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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
346/373

(西部戦線は異状ばかり)8

 この数の竜巻では正面突破は不可能。

下手すれば巻き込まれる。

エビスが壊れる事はないだろうが、搭乗している自分達が目を回す。

何日かは立ち直れないだろう。

アリスは決断した。

『退避よ、各個に【転移】を選択、方向は左斜め前方、宜しく』

 それぞれが返事をし、行動に移した。

アリスは全員の退避を確認、最後に【転移】した。

取り敢えずは、それぞれの判断による【転移】なので、

距離は一定ではない。

でも、一応は視界の範囲内で収まっていた。


 再び編隊を組んだ。

アリスが言う。

『転移の術式を施してくれたダンタルニャンに感謝ね。

草葉の陰の彼に賛辞を送るわ』

 ハッピーが笑った。

『パー、まだ死んでねえっぺー』

『それはそれとして、コースを戻すわよ』

 

 竜巻が九州方向へ向かうのを尻目に、

エビス飛行隊は本来のコースに戻った。

途中までは竜巻の痕跡が見えた。

砂漠が大きく深く抉られていたので、それと分かった。

しかしその痕跡も、二日か三日もすると砂に呑まれ消えているのだろう。

 途次で竜巻の痕跡とは別れた。

オアシス都市国家を二つ、小さなオアシスを一つ過ぎた。

そして見つけた。

兵装ではないが、異様に長いキャラバン。

魔物・キャメルソンが牽く幌馬車が百輌余。

鑑定で、コラーソン王国軍と分かった。

キャラバンに扮しているとはいえ、余りにもあからさまな行動だが、

通過するオアシス国家には通告済みなのだろう。


 ハッピーがアリスに尋ねた。

『ピー、潰すッペー』

『そうね』

 すると妖精の一人が言う。

『待って、数が少ないわ。

これで九州に攻め込むのは無理よ。

一片の土地も得られないと思う。

だぶん・・・、これは偵察かな。

潰すのは何時でも出来るから先を急ぎましょう。

まずは派遣された兵力を探るのよ』


 オアシスとオアシスを繋ぐシルクロードにそれらを見つけた。

こちらは兵装で、長い長い隊列を組んでいた。

五千、五千、五千、五千、五千。

渋滞せぬ様に気を配り、間隔を空けていた。

彼等は基本、城郭都市には入らず、水や糧食の提供を受けるのみで、

郊外にて野営した。

『いるわね』

『長い砂漠をご苦労様ね』

『どうする、潰す』

『まだまだよ、まだ数が少ないわ』

 実際、これで終わりではなかった。

念の為に先へ飛ぶと、日にちを空けて隊列は続いていた。

五千、五千、五千、五千、五千と。


 結局、隊列はコラーソン王国の国境まで続いていた。

最後尾を鑑定で確認した。

『プー、十五万だっぺ』

 これなら確実に九州の一角を切り取れ、状況次第だが、

その橋頭保を長く維持できるだろう。

アリスが言う。

『それじゃ・・・、まず王都を滅ぼすわね』

『ペーーーー』

『ここまで来たんだもの、ついででしょう』

 妖精の幾人かが驚きの声を上げた。

『『『ひえー、なんじゃそれー』』』

 アリスが仲間達を見回した。

『問題があるのかしら』

『『『市民は武装してないのよ』』』

 すると妖精の一人が笑った。

『何を言ってんの、アンタたち。

軍は国のただの手足よ。

理非善悪は考えず、命令に従うのみの大馬鹿集団よ。

その手足をもいでも、国力があれば何度でも再生できるの。

兵士を産み、武器を造り、兵站を満たす。

それが国という生き物よ』


 話し合いの末、王都を滅ぼす事になった。

アリスが全員に再度確認した。

『国土が広いから国を滅ぼすのには時間が掛かるわ。

それは面倒臭い。

だから国そのものは滅ぼさない。

代わりに、王都を灰燼に帰す。

・・・。

まず、周囲を火の海にして魔物のスタンピードを引き起こす。

それを見届けてから王都を攻撃する。

いいわね、みんな』


 コラーソン王国の最東端は砂漠に面しているが、

西へ進むにつれて緑地帯が広がっていた。

初めての地なので、ナビに王都の位置は表示されないが、

飛行隊は街道の上を余裕で飛んでいた。

王都へ続く道だと信じて疑わない。

全ての道は王都へ通ず。

幾つもの町や村を過ぎ、夜を徹して飛行した。

 日の出前、連山の向こうに見つけた。

これまでとは違う大きな街。

遠目に鑑定した。

王都。

平地にて、深くて広い水堀と高い外壁に囲われていた。

 アリスは飛行隊をより高々度に導き、王都を見下ろした。

平野のど真ん中にあり、近くの川の水を引き込んでいた。

外堀、外壁、街区、内堀、内壁、貴族街、王宮。

籠城されれば手古摺りそうな構えの城郭だ。

人口は五十万を数えても不思議ではない。


 平野の周囲は山々と深い森が連なっていた。

魔物が巣くっていると断言できた。

アリスが指示した。

『さあ、やるわよ。

火で魔物を平野に追いやるのよ』

 途端、飛行隊がばらけた。

それぞれが手前勝手に、王都の真上から全方位に散開した。

残ったのはアリスとハッピーのみ。


 東の高山の真上でホバリングした妖精が、妖精魔法を起動した。

山頂をロックオン。

単純だが巨大な火玉・ファイアボールを放った。

大爆発。

山頂全体を深く抉り、火山爆発の様な噴煙噴石を飛ばした。

 昇り始めた朝陽が、その様子を露わにした。

運が悪いのは、裾野の村の早起きした者達。

度肝を抜かれ、恐れおののいた。

 妖精は矢継ぎ早にファイアボールを高山の至る所に放った。

その度に上がる爆音。

迷惑したのは夜なべを終え、これから巣に戻ろうとした魔物達もだろう。

否、迷惑どころではないか。

一瞬、身を固くし、死を覚悟した。

しかし、野生の勘。

次の瞬間には何の考えもなしに足を動かした。

現場から逃れようと必死になった。

闇雲に逃走した。

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