(大乱)26
ダッチョウは俺達とバックアップチームの存在に気付いた。
慌てて足の回転を止めた。
コテンとこけた。
制動力が上滑りしたかのような、こけ方。
無様過ぎた。
「グッチョー」
二転三転。
不格好ながら立ち上がると、両の羽根をパサパサ、埃を払った。
何事もなかったかのような顔で俺達とバックアップチームを見た。
理由は分からないが、どうやら見比べているらしい。
そして結論を出したのか、俺達の方へ回って来た。
殺意は微塵も感じられない。
無自覚に、俺達の後ろに回り込んで、隠れるように足を折り曲げた。
俺はダッチョウに気を取られていたが、大事な事を見落としていた。
何故、こいつが逃げて来たのか。
慌てて大樹海を探知した。
見つけた。
鑑定した。
パルスザウルス。
陸竜の種から枝分かれした魔物。
通常は四つ足で移動する。
武器は脚力と牙、尾。
皮が厚い。
成長すると体長は5メートル。
土魔法、アースボールが得意。
面倒臭い奴に目を付けられたものだ。
何をしたか知らないが、それから逃げて来て、
よりにもよって俺達にそいつを擦り付けるとは・・・。
この糞ダッチョウ、やってくれたな。
対策を練るより早く、奴が姿を現した。
大樹海から駆け出て来ると、全体を見回した。
直ぐにダッチョウを見つけた。
視線を固定した。
熱いには熱いのだろうが、相当な怒り込みの視線だと思う。
どんな怒らせ方をすれば、こうも鋭く睨まれるのか想像が付かない。
怒らせ上手な糞ダッチョウ君、余所へ行ってくれないかな。
あっ、キョロキョロするばかり。
次の逃げ方でも考えているのか。
俺達を囮にして、どうやって逃げようかと・・・。
パルスザウルスは俺達をダッチョウの同類と看做している気配。
ブレス態勢、大きく口を開けた。
俺は皆に指示した。
「ブレスの射線から逃げろ」
土玉・アースボールが散弾のように複数、放たれた。
それでも間に合った。
間一髪で避けられた。
パルスザウルスの視線が俺達を追って来た。
変だと思った俺は後ろを振り向いた。
ダッチョウも付いて来ていた。
この野郎っ。
ここまで図々しい魔物は初めてだ。
他の皆も気付いた。
互いに視線で遣り取りした。
ばらける、決定。
各自、思い思いの方向へ逃げた。
最終的な合流先はバックアップチーム。
言葉はなくとも意思疎通に怠りなし。
とっ、嫌な気配。
パルスザウルスの視線が俺の方へ。
もしかして・・・。
逃げながら振り返るとダッチョウが俺に付いて来ていた。
あっ、ダッチョウにもてる俺・・・。
身体強化して振り切ろうとした、が、駄目だった。
執拗に付いて来る。
人間、諦めが肝心。
俺は足を止めた。
M字型の複合弓を構えた。
奴のブレスに合わせて開けた口の中に三連射だ。
そう考えていたが、奴は違った。
まっしぐらに突っ込んで来た。
俺ごとダッチョウを弾き飛ばすつもりらしい。
激しい地響き。
トラックに換算すると・・・。
答えが出る前に奴が最接近した。
俺は身体強化したまま、左に飛び退った。
風の動きでダッチョウも俺を真似たのが分かった。
これだと奴の第二撃が・・・。
考えろ考えろ、俺。




