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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
199/373

(大乱)2

 俺は疲れていたらしい。

メイドのドリスの声で起こされた。

「おはようございます、ダンタルニャン様」

 ドリスが入室して来た。

返事も待たずに窓を開けた。

「天気のいい朝ですよ」

 振り向いて俺の顔を覗き込む。

「随分とお疲れの様ですが、大丈夫ですか」

 俺は上半身を起こした。

目を擦りながら応じた。

「おはよう。

・・・。

子供には酷な一日だったから、もうクタクタ。

身体より、精神がね。

ところでお客様方の様子は」

「イヴ様もお疲れの様でまだご就寝なされています。

他の方々は、侍女の皆様は起きられてイヴ様待ちの状態です。

騎士の方々は内庭で鍛錬されています」


 俺は改めてドリスに尋ねた。

「ねえドリス。

昨日も説明したけど、今回の件、正直にどう思う」

 俺は昨日、帰邸するや屋敷の者達を全員集め、

王宮で起きている騒動を説明し、預かったイヴ達を紹介した。

ドリスは極めて明るい表情をした。

「何も問題はありません。

私達使用人は主に従うのみです」

「こんな子供だよ」

 ドリスは首を傾げた。

「子供・・・。

どうもダンタルニャン様はご自分をご存知でないようですね。

・・・。

子爵様はどこからどう見ても子供の姿ですが、

私共はそうは考えていません。

そこいらの貴族様よりも一段上と思っております。

変な謙遜などせずにドンと構えて、命令でも指示でもなさってください」

 ドリスが姿勢を正して一礼し、ニッコリ笑う。


 身支度を整えた俺は階下の執務室に入った。

デスクには書類が区分けされて整然と置かれていた。

大まかには二つ。

子爵の決裁を必要とするもの。

執事のダンカンの決裁で済むもの。

 俺は自分のものに取り掛かった。

ほとんどは領地からの申請書と報告書だ。

カールの筆跡もあれば、代筆でイライラザのものも。

読んで、考察。

納得すればサイン。

分からないものは執事に丸投げ。


 ドアをノックして執事・ダンカンが屋敷警備担当・ウィリアムと、

メイド長・バーバラを伴って、思案顔で入室して来た。

「おはようございます」

「おはようございます」

「おはようございます」

「おはよう」

 ダンカンがデスクの前に立ち、その一歩後ろにはウィリアムとバーバラ。

三人の表情からして良い知らせではなさそうだ。

ダンカンが口を開いた。

「全ての書状の発送が終わりました」

 俺は昨日の一件の概要をしたためた書状を七通、

昨夜のうちにダンカンに預けて、急いで発送する様に指示していた。

ポール細川子爵邸の執事・ブライアン宛て。

幼年学校の寮住まいのパーティ仲間・シェリル京極宛て。

木曽の領地の代官・カール細川宛て。

尾張の実家・佐藤家宛て。

加えて国王の味方をするであろうと思われる三家へも。

管領・ボルビン佐々木公爵邸の執事宛て。

評定衆の三好家と毛利家の執事宛て。

「どこからか返事があったのかい」

「はい、ポール細川子爵邸より」

「よくない知らせのようだね」

「はい、早朝、口頭の報告が来ました。

子爵様、未だ戻らず、と」


 ウィリアムが一歩前に出た。

「ご指示の通り、平民の恰好をさせた兵を関係各所に走らせました」

「それで、どうなってるの」

「昨夜遅く、南門と北門が陥落しました。

現在、南門にはカーティス北畠の家紋を掲げた軍勢。

北門にはバーナード今川の家紋を掲げた軍勢」

「兵数は」

「それぞれ百から二百が門を守っています」

「少ないな。

王宮の占拠が進まないのか」

「おそらく・・・。

王妃様が抵抗なさっているのでしょう。

王宮奥からの喊声が未だ途絶えておりません」

「他の軍勢の様子は」

「各区画の貴族邸が騒がしい事から、軍備を整えていると思われます」

「表に出た軍勢は」

「今のところ有りません。

念の為、有力諸侯の屋敷を見張らせています。

・・・。

ですが・・・」懸念の表情を浮かべた。


 俺は首を傾げた。

「どうしたの」

「外に出した兵が多いので、この屋敷の備えが万全ではありません。

ですので、勝手ではありますが、

私の一存で冒険者ギルドと傭兵ギルドに声をかけました」

「そうか、そうだよね、屋敷が手薄になるよね。

ウィリアム、君の判断が正しい、ありがとう」

「いいえ、そんな」

「これからも僕の足りないところを遠慮なく補ってくれよ」

「はい。

それで子爵様はこれからどう動かれますか」

「僕はイヴ様の騎士を拝命した。

これは重い」

 重臣の三人が互いの顔を見遣る。

そして頷き合う。

代表してダンカンが口を開いた。

「我等は子爵様の判断に従います」

 三人が踵を揃えて一礼した。


 最後のバーバラが困り顔で言う。

「イヴ様がお目覚めです。

にゃんはどこにいるの、とお探しです」

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