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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
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(幼年学校)1

 翌日、俺はカールに連れられて幼年学校に向かった。

受験手続きの為である。

カール一人が出向いて書類を書いて提出すれは事足りる、

そう考えていたが、そうではなかった。

受験者が多いので事前に審査して、振るい落とすのだそうだ。

「どう審査するの」カールに聞いてみたところ、

「面白い物だ」と返され、詳しくは教えてくれなかった。

彼の表情からすると、それなりに面白い物なんだろう。

興味が湧いた。

 幼年学校は外郭南門の近くにあった。

巨大な自然石を左右に置いた異様な門構え。

その奥の広大な敷地に歴史を感じさせる校舎群。

一目で田舎者の俺は圧倒されてしまった。

醸し出される空気が国都のそれとは全く違うのだ。

ここだけが場違いなのだ。

歴史・・・、なのだろうか。

 年末年始の長期休暇に入っている筈なのに活気があった。

人波が次々に校門に吸い込まれて行く。

「受験手続きの初日だから混むんだろうな」とカール。

「もしかして前夜から並ぶ人も」

「行列好きは二日前からだ」


 受験受付が六日から十日までと限られていたので、

これに間に合うように地方から受験生と付き添いが大挙して上京した。

その影響で国都の旅籠・旅館・ホテル等はほぼ満室。

裕福な貴族・商人は国都に屋敷を構えているので苦労はないが、

そうではない者達は宿泊先確保に四苦八苦。

確保出来ない場合は神社か教会に駆け込むのが常とか。

 豪華な箱馬車が何両も門前の近くに停められていた。

裕福な貴族・商人の子弟の送り迎えなのだろう。

それを横目に俺達も門を潜った。


 声を掛けられた。

「ダン」そこにはキャロルの笑顔があった。

傍にはマーリン、モニカ、それに彼女達の付き添いの姿も。

彼女達も幼年学校を狙っていた。

地方出身者にとって幼年学校受験は滅多にない機会だが、

国都生まれの者達はその限りではないそうだ。

上京費用や宿泊先確保の苦労をしないで済むので、

受験年齢上限ギリギリまでは何度でも挑む、と笑って言われた。

この点は前世の首都圏の受験生とも共通している。

実家から何度でも超難関大学に挑むことが出来る。

失うのは年月と受験代、交通費なのだが、得るものもある。

得るのは、何ものにも代え難い現実。


 昨夜、カールに状況は説明しておいた。

キャロル達とパーティを組むことになったと。

それを聞いたカールが笑った。

「友達が出来て良かったな」

「どういう意味・・・」

「ダンの性格が性格だから心配してたんだ。

みんなと馴染めるかなと」

 心配されていたらしい。

カール一人ではなく、それが家族の認識なんだろう。

 カールは女児達に軽やかな言葉を掛け、

付き添いの大人達には深々と頭を下げた。

「うちのダンが迷惑を掛けたら容赦なく叱って下さい」


  駄弁りながら行列を続けていると、時折、

叫び、泣き、怒号が前方の体育館から聞こえてきた。

俺が不審に思っているとカールが教えてくれた。

「審査で不合格になったんだろう」素っ気ない。

 途中から行列が二つに分けられた。

少し進むと体育館前で四列になり、中に入ると六列に。

俺達の順番が近付いてきた。

各列の先のテーブルに魔水晶が置かれていた。

「あれが【審査の魔水晶】だ。

鑑定に近い術式が施されていて、受験生の素質を調べるそうだ」

「鑑定そのものにすれば一発なのに、そうはしないの」

「鑑定の術式を施すのは難しいらしい。

それで審査の術式を編み出したと言う話だ」

 魔水晶が青く発光すれば受験資格有り。

全く発光しなければ不合格。

 俺の二つ前の身形の良い男児が喚いた。

「えー、嘘だろう。馬鹿な、馬鹿な」

 魔水晶が反応しないことに男児が激しく反応していた。

付き添いの騎士が職員に詰め寄った。

「何かの間違いだ。

もう一度やり直せ」今にも腰の長剣を抜かんばかりの勢い。

 ところが職員は意外に冷静。

左隅を指差した。

「あちらへどうぞ。

やり直し希望の行列に並んでください」慣れていた。

 左隅のテーブルにも魔水晶が置かれていて、短い列が出来ていた。


 俺は脳内モニターで自分のステータスを確認した。

「名前、ダンタルニャン。

種別、人間。

年齢、九才。

性別、雄。

住所、足利国尾張地方戸倉村住人。

職業、なし。

ランク、E。

HP、75。

MP、25。

スキル、弓士☆」

 異常なし。

国都に入る前、鑑定スキルで偽装したままだ。

【真偽の魔水晶】はクリアした。

今度は【審査の魔水晶】がどう読み取るのか興味がある。

 順番がきた。

俺は魔水晶に片手を翳した。

反応がない。

これまでの合格者には即座に反応していた。

もしかして、不合格。

と、小さな発光・・・次第に・・・大きくなり、

不自然なまでの強烈な白い光を放った。

我が目を疑った。

これまでの合格者とは全く違う白色発光。

気付くと俺は全身が光に包まれていた。

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