(大乱)18
俺はサンチョが教えてくれた場所に赴いた。
同じ東区画スラムの中だが、サンチョのアジトからは少し離れていた。
目の前の古びた二階建て家屋がそれ。
窓という窓に真新しい修理跡。
俺は隣の建物の陰に隠れて様子を窺った。
時刻柄か、場所柄か、どちらかは知らないが、行き交う者が少ない。
お陰で不審がる者もいない。
探知と鑑定を連携させて、じっくり内部を調べた。
一階に五名、二階に六名。
冒険者ではなかった。
スラムの悪党でもなかった。
指名手配もされていない。
全員が関東の武蔵地方の寄親・太田伯爵家に所属していた。
寄親の伯爵家となると国都に屋敷を構えていた。
どこの区画に屋敷を構えているのか知らないが、
その家臣が複数、スラムに居住していた、有り得ない。
おかしい。
何があった、太田伯爵家。
公的活動は屋敷で行い、こちらでは裏活動の拠点なのか。
それなら理解できる。
アリスが俺の鼻先を突っつく。
『殴り込んでいい』
『ピー、やるぞ~』
暇人が二人。
拒否、断固拒否。
『駄目だ』
『つまんない、暴れたい』
『プー、プップー』
『ダンジョンは魔物が召喚し放題なんだろう。
とっととオープンして、そこで暴れたらいいだろう』
アリスはダンジョンコアの子コアを妖精の里に設置し、
妖精達をダンジョンで鍛えると言っていた。
その設置も終えた。
ダンジョンも妖精用に魔改造した。
だったら、とっととオープンし、自分も一緒に訓練で汗々すれば、
気も紛れるのに。
『オープンしようと思ったんだけどさ~』
『パー、怒られちゃった』
『里の長老かい』
『そう、老害には困っちゃうよ』
『ペー、ペッペー』
何のかんの言っているけど、長老には頭が上がらないらしい。
可愛いところがあるじゃないか、アリスくん。
どう解決するんだろう。
高みから見物だな。
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