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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
251/373

(大乱)53

 明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。


 誤字脱字の報告、都度都度ありがとうございます。

大感謝です。

 それの外見は魔物・コールビーであった。

ただ、ちょっと大きい。

全長は70センチ。

胴回りの太い部分は50センチ。

 二対四枚羽根。

羽根の片翼は1メートル。

 三対六本足。

足の長さは60センチ。

 

 胴体は頭部、胸部、腹部に分かれてはいるが、

形状としてはラクビーボールに似ていた。

それに羽根と足が付いていた。


 この二体は錬金魔法で造られた物。

ダンタルニャン佐藤子爵が眷属妖精・アリスと、

同じく眷属ダンジョンスライム・ハッピーに強請られて、

チューンナップを繰り返し、強化に強化を重ねた機体であった。

施してある術式もアップデートにアップデートが重ねられていた。

結果がこのエビスゼロとエビス一号。

共に高剛性と高速度を兼ね備えていた。


 右のコールビー・エビスゼロのコクピットにはアリスが搭乗していた。

『遊んでみようか』念話。

左のコールビー・エビス一号のハッピーが応じた。

『パー、一発で決めたら面白くないもんね』

 ミカワオロチの頭上で旋回飛行を開始した。

次第に速度を上げて行く。

それが無用な風を生む。

周辺の木々を大きく揺らし、枝葉を吹き飛ばす。

 質の悪いことに弄ぶかのように時折、

捻りを入れてミカワオロチの鼻先を掠めた。

その度にミカワオロチが噛み付こうとするが、何れも失敗に終わった。


 ミカワオロチがスルスルと胴体を丸めた。

蜷局・・・。

蜷局の中に籠るのかと思いきや、違った。

低い姿勢で蜷局を巻き、鎌首と尻尾を立て、二機に対抗しようとした。

彼我の特徴を考慮すると、

このような慎重な対策にならざるを得なかったのだろう。

防御を固めて反撃の機を窺う。

正解かも知れないが、何度も反撃の機があるとは思えない。

何しろ相手は飛行体。

一度か二度、ないしは三度が精々だろう。


 アリスとハッピーはダンタルニャンの依頼で木曽に来ていた。

王妃側の作戦を助ける為だ。

勿論、公然とではない。

陰共、それも自然な形での援護。

騒ぎになる前に鎮める。

今回の場合だと、ミカワオロチを事前に追い払うのが正解。

妖精とスライムには難しい依頼であった。


『面白くないわね』アリスが愚痴る。

『ピー、つまんない』ハッピーが応じた。

『決めちゃおうか』

『プー、僕に任せてよ』


 両エビスに搭載されている動力源は二つ。

討伐したキングワイバーンとクイーンワイバーンの魔卵を元に、

錬金で精製し、仕上げた魔水晶。

一つはキングワイバーン魔水晶。

もう一つはクイーンワイバーン魔水晶。

相性の良いキングとクイーンを搭載しているので、滑らかに動く。

しかも風魔法への適性があり、魔力も絶大。

最高の逸品。


 ハッピーはエビス一号を急降下させた。

更に速度を上げた。

片翼に魔力を纏わせた。

それでもってミカワオロチの鎌首に斬り付けた。

手応えあり。

外皮を切り裂いた。

迸る鮮血。

大きく旋回し、口を開けて二つの銃口より風魔法を叩き込む。

初級のウィンドカッター。

 狙った箇所は傷口。

そこへ二発のウインドカッターが喰い込む。

初級ではあるが、元々の下地である魔力が違う。

キングとクイーンの物。

鎌首を綺麗に斬り落とした。


 宙を舞い落ちる鎌首。

そこへ急降下するのは待機していたエビスゼロ。

『任せて』アリス。

 落ちる先で待ち構えた。

コクピットの窓を開けて鎌首に手を伸ばした。

触れて亜空間収納庫に取り込む。


 残されたのは蜷局、胴体と尻尾。

鎌首より上を失っても、頑なまでに形状を維持していた。

そこへエビス一号が急降下。

これまたコクピットの窓を開け、手を伸ばして触れ、

亜空間収納庫に取り込んだ。

『ベー、これで良いよね』

『任務完了、離脱するわよ』

 二人は機体を急上昇させた。

雲の合間に姿を隠した。

『上手くいったわね』

『ポー、ニャンが褒めてくれるね』

『でも、これで終わりじゃないのよ』

『パー、どうして』

『この仕事、二月はかかるみたい』

『ピー、まだやるの』

『そうみたいね』

『ベー、次は強い奴をお願い』


 下で一部始終を目撃していた者達は言葉を失っていた。

そんな中で最初に口を開いたのはレオン織田伯爵。

「直ちに警戒態勢を取れ、警戒態勢を取れ」

 家臣達のみでなく陰共の者達をも指揮下に置き、

次の魔物の襲撃に備えた。

皆の動きを見ながら、サイラス羽柴男爵に命じた。

「ゴーレムを呼び集め、補修を行え」

 ゴーレムは動きはするが生き物ではない。

土魔法で造り出した物。

壊れた箇所を補修すれば入院の必要はない。

幸いロックゴーレム。

サイラスと管理者五名で対処可能。


 レオンの傍にイライザがチョンボを伴って現れた。

木曽代官の副官と、彼女がテイムしているダッチョウ。

そのイライザが申し訳なさそうに頭を下げた。

「こちらの不手際でした」

「気にするな。

ミカワオロチがここまで出張るとは誰も考えない」

「そうは申されますが・・・」

 チョンボは空気を読まない。

片翼でイライザの頭を撫でた。

「それよりも問題はあのコールビーだ。

なんだあの強さ。

そして飛行速度。

しかも収納庫持ちときた。

初めて見たぞ」

「私もです」

「あれはこの大樹海に生息するのか」

「これまで報告は一件もありません。

このチョンボも初めて見たそうです」

 レオンは鼻筋をなぞり、考えた。

「つまり群れではなく、・・・特殊個体、それが二つ。

・・・。

遭遇例がない。

・・・。

今回は敵に回らなかったが、次回は・・・」

「如何します。

中止しますか」

「そうは参らん。

約定は約定だ。

次回よりは軍事用ゴーレムのみを移動させる。

行軍速度も上げる」

「土木工事用ゴーレムは」

「供のサイラスを現地に駐在させ、造らせる。

あれであれば必要な数を熟せるはずだ」



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