表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
48/373

(旅立ちと魔物の群の大移動)13

 俺は長くは悩まない。

まず試すことにした。

先頭に向けて矢を三連射。

弓士スキルがあるので狙いは外さない。

一本目は胸元。

予想通り、刺さらない。

弾き飛ばされた。

二本目は顔。

腕の一振りで払い飛ばされた。

三本目は太腿。

これまた弾き飛ばされた。

 五頭のガゼラージュが足を止めた。

互いに顔を見合わせて、何やら呻り声。

会話が成立しているように聞こえた。

 俺は次に打つべき手を考えた。

唯一の手掛かりがあった。

その蜘蛛の糸に縋り付いた。

放った矢がガゼミゼルのブレススノーストームに突き刺さった瞬間、

ブレスを無効にして破裂した。

あれはどう考えてもEP付加の効果だろう。

だとすれば、EPの数値を上げて鉄を凌ぐしかない。

これまで一射につきEPから数値2を付加していた。

常時稼働させている探知スキルと鑑定スキルには、

それぞれ数値5を割り振っていた。

それからすると次からの一射のEP数値は3ではないだろうか。

駄目なら上げればいい。

EPには余裕があるし、回復も早いので問題はない。


 二足歩行だったガゼラージュが四つ足に戻した。

俺を脅威ではないと判断したのか、速攻に転じ来た。

 俺は矢をつがえた。

と、空気が変わった。

ガゼラージュの動きに変化。挙動不審になった。

 脳内モニターに映った。

俺達の後方に新たな色の点滅。

緑色と茶色の点滅。

蹄の響きを伴い、一塊になって急接近して来た。

巡回中の騎兵隊しか考えられない。

 俺は後方を振り返った。

騎兵隊が現れた。

二十数騎が押し寄せて来た。

 俺達を左右から追い越してガゼラージュに向かって行く。

五頭が一斉に立ち上がって、仁王立ちで咆えて威嚇するが、

兵も馬も全く怯まない。

速度を維持して突っ込んで行く。

初手は弓騎兵、八騎。

隊列から抜け出し、回り込むようにして矢を射た。

俺が持つ複合弓と同型だが、

明らかに弓騎兵が持つ方が高性能。

国軍の装備品に違いない。

しかも、それから魔力を感じ取った。

脳内モニターに魔力発動中を現す青色点滅を表示。

魔法の術式が、複合弓に施されているのだろう。

それから放たれた矢が次々にガゼラージュに突き刺さった。


 槍騎兵が入れ替わった。

七騎が五頭の背後に回り込んだ。

正面よりは槍を振り翳して挑んで行く。

躊躇いがない。

鉄の武器を弾き返すガゼラージュと戦い慣れているようで、

外皮の厚くない部位を狙って槍で突き刺し、抉る。

それを弓騎兵が遠間より援護する。

 ガゼラージュは怒りの咆哮を上げて反撃するが、

騎兵隊の連携の前に為す術がない。

矢を射込まれ、槍で少しずつ削られて行く。

 その頃になると、他の騎兵隊も加勢に現れた。

一声掛けて攻撃に加わった。

 冒険者のパーティも三組現れるが、こちらは騎兵隊に遠慮して、

攻撃には加わらず他の魔物の出現に備えた。


 俺の仕事は終わった。

空になった矢筒と複合弓をズタ袋に仕舞い、

荷車から下りてカールに歩み寄った。

「誰も怪我しなくて良かったね」

 カールは呆れたような表情で俺を振り返った。

「だなー。

とにかくご苦労さん」

「ねぇ、カール、俺は目立ちたくないんだけど」

「分かってる。

子供達の中に混じって静かにしていろ。

後は俺に任せておけ」

 多勢に無勢。

ガゼラージュ五頭は三人ほどに手傷を負わせただけで、

息の根を止められてしまった。


 カールが騎兵隊の方へ歩いて行くと、隊長の一人が笑って迎えた。

「久しぶりですね」元の部下であった。

「そちらも出世してなによりだ」

 互いの近況を伝え、簡単に話を纏めた。

ガゼラージュは騎兵隊が倒したので騎兵隊に所有権があると。

「大尉は相変わらず欲がありませんね。

普通なら少しはゴネルのですが」

「助けてもらったのは事実だし、ゴネルのは面倒なんだよ」

「ガゼラージュの外皮が高価で売れると言うこともありますけど、

荷馬車に積んで城郭内に運び込めば、

俺達がきちんと仕事しているのが丸分かりで助かります」

「昇進に結びつけば良いんだけどな」

 その言葉にもう一人の隊長が大笑い。

さっそく駐屯地から荷馬車を呼んで来るそうだ。


 カールは冒険者パーティ三組を呼び、そのリーダーと話しを纏めた。

残りのガゼローンとガゼミゼルの所有権はカール達にある。

けれど数が多いので解体と搬出に人手が足りない。

そこでパーティ三組に協力を依頼した。

全ての解体と搬出を受けてくれれば儲けは折半。

ガゼローンとガゼミゼルはガゼラージュには劣るが、

売れる部位は多い。

彼等にとって濡れ手に粟。

「喜んで」即答し、

「直ぐにギルドから荷馬車を調達して組ます」と数人が走り出した。


 俺はイライザに背中を叩かれ、「さあ、仕事よ」と鍬を手渡された。

見ると他の子供達はすでにジャガイモ掘りを再開していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ