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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
216/373

(大乱)19

     ☆


 関東以北は畿内から遠いので特殊な政治状況にあった。

万一の際、畿内から大軍を送り込むことが難しいからだ。

東海道は三河大湿原により分断。

中山道は木曽大樹海の魔物により大軍の通過は不可能。

結局、近江から越前、加賀、越中、越後へ抜ける北陸道しかなかった。

その為に関東、東北、北海道の三か所に代官所が設けられ、

王家の代理として大きな権限を持っていた。


 十月初頭、王家から国王陛下の崩御が発表された。

事前に容態が悪化の一途を辿っていると知らされていたので、

それほどの衝撃ではなかった。

ついにこの日が来たのか、皆そう思った。

 同時に国葬日時も発表された。

遠方からの参列に考慮して十二月十二日。

有力貴族は葬儀に参列する為、余裕を持って国都へ向かった。

葬儀は故人を送るだけではない。

社交の場でもある。

血縁地縁の者とより誼を深め、疎遠な者と積極的に交わる。

皆がそんな思惑で動いた。


 だが動きの鈍い者がいた。

関東代官所の代官・トム上杉侯爵。

もう一人は武蔵地方の寄親・ウィル太田伯爵。

 関東代官所は武蔵地方の江戸。

武蔵地方の領都は川越。

互いの距離が近いだけではなかった。

より近しい血縁にあった。

 上杉侯爵家は断続的に王家の王子を養子として、

あるいは婿養子として受け入れる役割が課されていた。

そして弾かれた上杉侯爵家の嫡男はこれまた太田伯爵家が、

養子ないしは婿養子として入れるのを慣例にしていた。

これは遠隔地の支配を盤石にする施策の一つ。

東北代官所も北海道代官所も同様であった。

 この施策下にある各家の立ち位置は微妙なもの。

まず貴族としての格付け。

侯爵家は公爵格。

伯爵家は侯爵格。

王家の血が断続的ではあるが色濃く流れているは確かなので、

王族に準じて扱われた。

格別の御家とも遇された。


 江戸の関東代官所を武蔵の寄親・ウィル太田伯爵が訪れた。

近距離なので供廻りは少ない。

伯爵の馬車と護衛の騎兵が十騎。

事前に通告がなされていたので執事が直ぐに伯爵を案内した。

トム上杉侯爵は執務していたので、入室に気付いても顔は上げない。

何時もの事なのでウィルも気にしない。

同じく両者の執事も近習もいつもの事なので気にしない。

 代官の仕事は関東全域の司法立法行政。

多様な書類が代官所に届けられ、それらは窓口で振り分けられる。

代官が目を通す必要がある書類、署名する必要がある書類。

厳選された結果が室内にある。

四名の秘書がより厳選して仕分けても、これ。

代官の執務机は書類で溢れていた。


 ウィルは勝手にソファーに腰を下ろした。

すると見計ったかのように続き部屋からメイドが現れて、

淹れ立てのコーヒーを差し出した。

「いつもいつも気が利くね。

俺の嫁に来ない」

 メイドも慣れたもの。

「はて、閨は何番目でしょう」

「ん~、何番目かな」

「お代わりの際はお声をかけてくださいね」

「はい、は~い」

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