(大乱)88
ドラゴンが顎を大きく上げ、空に向かって何度も激しく咆哮した。
吼えている様にも聞こえるが、実態は泣き叫ぶに近い。
そのせいで喉元が、がら空きになった。
チャンス、好機到来。
俺は方向を修正した。
狙うは喉元。
重力スキルを全開にした。
ついでに風魔法を重ね掛け。
突撃。
構える槍は光魔法が施された逸品、当然ダンジョン産、神話級。
ドラゴンの視線が俺を捉えた。
これまでとは違い、感情を露わにした目色。
俺の読み違いだろうか、憎悪にしか見えない。
まあ、そうかも知れない。
ドラゴンが口を大きく開けた。
外の空気と一緒に魔素等を取り込む吸気。
それらを体内に貯蔵していた物等と共に錬金して変換。
仕上げた物を排出する、排気、ブレス。
俺はそう理解していた。
しかし、目の前のドラゴンの行為はそうではなかった。
前段階の吸気をしていない。
となると、悪足掻きなのか、最後の意地なのか。
体力の限りを尽くしてのブレス・・・、来るか。
俺は止まらない。
ここまで来たら俺が早いか、ドラゴンが早いか。
たぶん、体感的には俺が早い。
行け行け、GoGo。
あっ、読み違えた。
ドラゴンが倒れる様に前のめりとなり、大きく傾いて来た。
これはっ。
視線で俺を捉えたま口を大きく開けて、
俺そのものを捕えようとするではないか。
拙い、逃れられない。
これからの方向転換では遅い。
下手に回避行動を取れば、態勢を崩し、反撃を喰う。
咄嗟に俺は重ね掛けしていた風魔法を変更した。
速度から攻撃魔法に切り替えた。
風槍・ウィンドスピア。
イメージは捕鯨用の銛。
当たった瞬間に先端が回転し、抉りながら深く突き刺さる。
俺の場合の魔力表示はMPではなくEP。
俺特有のもの。
この世界の者達とはちょっと違うらしい。
詳しくは脳内モニターも説明してはくれない。
間近に迫る大きく開けられた口。
口内の手入れが良いのか、立派な牙と歯並み。
最奥に喉チンコが見えた。
正に真っ赤なチンコ。
風槍が間に合った。
喉チンコを貫いた。
血肉が舞う。
のみならず、回転しないがら真っ直ぐに飛んで行き、
喉奥の壁に突き刺さった。
食道口の肉壁を喰い散らすかの様に破壊し、破裂した。
ここまでが限界だったようだ。
ドラゴンも体内の痛みは我慢できないらしい。
明らかな悲鳴を上げ、口を閉じようとした。
俺は光体で身体を覆った。
これでドラゴンの体内でも生存できるはず。
口が閉じられる寸前、口内に突入した。
直後、口が閉じられた。
暗い。
幸い夜目が利く。
先行した風槍が破壊した箇所を目指した。
大きな穴から大量の血が噴き出していた。
俺の辞書に躊躇いはない、欠陥品だ。
当たった瞬間、手応えを手の平で感じ取った。
槍に施された光魔法が発動したのだ。
文字通り光を発し、厚い肉壁を切り裂いて行く。
この槍は穂先自体の鋭さに光魔法が重ね掛けされた逸品。
ドラゴンをただの肉として処理を進めた。
ドラゴンは外からの攻撃には耐性がある。
鱗と厚い外皮が鎧を超える防御効果を発揮するからだ。
だが、内は弱い。
それは他の魔物とも共通したもの。
気付いたら暗闇から月明かりの元に出ていた。
貫通していた。
アリスの声が聞こえた。
『ダン、邪魔よ、突入の邪魔よ、どいて』
咄嗟に横に飛んだ。
傍をアリスがエビスで駆け抜けた。
外皮の穴に突入した。
『プー、パッフォーン』
クラクショクかっての。
ハッピーもエビスで突入した。
俺は上空に移動した。
鑑定でドラゴンの様子を見た。
俺の決死の突入は即死には至らなかった様だが、
確実にHPMPは減少していた。
そこへアリスとハッピーが追撃。
死に馬に鞭打つ行為。
ドラゴンの体内を破壊しながら縦横無尽に移動し、暴れている模様。
これでは堪らない。
ドラゴンは湿地で無様に泣き喚きながら七転八倒。
手足は当然、尻尾までもばたつかせた。
ついにHPMPがゼロになった。
凍り付いたかの様に微動だにしない。
それでも魔力の残滓はあるようだ。
身体全体を保全しているのが見て取れた。
アリスとハッピーが体内から脱出して来た。
同時に、久しぶりに脳内モニターに文字が走った。
「ランクが上がりました」
「名前、ダンタルニャン佐藤。
種別、人間。
年齢、十一才。
性別、雄。
住所、足利国尾張地方戸倉村生まれ、国都在住、美濃地方木曽。
職業、子爵、木曽の領主、冒険者、幼年学校生徒、アリスの名付け親、
ハッピーの名付け親、山城ダンジョンのマスター、
木曽ダンジョンのマスター。
ランク、S。
HP、555。
EP、555。
スキル、弓士☆☆☆☆。
ユニークスキル、ダンジョンマスター☆☆☆☆☆、虚空☆☆☆☆、
魔女魔法☆☆☆☆、無双☆☆☆☆☆(ダンジョン内限定)、演技☆☆。
加護、神龍の加護。
称号、邪龍の討伐者」
「光学迷彩☆☆☆☆☆、探知☆☆☆☆☆、鑑定☆☆☆☆☆、
水魔法☆☆☆☆、火魔法☆☆☆☆、光魔法☆☆☆☆、
土魔法☆☆☆☆、風魔法☆☆☆☆、闇魔法☆☆☆☆、
錬金魔法☆☆☆☆、身体強化☆☆☆☆、透視☆☆☆☆、
契約魔法☆☆☆☆、時空☆☆☆、重力☆☆☆、氷魔法☆☆☆、
雷魔法☆☆☆」
ついにランクがSに到達した。
そして光学迷彩と探知、鑑定が上限に達した。
でも他言はできない。
これでは化け物だ。
慰めに仲間のアリスとハッピーも鑑定した。
「名前、アリス。
種別、ダンタルニャンの眷属妖精。
年齢、19才。
性別、女。
住所、山城ダンジョン。
職業、エビスゼロの所有者。
ランク、A。
HP、222。
MP、222。
スキル、妖精魔法☆☆☆☆☆。
ユニークスキル、異種言語理解☆☆☆☆☆、収納庫☆☆☆☆☆、
変身☆☆☆、光体☆☆☆。
称号、邪龍の討伐者」
「名前、ハッピー。
種別、ダンタルニャンの眷属スライム。
年齢、2才。
性別、女。
住所、山城ダンジョン。
職業、エビス一号の所有者。
ランク、A。
HP、222。
MP、222。
スキル、ダンジョンスライム魔法☆☆☆☆☆。
ユニークスキル、異種言語理解☆☆☆☆☆、収納庫☆☆☆☆☆、
変身☆☆☆、飛行☆☆☆。
称号、邪龍の討伐者」
二人の活躍が大きい。
後で説明してあげよう。
その前にドラゴンの始末だ。
とっ、見ると、二人が始末を終えていた。
妖精魔法でドラゴンの身体を清め、ハッピーが収納していた。
『ダンジョンに運ぶわよ』
『ぺー、みんなが喜ぶっぺよ』
『驚くの間違いでしょう』
『ポー、ぽっぽー』




