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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
219/373

(大乱)22

     ☆


 国王陛下の国葬が各地から駆け付けて来た貴族諸侯、

そして国都の平民多数に見送られ、滞りなく行われた。

式次第は三日間通して王家の威風を遍く示し、

権力のありどころを目に見える形で顕示した。

王妃様の思惑通りと言っても過言ではない。

 俺も在都貴族なので列席した。

お子様にして無職、そんな訳で席順は末席に近かった。

棺桶の中の陛下のご尊顔を配し奉る立場でもなかった。

王妃様の姿が見えない席だったけど、まあ、文句はない。


 暇だったけど退屈ではなかった。

俺の周りの貴族達がよく喋る、喋る。

近くに上級貴族の姿がないので油断したのだろう。

遠慮会釈のない会話がだだ漏れ。

出世した貴族への妬みから始まり、話は自然、西方の情勢に傾いた。

「島津伯爵軍が善戦しているそうだ。

討伐軍を領外へ押し返しているらしい」

「尼子伯爵軍も討伐軍を領境から一歩も入れぬらしいな。

王家の軍は弱くなったのか」


 巷でもそんな噂を聞いた。

王家にとっては芳しくない話に聞こえるが、真相は違う。

王家は選別した上で、都合の悪い貴族等を西方へ送っているので、

彼等が磨り潰されるのは、却って好都合。

島津や尼子に感謝したいくらいだろう。


 退出する際に驚く光景を目にした。

『プリン・プリン』パーティメンバーが王家の列にいた。

平民三名が葬儀に相応しい衣服を身に纏っていた。

周囲の王族一門衆と並んでも全く見劣りしない。

あれは実家が商家だからと言って用意できるものではない。

王妃様自らの口利きによるものだろう。

 女児四人の輪の中にイヴ様の空間。

その空間をパーティメンバー八名が囲んで移動していた。

シンシアが俺の視線に気付いた。

軽く微笑み、片手を上げて挨拶してきた。

流石、大人。


 幼年学校の一年次を終えて進級した。

このレベルでの脱落者がいる訳がない。

というのに、淡々とは進級しない。

国都の平民は一味違った。

商家の子が中心になって進級お祝いパーティを企画した。

下町の心意気というのだろうか。

子供のくせに衒いがない。

 学校近くの料理屋を借り切った。

酒がないだけ、ふんだんな料理と飲み物が並べられた。

集めた会費では足りるのか。

どうするんだ、会費の追加か。

そう思っていたら幹事が俺の方へ来た。

顔色が悪い。

「子爵様」小声で泣きついて来た。

 小さな子供に頼られた。

俺と変わらないけど。

「分かってる。

計算を間違えたんだろう」

「違うよ。

女の子達の追加注文だよ」

「断れなかったのか」

「大勢に囲まれたんだよ」

「分かった、任せろよ」貴族の矜持。


 近くで聞いていたキャロルが俺を手招きした。

「男の子って甘いんだよね」

「仕方ないよ。

口では敵わないんだから」

「ふっふ、ところで子爵様、冬休みはどうするの」

「まだ領地に行ったことがないから、そっちだね」

 同じテーブルのマーリンにも尋ねられた。

「木曽の大樹海だったっけ」

「そうだよ、来るかい」

「イヴ様の予定が入って私達も忙しいのよ」

 モニカも言う。

「ニャ~ンは来ないのって」

「後宮は入れないよ」

「だよね、後宮だものね」

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