニスの立ち去った方向と俺を見比べた。

暫し躊躇った後に、俺に言う。

「伯爵家の屋敷にダンタルニャン殿の部屋を用意しました。

ささぁ、私と一緒に参りましょう」

 俺に部屋、それも伯爵家の屋敷に・・・。

話の道筋が見えない。

混迷する俺。

 テリーが笑う。

「白色発光合格者なので織田家で囲う訳ですか」

 キャロル達に聞いていた。

上昇志向の女子だけでなく、貴族にも狙われると。

学内の女子の熱い視線は感じていたが、まさか貴族が現実になるとは。

 ウォルト柴田は表情を改めた。

「いいえ、領地の子弟が入学したのです。

扶助するのは当然でしょう」

「白色発光合格だからでしょう」

「いいえ、違います」

「尾張から入学した生徒が数人、寮に入っています。

こちらは如何なさるつもりで」

 ウォルト柴田は一瞬、双眼を怒らせたものの、直ぐに表情を繕った。

「そうでしたか、それはそれは、後で善処しましょう。

・・・。

さあ、ダンタルニャン殿、屋敷に移りましょう」

 何が面白いのか、テリーは俺に笑みを見せた。

俺のターンらしい。

俺はウォルト柴田を正視した。

「有り難いお話ですが、お断りさせて頂きます」軽く頭を下げた。

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