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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
232/373

(大乱)35

 俺達は見送りのイライザと別れた。

このまま街道を進めば国都に至る。

迷うことはない。

道々の土産物を見繕いながら、旅の終盤を楽しんだ。

 あっ、魔物を捉えた。

探知と鑑定の連携でゴブリンの群れ十八匹と分かった。

こちらに急いでいた。

美味しい獲物と判断したのだろう。


 箱馬車三輌と警護十騎。

先頭は騎馬五騎。

一輌目は俺とコリン、スチュアートの三名。

二輌目は俺付メイドのドリスとジューン。

三輌目には国都の皆への土産物。

そして後尾に騎馬五騎兵。

 純粋な戦力は騎馬十騎。

俺は馬車を止めさせた。

「ゴブリン十八匹が接近中。

馬車を盾にして迎え撃つ」

 他にも行き交う者達がいた。

旅人や土地の農民達だ。

俺は彼等を集めた。

「馬車の陰に隠れていろ。

俺達がゴブリンを討伐する」


 俺はコリンとスチュワートにメイド二人の護衛を指示すると、

風魔法で馬車の屋根に飛び乗った。

肩掛けバック経由で虚空から武器を取り出した。

通常のM字型の複合弓だ。

矢筒は出さない。

直に虚空から補充する事にした。

 ゴブリンの群れが雑木林から飛び出して来た。

不幸な未来には思い至らないらしい。

能天気なものだ。

歯茎を露わにして、躊躇なく攻撃して来た。

 俺は矢に風魔法を纏わせた。

先頭の三匹に三連射。

続けて三連射。

何れも狙い通り喉を射貫いた。

騎馬十騎に指示した。

「相手は低い。

馬から下りて二人一組で刈り取れ。

馬車は私が責任を持って守る。

安心してそれ行け」


 十騎が下馬した。

二人一組になり、槍を担いでゴブリンの群れに向かった。

対するゴブリンの群れは危機感が欠乏しているのか、

逃げる気配すら見せずに応戦した。

こうなると連携に優れた兵士の敵ではない。

次々屠られて行く。

最後の三匹が逃れようと足掻く。

それを許す兵士達ではない。


 俺は新たな魔物を見つけた。

雑木林の奥にヒヒラカーン二頭がいた。

こちらの様子を窺っているが、襲って来る素振りはない。

ジッと身を潜めていた。

 こいつはブレスを吐くので手強い。

誰にも知らせず、見守る事にした。

黙って去ってくれれば儲けもの。

 暫くすると願い通り立ち去ってくれた。


 討伐を終えた魔物を農民達が解体していた。

ついでに穴を掘り、投げ込む。

枯草や枯れ枝を被せ、着火した。

ゴブリンの遺体を喰いに魔物が寄って来るかもしれない。

あるいは捨ておくとゾンビ等になる懸念もある。

そういう訳でこういう処置をするしかない。


 一人の農民が俺に寄って来た。

「討伐証明の耳や魔卵は私達が貰っても宜しいのですか」

「構わない。

穴掘りと火付けの礼だ」

「お有難うございます」

 ついでなので俺は質問した。

「街道筋周辺の魔物の間引きや、盗賊追討は領兵の仕事だと思うが、

機能していないのか。

現に近くに何頭かの魔物がいる。

賢いようで襲ってはこない」

 農民が不安気に辺りを見回した。

「本当ですかい」

「ああ、ヒヒラカーン三頭が引き返した。

他は安心するが良い、小物だ」


 領兵は斎藤伯爵家の兵ではない。

地方に領地に持つ寄子が資金を出し合って、

立ち上げた治安維持部隊だ。

その仕事は多岐に渡る。

でも主要なのは魔物の間引きと、盗賊の追討。

農民が顔を強張らせた。

言葉を選ぶ。

「昔に比べると巡回が減っているように見受けられます」

「そうか、それでも誰か声を上げる者がいるだろう。

例えば古顔の子爵男爵様とか」

 農民は声を潜めた。

「肝心の伯爵様は国都におられる事が多いのです。

なんでも舞踏会でお忙しいそうです」

「代わりの執事は」

 農民の目色に怒りが現れた。

「その執事様は魔物の間引きを冒険者ギルドに依頼しております。

ところが、領兵の巡回と比べると、回数が減っておりまして・・・」


 領兵を出動させずに冒険者に依頼する・・・。

臭い・・・。

もしかして冒険者ギルドそのものから、

あるいは依頼を受けた冒険者からキックバックを得ているのか。

十分に有り得る。

役目ではないので、ここで質問を打ち切った。

農民に言い聞かせた。

「今の話は他には内緒だ」

 農民も分かっているのか深く頷いた。


 コリンとスチュワートが俺の傍に来た。

「聞いていました。

これは拙い事態ですね」心配顔のコリン。

「ああ、かと言って訴え出るのは、うちが寄親に喧嘩を売るようなもの。

これだけは避けたい。

で、二人はどうしたい」

 色々と話し合い、最後にコリンが纏めた

「木曽に実害が出てからでは遅いので、早速手を打ちましょう。

一番良いのは出所不明の噂を流して、

先代の伯爵様の耳に入るようにすることですね。

・・・。

領兵の巡回を減らした怠慢と、キックバックの噂。

これに尾ひれを付けて流しましょう」

 

 俺はもう一つの疑問を口にした。

「ところで、伯爵が隠居させられた場合、

次の伯爵には誰が繰り上がるのかな」

 スチュワートが応じた。

「前伯爵は子沢山です。

誰が繰り上がるのか、予想が付きません」

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