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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
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(旅立ちと魔物の群の大移動)15

 年が明けて俺は十才になった。

冒険者ギルドに登録できる年齢にもなったということで、

さっそくカールに連れられてギルドに向かった。

「イライザから行列が出来るって聞いたけど、本当なの」

「ああ、昔からだ。

困った事に国都は住民が多いから何かある度に行列が出来る。

店の特売日とか、演劇の初日とか。

そのうちに慣れるさ」

「どっちのギルドに行くの」

 国都には四つの冒険者ギルドがあった。

利便性を考慮して東西南北の門近くに置かれていた。

呼称も誰にも分かるように東門近くにあるのが東門ギルド。

西門近くにあるのは西門ギルドといった様に付けられていた。

 真夜中だというのに街中の灯りは一向に消えそうにない。

店も民家も灯りは点けたままで、飲み歩く者が散見された。

「この夜だけだ」とカール。

 俺達は最寄りの東門ギルドに向かった。

国都に入った初日に馬を売ったギルドだ。

イライザが言うようにギルド前には行列が出来ていた。

寒空の下、十数組が並んでいて、始業を今か今かと待っていた。

「子供は成人同伴でなければ登録させて貰えないんだ」とカール。

 俺達は揃いのフード付きローブ姿の二人の後ろに並んだ。

この二人は寒風を避けるようにフードを深々と被っているので、

親同伴なのか、兄弟同伴なのか、その関係性が分からない。

まぁ、どうでもいいことなんだが・・・。


 俺はカールに愚痴った。

「寒いよ、寒いよ」

「我慢、我慢。冒険者は我慢が基本だ」

「知ってるよ、でも寒い中で行列するのは我慢できない。

・・・。

早くから並んでも結局はFランクスタートだから、

成人するまでは薬草採取とかの易しい仕事だけなんだよね」

 子供には討伐等の荒っぽい仕事は認められていなかった。  

「不満か」

「ちょっと不満。いや、かなり不満」

 FランクからランクアップしてEに昇格するには、

十五才から一年の経験と実績ポイントを必要とした。

実質十六才にならないと昇格できない仕組みになっていた。

「そこも我慢だな」とカールが笑う。

「カールの顔を立てて我慢するよ。

でもこれから六年間か、Eランクまで長いな」

 カールが俺の顔を覗き込む。

「どうだか、・・・。

薬草採取してたら魔物に遭遇した、だから討伐した、

って言い訳しそうな顔してる。違うか」図星だった。

「まさか、・・・僕は決まり事は守るよ。ねっ、知ってるでしょう」

「へっ、僕ですか。

いつもは俺様でしょう。俺様、俺様」

「ねえ、カール。僕を信じてよ。

神に誓って、無謀なことはしないよ」

 カールが腕組みした。

「その神はどこの神様だい。

何時も走り回っていた山の神様かい。

・・・。

もしいたとしてもだ、

ここでは遠すぎて神様の目も届かないから好き勝手ができる、違うか」

「ねぇカール、今日はちょっと厳しくない」

「アンソニー様に厳しくするように言われている。

グレース様、ニコライ様、エマ様、みんなも心配してる。

あの子は人の言葉には全く耳を貸さないって」

「みんなに・・・。全く信用がないな」

「信用ってのは日々の積み重ねだ。

ダン、君は積み重ねた覚えがないだろう」

「・・・困ったな、・・・ないな」

「分かればよろしい」


 笑い声。

すぐ前に並ぶ二人が肩を振るわせて笑っていた。

声から二人は女と分かった。

ひとしきり笑ったあと背の高い方が振り返った。

フードを外して若い娘が微笑む。

姉なんだろうか。

「ごめんなさいね」長身を折り曲げて謝った。

「いいえ、いいえ、こちらこそ」カールが慌てて頭を軽く下げた。

「聞こえる話があまりに可笑しかったものですから」

「聞き苦しい話しで、こちらこそ申し訳ない」

 小さな方も振り返り、俺達を見比べた。

どう判断したかは分からないがフードを外し、俺を見上げて尋ねた。

「貴男、本当に十才なのかしら」なんとも愛くるしい、まるでリス。

 俺は彼女を見下ろした。

「年が明けたから十才。君もそう」

 リスが微笑む。

「私も十才。

私と貴男を合わせて二つに割れば、ピッタリの身長かもね」

 十才にしては俺は大きすぎるし、彼女は小さすぎる。

「かもね。

でも割ったら痛そう。だから止めよう」

 受けを狙ったらリスには受けた。

口を大きく開けてケラケラと笑ってくれた。

「僕はダンタルニャン。

冒険者になりたくて、はるばる尾張より上ってきました」

 途端、リスが表情を改めた。

「まあ、尾張なの。ちょっと遠いわね。

私はキャロル、国都よ、よろしくね」

 姉らしき方が名乗った。

「私はシンシア。

キャロル様の家庭教師です」

「私はカール。

ダンタルニャン様の家庭教師のようなものです。

ダンタルニャン様が悪させぬように尾張から付いて参りました」

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