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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
211/373

(大乱)14

 俺は動揺しながらも慌てずに釈明した。

「陛下の怪我の状態については、とても質問しづらく・・・、

差し控えよう、そう判断しました」

 ポール殿の表情が微妙に変化した。

「自分では、それなりに答えを持っている訳だ」

「はい、それなりに・・・」

 ボール殿の右顔は猜疑心、左顔は好奇心。

「聞きたいね」

 俺はそれでも抵抗した。

具体的に口にしていい場合と、しない方がいい場合がある。

今回の正解はしない方だろう。

「勝手な憶測をするより、王宮からの公式発表を待とうと思います」

 ポール殿は苦笑いされた。

「ふっ、まあいい。

ところで街中の噂はどうだね」

「皆の関心は元公爵お二人の動向です。

生きているのか、死んでいるのか」

「二人とも、しぶとく生きてる。

家族を連れて西へ逃れたよ」


 西へか。

逃れた先の予想はつく。

王弟・バーナード今川元公爵は正室の実家を頼り、

島津伯爵家へ落ちのびた。

王兄・カーティス北畠元公爵も正室の実家を頼り、

尼子伯爵家へ落ちのびた。

島津伯爵家は薩摩地方、大隅地方、薩南諸島の寄親。

尼子伯爵家は岩見地方の寄親。

共に西方の九州と山陰の有力者。

両家の地力は侮れない。

畿内より遠く離れているので匿い、知らぬ存ぜぬを押し通すだろう。


 俺はポール殿に尋ねた。

「討伐軍の噂を聞きません。

その辺りは、どうなっているのですか」

「今はそれどころではない。

優先すべき事が沢山ある」

「討伐軍よりもですか」

 ポール殿は当然とばかりに頷かれた。

「このままでは、もっと沢山の血が流れる。

国土も荒れる。

それを収めるのは刀槍ではない。

政治だ。

敵味方双方との駆け引きで治めるのが、もっとも賢いやり方だ」


 現状で国王陛下の死亡を公表すれば、

他の公爵家や王族の血族が黙ってはいない。

元凶が第一位王位継承権者、第二位王位継承権者、その両者なのだ。

それ以下の継承権を持つ者達が我先に手を上げる。

それらの縁戚に繋がる多くの者達もこれ幸いと狂喜乱舞、

王位を巡って暗躍する。

確実に大混乱に陥る。

かくなる事態を回避する為に、敢えて公表を控えているのだろう。

 でも俺は、穿った見方もした。

王妃様は既得権益を優先した。

王妃様の一粒種の王女・イヴ様はまだ成人していないので、

王位継承権そのものがない。

成人したとしても女性であることから継承権は低い。

そこで王妃様は陛下の死を伏せ、同じ既得権益者である評定衆と組み、

時間を稼いで、まず内部固め。

権力を確実に掌握してからイヴ様を女王に祭り上げる。

そういう構想を抱いているのではないかと疑った。

 正解かどうかは分からないが、共通の敵の存在は欠かせない。

敵があれば内を纏めやすいからだ。

それが元凶公爵家二家への討伐軍が発せられない理由だろう。


 全く分からないのが反乱軍の出方だ。

彼等は国王陛下の死を知っていた。

何しろ手を下したのは王兄のカーティス北畠公爵自身。

下した上に棺桶に入れて保管していた。

 どういう出方をするのだろう。

自ら兄を殺したと公表するのだろうか。

否、それはないな。

王妃様の側にとっては大きな痛手だが、

かと言って反乱軍に有利に働くか・・・。

働かない。

「王殺し」の汚名しかない。

継承権を持つ者や他の王族に非難されるだけ。

多くの貴族も承服し難いだろう。

 王宮を占拠して政権を奪取すれば、病死として処理できたのだが、

失敗した今、口を閉ざすしかない。

王妃様の側が公表すれば、無関係を貫くしかない。


 何はともあれ気の毒なのは国王陛下だ。

おそらくは、腐敗させぬ為に氷魔法で保存されているのだろう。

棺桶の中でカチンカチンに。

政治の適切な頃合いをみて自然解凍されるのだろうが・・・。 

チ~ン。

思案に暮れていたら、ポール殿に呼ばれた。

「佐藤子爵、聞こえているか」

「はっ、すみません、色々考えていました」

「しようがないな。

今回の恩賞の話だ」

「恩賞ですか」

「気が向かない話か」

「はい。

特例で子爵になって一年も経っていません。

これで恩賞をいただいたら・・・、周りの目が・・・」

 ポール殿が裏のない笑みを浮かべられた。

「私や王妃様もそこを心配している。

しかし君は今回の件では手柄を立てた。

一つ、イヴ様を守り切った。

二つ、独自の判断で評定衆に書状を送り、王妃様を側面から支援した。

この二つで大きく貢献した。

それは功績第一等にも相応しい。

・・・。

君の懸念も分かる。

大人達の嫉妬を買いそうだからな。

下手すると後ろから撃たれる、足を引っ張られる。

それが心配なんだろう」

「はい」

「商売人ではないが、後払いでいいか」

「なくても構いません。

子爵の先は伯爵しかありませんので」

「そうか、伯爵か」


 ポール殿は暫し考えられた。

そして尋ねられた。

「君の実家、佐藤家本家は田舎に隠棲するのが望みだったね」

「はい、政治には関わりたくないそうです。

それは元家臣の村人達も同様です」

「でも商売は嫌いじゃないだろう」

 俺は先が読めなかった。

どうして今、村の話。

この人、何を考えているのだろう。

「その方向で村は生きていくと思います」

「よかった。

君の功績は佐藤家本家へ送ろう」

「それは困ります。

本家が目立ちます」

「勿論、目立たぬ様にする。

貴族に取り立てる事はしない。

・・・。

佐藤家本家の村は三河大湿原に面していたね」

「はい。

三河大湿原の獣を警戒して距離はありますが、間には町も村も、

他家の領地もありません」

「よかった。

尾張地方に面する一帯を王家の狩場とし、佐藤家に管理を委託しよう。

当然、年に数回は獲物を献上してもらうがな」

 このところ視点変更の要望が届くようになりました。

大いに反省し、梅干しを、いえ、☆を入れることしました。

・・・。

そうそうお客様、ものはついでです。

下段のポイントの☆を入れてみませんか。

贅沢は申しません。

☆五つが☆いのです。

えっ、ポイント還元ですか・・・、なろうに相談して下さい。

なんとかなろう。

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