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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
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(大乱)39

 文官らしき人物が現れた。

こちらを確認するや、近付いて来た。

警備していた者達が何も問わずに道を開けた。

その人物が俺に軽く目礼し、王妃様の傍で足を止めて耳打ちした。

聞いた王妃様の表情が曇った。

思案の末、渋々頷き、俺を見た。

「それでは少年、私は仕事に戻る。

娘を押し付けるようだけど、相手をしてやってね」

 王妃様が立ち上がり、踵を返した。

文官らしき人物を供にし、颯爽と歩を進めた。

散開して警備していた女性騎士達が押し包むように隊列を組む。

波が引くように一団が遠ざかって行く。

 残された俺とカトリーヌ明石少佐は立ち上がって、それを見送った。

その時点で俺は、ようやく自分の従者に気付いた。

スチュワートが背後で固まっていた。

「大丈夫か」

「ええ、なんとか」


 普通、従者は控室で待機するもの。

王妃様との場に立ち会わされる事はない。

「ベティ様は何度か屋敷に来られた。

その時に会っているだろう」

「そうなんですが、今もって慣れません」

「そうか」

「そうです。

あの方はまるで女神様です。

慣れる方がおかしいのです」顔が赤い。

 聞いていたカトリーヌが苦笑いした。

「はっはっは、その通りだ。

女性騎士の中にも陰で女神さまと言う者がいる。

今もって緊張するそうだ。

それと同じだな」


 カトリーヌの案内に従い、後宮に隣接した庭園に入った。

幼い笑い声が聞こえて来た。

「キャッキャッキャ」

イヴ様だ。

そちらへ向かう。

 女性の集団が見えた。

シンシア、ルース、モニカ、ボニーの成人女性が外側の警備。

侍女三人が内側。

見守られているのは四人と一人。

キャロル、マーリン、モニカ、シェリル、そしてイヴ様。

五人で花畑の一角を耕し、花の種を蒔いていた。


 王女様がやる遊びか・・・、と疑問に思う。

俺の顔色を読んだのだろう。

カトリーヌが言う。

「今はこれに凝られておられる」

「土で汚れますけど」

「それも喜んでらっしゃるわ」

「洗濯が大変でしょう」

「知らない人はそう思うでしょうね。

ところがそうでもないの。

どういう訳か、イヴ様に土魔法が発現したの。

その土魔法で泥汚れを落されてるわ。

乾燥させてからパタパタ叩いてね。

それは見事なものよ」


 俺はイヴ様を鑑定した。

ここでも慎重に、魔力を足の裏から地中を通し、

誰にも気付かれぬように行った。


「名前、イヴ足利。

種別、人間。

年齢、四才。

性別、雌。

住所、足利国山城地方国都住人。

職業、なし。

ランク、F。

HP、25。

MP、45。

スキル、土魔法☆」


 俺はカトリーヌに尋ねた。

「このような小さな子供でも魔法が発現するものですか」

「人によるわね。

でも心配は無用よ。

暴走せぬように側仕えの侍女達が見守っているから。

それに、鑑定できる者や治癒魔法が使える者が後宮にいるわ。

毎日、朝昼夕に鑑定と治癒。

それはもう大事にされているわ」


 俺とカトリーヌの声が聞こえたのだろう。

「あっ、ニャ~ンだ」

 イヴ様が叫ばれた。

目敏く見つけられると、勢いよく走って来られた。

小さな両手を前に出し、小走りで、転ぶ事無く、俺の前へ。

 お約束・・・。

俺は腰を落として片膝ついた。

そこへイヴ様が躊躇いなく飛び込んで来られた。

俺は身体強化し、優しくキャッチ。

持ち上げながらイヴ様を宙で半回転させて肩車。

「ヒャッハッハ」足をバタバタさせて、悲鳴に近い笑い声。

 

 イヴ様は肩車に満足されると、俺に言われた。

「ニャン、一緒に種蒔きしよう」

 暫く見ぬ間に言葉も明瞭になっていた。

断る選択肢はない。

王女様の土魔法は是非とも見てみたい。


 何やら小さな声で唱えられた。

聞いて驚いた。

「柔らかくな~れ、柔らかくな~れ」

 なんだ、それ。

魔法の詠唱ではない。

呪文とも違う。

でも結果は出た。

小さく狭い範囲を耕され、畝が作られた。

 俺は呆れながらも、鑑定と探知を連携させて状況を調べた。

畝にイヴ様の魔力の残滓を見つけた。

つまり、魔法が行使されていたという事になる。


 イヴ様は畝を作り終えられるとキャロルから種を受け取り、

その半分を俺に手渡された。

「蒔くわよ」

 一緒に蒔いた。

蒔いた種にイヴ様は土を被された。

「大きくな~れ、大きくな~れ」


 イヴ様の魔力は土に効果があった。

小さな畑そのものが活性化した。

周りの土とは明らかに違っていた。

俺は警備中のシンシアを声をかけた。

「シンシア、水魔法で魔水を出せるかい」

「できるけど」

「このイヴ様の畑に魔水を撒いて欲しいんだ。

薄く広く、朝露のような霧状に」

「お安い御用だ」


 シンシアが歩み寄って来て、イヴ様の畑を確認した。

「この一角で良いのね」

「ああ、お願い」

 シンシアは片手を畑に翳し、無詠唱で水魔法を発動した。

たちどころに霧が出た。

俺は鑑定で詳細に畑を観察した。

イヴ様の畝と他の子供達の畝の違いが明確になった。

活性化した土が種に干渉を始めていた。

 俺はこの力は秘匿しているので、説明は難しい。

そこでカトリーヌに声をかけた。

「畑の中の具合を見たい。

近くに鑑定のできる人はいないかな」

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