(大乱)34
年が明けた。
俺は十一才になった。
そこでステータスを確認した。
「名前、ダンタルニャン佐藤。
種別、人間。
年齢、十一才。
性別、雄。
住所、足利国尾張地方戸倉村生まれ、国都在住、美濃地方木曽。
職業、子爵、木曽の領主、冒険者、幼年学校生徒、アリスの名付け親、
ハッピーの名付け親、山城ダンジョンのマスター、
木曽ダンジョンのマスター。
ランク、A。
HP(444)残量、444。
EP(444)残量、444。
スキル、弓士☆☆☆。
ユニークスキル、ダンジョンマスター☆☆☆☆、虚空☆☆☆、
魔女魔法☆☆☆、無双☆☆☆☆☆(ダンジョン内限定)。
加護、神竜の加護」
「光学迷彩☆☆☆☆、探知☆☆☆☆、鑑定☆☆☆☆、水魔法☆☆☆、
火魔法☆☆☆、光魔法☆☆☆、土魔法☆☆☆、風魔法☆☆☆、
闇魔法☆☆☆、錬金魔法☆☆☆、身体強化☆☆☆、透視☆☆☆、
契約魔法☆☆☆、時空☆☆、重力☆☆、氷魔法☆☆、雷魔法☆☆」
いつ見ても凄いな、俺。
でもこれは他人には披露できない。
知られたら、どんな目で見られるか分からない。
嫉妬や羨望なら良い。
厄介なのは親切面をして近付いて来る輩だ。
俺を利用しようとするのが目に見える。
面倒臭い。
隠忍自重、隠忍自重。
何事もぐっと堪えて、家臣達に委ねよう。
俺はそれ以上考えるのを止めた。
領都で新年の行事を済ませた。
そうなると次は国都の屋敷だ。
学校も新年度が開始されるので戻る事にした。
来た時の人員が一人も欠ける事無く、帰途に就いた。
箱馬車三輌と警護十騎。
先頭は騎馬五騎。
一輌目は俺とコリン、スチュアートの三名。
二輌目は俺付メイドのドリスとジューン。
三輌目には木曽の土産物。
そして後尾に騎馬五騎兵。
土産物で箱馬車が増えた代わりという訳ではないが、
アリスとハッピーが欠けた。
欠けたが、表の人員には入れていないので問題はない。
二人は木曽のダンジョン開発で忙しいので、暫くは帰れないそうだ。
そう聞かされると仕事中毒にも思えるが、実態は決してそうではない。
ただ単に趣味に走っているだけ。
新規のダンジョンが出現すると同時に、
ダンジョン内にダンジョンスライムもセットになって現れる。
そしてダンジョンの開発から保守等に携わる。
そういう役目のスライムがいるのだから委ねれば良いものを、
二人は上から目線で指示を出すと言う。
・・・何様だっ、とは俺は言わない。
言えば言ったでアリスとハッピーが激しく反論してくる。
面倒臭い。
そう言えば俺、最近面倒臭いと思う事が増えた。
これが大人への階段を上がるという事なのだろうか。
途中までイライザがチョンボに乗って見送ってくれた。
「グエッ、グエッ」
「もっとしっかり走りなさいよ」
「グェティー、グェティー」
「文句は言わない。
足でしっかり仕事をしなさい。
アンタは走るしかないんだから」
「グワー、グワイエ」
聞いていると喧嘩してるようだが、実際はそうではない。
チョンボは怒ってもイライザを振り落とそうとはしない。
イライザも怒ってチョンボに鞭は使わない。
俺は休憩時にイライザに話しかけた。
「随分と仲が良いね」
「そうかな、こいつ我儘だから困ってるのよ」
「はっはっ、そうは見えない。
そうそう、空は飛べるようになった」
途端、チョンボが羽根を大きく広げた。
「グワッ、グワッ、グエイ」
飛べると言ってるようだ。
イライザが嘲笑う。
「もっと上手く飛べるようになってよね。
その前にアンタが鞍に慣れてくれないとね」
「鳥に鞍か、難しそうだね」
「短時間なら鞍なしでも良いけど、長時間になると私が困るの。
後半には何度か落ちそうになったわ」
「グゲ、グゲ」抗議しているようだ。
俺は肩掛けバッグ経由で虚空から三つの指輪を取り出した。
「イライザとカールと、新たに家族になったチョンボに贈り物」
イライザの顔が緩んだ。
認めたも同然。
「カールとそうなったんだろう」
「まっ、まあね」真っ赤な顔。
「国都にいる二人の家には報告したかい」
「まだよ。
忙しくて報告に戻れないの」
俺のせいだ。
カールが代官職にあるので、帰省する暇がないのだろう。
「ゴメン、俺のせいで忙しいんだろう」
イライザが両手で俺を制する仕草。
「いいのよ。
カールも喜んでいるわ。
木曽の土台作りは大変だけど、仕事自体は楽しんでいるわ。
私も大感謝よ。
一から造るって大変だけど、やり甲斐があるの。
それを任せて貰っているんだもの、もう大感謝しかないわ」
正面から感謝されると照れる。
どんな顔をしていいのか分からない。
困った。
俺は指輪の説明に逃げた。
「どれも国都の露天で仕入れた物なんだけど、しっかりした物だよ。
きちんとした術式が施されていて、自分で言うのもあれだけど値打ち物。」
本当は俺が錬金した逸品。
自動的に使用者の指サイズに合わせる【自動サイズ調整】。
自動的に修復する【自動修復】。
自動的に周辺の魔素を吸収し、魔力に変換する【魔力自動供給】。
そして所有者を登録する【所有者登録】。
チョンボの足の指にも合う仕様にした。
「これは優れものだから誰にも内緒にするんだよ。
例えば、そうそう家族の証とかにすれば良いかもね」
困惑気味のイライザ。
「そんなに良い物を貰っていいの」
「当然だろう。
代官とその家族なんだから。
・・・。
これは自動的にMPを供給する指輪。
これがあればカールの水魔法が途切れる事は無い筈だよ。
チョンボの場合は風魔法だね。
でも人が造った物だから、どこかで限界が来るかも知れない。
だから程々にね」
「私は・・・。
私、魔法スキルを持ってないんだけど」
「イライザの場合は習ってないだけだろう。
ずっと家の手伝いをして、それどころではなかったんだろう」
「まあ、そう言われるとそうかも」
「だからこれを機会に習ってみれば。
MPが自動的に供給されるから、何らかのスキルを得ると思うよ」
イライザの目が輝いた。
その頭をチョンボが片方の羽で叩いた。




