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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
229/373

(大乱)32

 その夜。

上空から念話が来た。

アリスとハッピーが俺を誘った。

『手頃な土地を見つけたわよ』

『パー、見晴らしが良いプー』

 マイホームの分譲地でもなければ、マイ別荘地でもない。

マイダンジョンを設置する場所だ。

二人は木曽に来て、第二のダンジョン設置に意欲的になった。

それで連日、候補地を探し回っていた。

当然、場所は地下になる。

それで見晴らしが良いとは・・・。

 こんな真夜中、俺の寝室を訪れる者はいないだろう。

探知、鑑定、光学迷彩、時空の四連ちゃん。

余裕で起動し、維持できた。

上空に転移した。

二人がそこで待っていた。

『期待しても良いのかい』

『当ったり前でしょう』

『ピー、そだそだ』


 二人の指示する方向へ転移した。

すると前方に、高所から垂らされた白い布の様な物を見つけた。

へえー、でかい。

 急流の先に滝が見えた。

迫力満点の瀑布。

近付くに従い、轟音と、飛び散る雨の様な飛沫が俺を包む。

光学迷彩が濡れないように全て弾いてくれるけど寒い。

これが夏だったら涼しくて気持ちいいのかもしれないが、今は冬。

本当に寒くて、もう最悪。

でも、ここに来れただけで百点満点だ。

『凄く良いよ、素晴らしい。

ここに観光客が呼べるよ』

 問題は魔物だけだ。

カールと冒険者ギルドに丸投げしよう。


『ねえ、ダン。

滝の裏側の岩壁はどうかな』

『プー、裏々』

 二人は俺の返事も待たずに、滝の裏側に飛んで行く。

俺も遅れて付いて行く。

濡れる心配はないので、余裕で岩壁を鑑定した。

 岩壁はこの暴れるような水量に耐えているだけに、超頑丈。

補強する必要がない。

でも俺って心配性だから、念の為に補強するけどねっ。

この十倍の水量にも耐えられるように。


『岩壁の補強は終わったよ』

『ならダンジョンを造りましょう』

『ペー、造る造る』

『地下じゃなく、岩壁にかい』

『当然じゃないの。

ベランダ付きがご希望よ』

『ポー、ポッポー』


 俺はダンジョンマスタースキルを始動した。

これで二度目だが、慣れない。

「EPをMPに変換します」脳内モニター。

 EPがごっそり変換された。

途端、周りの景色が歪む。

二度目だからか、戸惑いはない。


 俺達は滝の上、空中の高所に場所を移していた。

前回同様、ガラスの箱のような結界の中にいた。

体育館を思わせるような大きさだ。

しかも空調設備でもあるかのように、微かな空気の流れを感じた。

床下に魔物の群れを見つけたが、奴等は俺達には気付かない。

滝の息吹も感じ取れない。

まるでモニター越しに見ているかのようだ。

飛来する鳥の群がガラスには衝突せず、

何もなかったかのように結界をスキップして飛び去って行く。

『パー、パッパラパー』

 ハッピーは大喜び。


 どうすれば思った箇所にダンジョンの中核部を置けるのか知らないが、

その思い描くイメージを、強く強く脳裏で念じた。

滝の裏側の岩壁、その中にマイダンジョン、ベランダ付き。


 スイっと降下を始めた。

しかし、今回は地下までは下りない。

滝の裏側で停止した。

狙い通りに岩壁の中だ。

成功した。

 結界の中心部で発せられる小さな輝き。

二度目なので驚きはない。

輝きが上下左右斜めに、アンバランスに回転しながら成長を始めた。

ピンポン球の大きさからテニスボール、ソフトボール、バレーボール、

まだまだ大きくなって行く。

そして、ついには直径3メートルほどに。

透明な水晶。

ダンジョンコアだ。

『前よりも大きわ』アリスは手放しの喜び。

『ピー、立派立派』ハッピーは床をポンポン跳ね回った。

『力も大きいんだろうな』


 ダンジョンコアの回転は一向に止まらない。

目まぐるしいまでの色彩を帯び始めた。

回転しながら下半分を床に沈ませた。

それは最終的には床に組み込まれた。

 コアの色は鮮紅色。

前回と変わらない。

『鮮やかな色よね』

『プー、好き好き』


 結界そのものが身動きを始めた。

結界が微かに振動した。

岩壁に同化し、否、岩壁の中に大きな部屋を形作って行く。

 体育館サイズのダンジョンコアルームが出来上がるのに、

さほどの時間は要さない。

最終的にはダンジョンコアが5メートルほどの大きさの台座に鎮座して、

せり上がってきた。

『ダンジョンの名前が必要だわ』アリス。

『ペー、ハッピーダンジョン』

 アリスがハッピーにパンチ。

『却下』

『ポー、横暴横暴』

 俺は覚え易い名前にした。

『木曽ダンジョン』

 アリスは肩を竦めた。

『センスはからっきし駄目ね。

いいわ、それよりダンジョンマスターの次席は私よ、忘れないで』


 ダンジョンコアに掌を当てた。

前回通りにした。

微かな痛みが掌から腕、肩、首、そして頭に走った。

疑似感電。

「接続しました」脳内モニター。

 情報が頭に流れ込んで来た。

産まれたばかりなのに、この情報量。

これを俺が処理するのか。

面倒臭い。

ここもまたアリスに丸投げしよう。

本人もやる気満々みたいだし。

名付けと次席を任命した。


「名前、木曽ダンジョン。

種別、ダンジョンコア。

マスター、ダンタルニャン。次席、眷属妖精アリス。

年齢、一才。

住所、美濃国木曽地方。

ランク、B。

HP(333)残量、111。

MP(333)残量、111」


 脳内モニターに新たな文字が現れた。

「ユニークスキルがレベルアップしました。

ダンジョンマスター☆☆☆☆」

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