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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
284/373

(大乱)85

 誤字脱字のご報告、大感謝しております。

大変だとは思いますが、今後とも宜しくお付き合い下さい。


 それは高々度から、高速で急降下して来た。

そしてある程度の高さになると、急激に速度を落した。

それでも衝撃波だけはどうしようもない。

当人とは無関係に、巨椋湖を襲う。

表層を暴力的に圧す。

 激音と共に、無数の水柱が上がった。

耐え切れなかった物達が、水面に大量に浮かび上がった。

腹部を月光に晒す。

周辺の草木もそう。

樹齢とは無関係に、抵抗できぬ木々は圧し折れ、

千切れた草や枝葉が夢幻の様に舞い散る。


 それの姿が露わになった。

ドラゴン。

20メートルを軽く超える奴。

それでも30はないと思う。

そいつが俺を睨む。

鼻で笑う気配。

 俺のみではないと感じている様で、視線を左右に走らせた。

見つけられないのか、首も動かした。

執拗に、四方八方に視線を巡らせる始末。

体躯に似ず、神経質なドラゴン。

 俺はそんなドラゴンは嫌いだ。

もっと堂々としろ。

俺とドラゴンを比べれば、どう見ても大人と赤ちゃん。

本気にならなくても良いだろう。

傲慢でいて欲しい。

そして策に嵌って欲しい。


 生憎、アリスもハッピーもエビス丸ごと光学迷彩で姿を隠していた。

ダンジョンマスターの光体を活用しているので、

簡単に見つかる訳がない。

案の定だった。

ドラゴンは不承不承といった感で、視線を俺に固定した。

それでも警戒だけは解かない。

 俺は奴を鑑定した。

ああっ、見えない。

ランクもレベルも上なのだろう。

予想していたので落胆はない。

少しは可能性がある筈だ。

たぶん、コンマ以下で・・・。

そこに賭けよう。


 奴が小手調べ。

俺を試す様に威圧した。

普通ならそれだけで人は死ねる。

が、俺は死なない。

神龍の加護持ち。

加護に意識を集中して対抗した。

 奴もそれを理解したらしい。

即座に、空中で跳躍するかの様な動き。

小さな小さな俺に向かった突進して来た。


 今の俺は身体強化を施し、重力スキルで飛行を行っている状態。

更なる魔法行使は、低ランク相手なら余裕だろうが、

目の前のドラゴンが相手だとキツイと思う。

けど、避けられない。

反射的に火魔法を起動した。

火の盾・ファイアシールドを五層構築し、前面に展開した。

 分厚い外皮に守られたドラゴンに通用するかどうかは知らないが、

何もしないよりは、ちょっとはマシ。

そんな程度の期待、一寸の虫にも五分の魂。

最後まで、勝つまで諦めない。


 ドラゴンが鼻先でシールドを突き破って来る。

一枚、二枚、三枚、四枚と。

破壊と爆発の音が重なり、空中に響き渡った。

シールドが破られる度に、攻撃者側へ向けて弾ける様に爆発するのだ。

ドラゴンに多大なダメージを与えていると思うが、奴は姿勢を崩さない。

痩せ我慢か、矜持か。

 俺は最後の一枚が破壊される前に虚空から盾と短剣を取り出した。

この二つはダンジョンスライムが宝箱用に錬金した物。

外の世界だと神話級とされる逸品。

盾には風魔法が、短剣には光魔法が施されて威力を上げていた。

 五枚目が破壊されると同時に盾を構えた。

当たる寸前、強固なウィンドシールドが前面に展開した。

ドラゴンの突進を押し止めた。

その鼻先を短剣で突き刺した。

だが、分厚い外皮に阻まれた。

ドラゴンの表情が変わった。

目色を変え、動きを止めた。

俺をジッと見た。

見定める仕草。


 俺はその瞬間を逃さない。

転移した。

奴の頭上、右耳の傍に。

即座に耳の中に短剣を突き刺した。

奴が悲鳴を上げて、両前足で俺を振り払った。

 俺に逃れる術はなかった。

両前足で遠くへ飛ばされた。

その際に盾を巨椋湖に落した。

幸い、身体強化を続行中なので怪我はない。

俺は空中で静止し、残った短剣を改めた。

ドラゴンの血肉が付着していた。

どんなに外皮が厚くても、柔らかい部位はあるという事だ。

となると、狙い目は同じく耳に、目鼻に口か。


 アリスからの念話が入った。

『私達の出番よね』

 ハッピーも待ち望んでいた。

『パー、パッパラパー出撃するっぺ』

 俺は制止した。

『奴のHPとMPを削る。

それを待ってくれ』


 ドラゴンが再び突進して来た。

前の教訓を活かしていた。

鼻先ではなく、両前足を出していた。

足の裏で圧し潰すつもりの様だ。

 俺は虚空から新たな盾を取り出した。

水魔法が施されている物だ。

それを前に構えて短剣を後ろに引いた。

奴を止めて転移、片目を刺す。

余裕があれば両目とも。

 

 とっ、奴が盾の手前で止まった。

まるで急ブレーキを踏んだダンプカーの様な挙動。

そして身体を回転させた。

それはマット運動の前転、でんぐり返しに似ていた。

尻尾が上になった。

勢いのまま、その尻尾を振り下ろして来た。

 俺は盾を上に翳す暇がなかった。

身体強化した身体でも振り下ろされた尻尾の勢いは殺せない。

無造作に下へ叩き落された。

巨椋湖の水面を突き破った。


 一瞬、意識を失ったが直ぐに立ち直った。

沈みながら追撃に備えた。

来る気配がない。

水の中は嫌なのだろうか。

 これ幸い、光体を用いて安全地帯を構築した。

身体強化を解き、普通に全身に魔力を巡らせた。

接続が不調な箇所を探した。

内臓は無事。

骨が二本折れてるだけ。

痛い。

でも、これだけで済んで良かった。

身体強化で補修を開始した。


 アリスからの念話が届いた。

『ダン、無事よね。

無事だと言って』

『ああ、無事だよ。

そっちは』

『ドラゴンが湖に飛び込もうとしたから、ハッピーと一緒に攻撃した。

でも反撃を喰らっちゃった』

『おいおい、そっちこそ無事かい』

『大丈夫よ。

強い相手にはヒットエンドランでしょう。

これで引っ掻き回してるわ』

『ピー、ヒットエンドランランラン』

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと思い付いたのですが、このドラゴンの捕獲ができれば主人公は竜騎士になって関東の反乱軍を征伐できるかなと思いましたが、かなり敵対しているので無理そうですね。 ならば、このドラゴンはメスで…
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