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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
218/373

(大乱)21

 ウィル太田伯爵がアンドリュー熊谷伯爵に尋ねた。

「それで我等は予定通りでいいのかな」

「ええ、変更はありません。

予想では王家が軍を動かせるのは国葬を終えてから。

しかし春まで北陸道は雪で難所が多くなります。

これまでの経験からすると、

本格的な軍事行動は雪解けを待ってからになります。

もっとも、西国へ向けた討伐軍との兼ね合いもあり、

来るかどうか甚だしく不透明です。

まあ、それはそれとして、我等はこの地の足場を固めます。

感触が悪くて今回誘えなかった地方を占領します。

まず西を。

甲斐、駿河、遠江、三河、伊豆を平らげて頂きたい」


 ウィルが確認した。

「侵攻路も当初通りで良いのかな」

「ええ、甲斐に入って頂き、駿河、遠江、三河、そして最後に伊豆。

五地方の寄親伯爵家の家族を無傷で捕らえ、

その地に駐屯している国軍へ引き渡して頂きます」

 それら五つの地方の、伯爵の動向は把握済み。

彼等は今頃、中山道を馬車道中のはず。

木曽大樹海の魔物さえ刺激せねば国葬には参列できるだろう。

「駐屯地の国軍との調整は」

「承諾は得てあります。

味方はできないけど預かってくれるそうです」

「その連中が裏切らないと」

「大丈夫、篭絡済みです。

消極的に協力してくれるそうです」

 国軍は本来、国軍総司令部の指揮下にあるが、

末端になると少し事情が違う。

人事に地方貴族が介入して来るのだ。

入隊した子弟を昇進させようと、地縁血縁に袖の下を絡める。

ウィルは肩を竦め、両手を小さく広げた。

「君は簡単に言うけど、連中の誰かが裏切らないという保証は。

駐屯地は五つ、その中の誰かが」

 アンドリューは最後まで言わせない。

彼の指揮下の関東軍は五地方の駐屯地とは交流があり、

それぞれの指揮官の為人は解していた。

「質をとっても裏切る奴は裏切る。

そんな事を気にしていては白髪が増えますよ。

裏切りがあっても皆さんなら乗り切ってくださると信じています」


 それまで黙っていたイドリス北条伯爵がアンドリューに尋ねた。

「五地方の内応者に関してだが、そちらも裏切る可能性は」

「ゼロとは申しません。

しかし、あの連中、今さら裏切りますか。

負債を抱えて、にっちもさっちも行かない筈です。

しかも借りた相手が悪かった。

国都の闇金業者です。

期日までに返済しないと大変な事になります。

あの連中は貴族が相手でも容赦なしですからね。

何人の貴族当主が被害に遭ったことか」

「あの連中か、噂は聞いた事がある」

「もしかして、借りてはいませんよね」

「ないない。

噂ではスラムの賭場絡みだよな」

「そうです。

鼻の下を伸ばしてスラムの娼館に通う内に、

賭場にも入り浸りになったというありふれた話です」

「結局、いかさま賭博に引っ掛かったという訳か。

確かによく聞く話だ」


 アンセル千葉伯爵が問う。

「下野、常陸、上総、安房の四地方は」

「殊更急ぐ必要はありません。

我らが西の五地方を押さえたと知れば、自然とこちらに靡きます。

・・・。

それでは方々、宜しくお願いします。

万一の際は急報して下さい。

関東軍を差し向けます」


     ☆

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