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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
244/373

(大乱)46

 七頭のヒヒラカーンに対して五体のロックゴーレムと槍兵十名。

ゴーレム一体に槍兵二名が付く。

数からして当然、二頭が余る。

その二頭が抜けて来た。

円陣を襲おうとした。

 レオンがサイラスに指示した。

「お前は右だ」

 それだけで事足りた。


 レオンは土魔法の使い手。

直ちに起動した。

まずは土玉。

それを五発、ヒヒラカーンに放った。

玉は大きいが速度は緩い。

 ヒヒラカーンはブレスで迎え撃つ。

人の魔法をブレスで相殺した。

 レオンもそれは承知。

土弾は目眩まし、本命は別。

ヒヒラカーンの注意を引いて、その隙に奴の足下に深い穴をあけた。

落とし穴。


 穴に下半身を落したヒヒラカーン。

思わず知らず、驚きとも悲鳴とも言える声を上げた。

「キャイーン」

 何とかして抜け出そうとした。

 

 レオンの部下達は慣れたもの。

指示はなくとも行動に移った。

五名が穴に落ちたヒヒラカーンに短槍を投擲した。

陣に近いので外す事は有り得ない。

五本の短槍が次々に突き刺さった。

うちの二本が顔面に命中した。

一本が喉を貫いた。

噴き出す鮮血、掠れる悲鳴。


 サイラスも負けてはいない。

彼も土魔法の使い手。

直ちに起動した。

こちらは土弾。

小さくて硬い弾、二十発を散弾にして放った。

ヒヒラカーンが避けることを想定し、放射状にした。

しかも用意周到な事に次弾を待機させた。


 狙われたヒヒラカーンは危機感を持った。

目の前の第一弾はブレスで相殺できても、次弾は対処しきれない。

ならば、後方へ退いて避けよう、とした、が。

それを読んでいたかのように弓兵五名が行動した。

追撃の矢雨。

ヒヒラカーンは着地したところを狙われ、全身に矢を受けた。

弱ったところに容赦のない次弾、上書きする様に被弾した。

悲鳴を上げて、暴れ狂う様に崩れ落ちる。


 レオンとサイラスは二頭の息の根を止めるや、前方に注視した。

ゴーレム五体と槍兵十名がヒヒラカーン五頭を相手取っていた。

そちらも問題はないようだ。

こちらに優勢に展開していた。

土木工事用ゴーレムがヒヒラカーンを正面で受け止め、

槍兵が側面から削っていた。


 こちらに負傷者は出たが、死者はいない。

百点満点だ。

負傷者にHPポーションを飲ませ、

レオンとサイラスはMPポーションを飲んだ。

それを見計らい、頃良しと判断したのか、

陰共していた代官の手の者が現れた。

代表するかの様に一名。

 何とも形容し難い。

奴は、2メートル程の鳥種の魔物に騎乗していた。

獣人の女兵士で、愛想の良い顔でこちらに手を振り、

危害を加えぬと意思を表明していた。

 

 手前で鳥から飛び下りると、素早く駆け寄り、レオンに敬礼した。

「伯爵様、加勢出来ずに申し訳御座いません」

「気にするな。

大した相手ではなかった」

 レオンは女兵士の徽章を見た。

各領地に共通の徽章で、少尉。

その少尉が正直に口にした。

「ヒヒラカーンですよ、それが大した事ないと」

「そうだ、こちらにはゴーレムがいる、であろう。

それよりもだ、私の顔を知っているのか」

 そこが問題だ。

伯爵自ら訪れるとは連絡していない。

どこから漏れた。


 女少尉が至極当然に言う。

「私は国都の生まれです。

伯爵様は何かと話題になってらっしゃいました。

その折に街中でお見かけしました」

 分かり易い。

嘘だ。

尾張の家臣から非公式な連絡があったのだろう。

飲み込むのが大人。

「そうか、そうだったのか。

・・・。

礼を申す。

大勢での陰共、痛み入る。

代官にもそう告げてくれ。

・・・。

ところでお主の名前は」


 少尉が改めて姿勢を正した。

「代官の副官を努めているイライザと申します」

 代官の副官が獣人、しかも、うら若い女人。

代官の兄は知っていた。

ポール細川子爵。

亡き国王の最側近で今は王妃の最側近。

しかも王妃の遠縁にして、宮廷貴族の頭目の一人。

徒疎かにしてよい相手ではない。

「イライザか、その鳥は」

「種としてはダッチョウです」

「やはりダッチョウか、名は知っていたが、見るのは初めてだ」

「人目を避ける魔物だそうです」

「そうか、それを使役しているということはテイムしたのだな」

「はい、縁あってテイムしてしまいました」

「不服そうに聞こえるが」

「気分屋なのです。

色々要求して私を困らせるのです」

 途端、ダッチョウの一方の羽根が動いた。

イライザを弾き飛ばした。


 地面を二三回転させられるイライザ。

慣れているのだろう。

回転の勢いを活かし、スッと立ち上がった。

ダッチョウを一睨みし、レオンに敬礼した。

「御見苦しいところをお見せしました」

「怪我していないか」

「何時もの事で慣れています」

 レオンはダッチョウに目を転じた。 

ダッチョウは我関せずとばかり、そっぽを向いていた。

思わずイライザに言った。

「我儘な奴をテイムしたのだな。

野に戻したらどうだ」

「説得したのですが、拒否されました」

「拒否か、好かれているのだな。

喜んで良いのか、嘆くべきか・・・」

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