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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
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(王宮の地下)9

 国王・ブルーノ足利は騎士団が傭兵団を捕縛したのを見届けると、

風魔法使いに連れられて地上に舞い上がった。

着地すると王妃・ベティが駆け寄って来た。

「お怪我はありませんか」勢いのまま抱きつく。

 もうちょっと力が強ければ二人して穴に落ちるところであった。

「おおっ・・・、大丈夫だ」

「よかった。

・・・。

敵の頭目は如何しました」

「生かして捕えた。

治癒魔法のお陰で口も利ける。

きっちりと喋らせてやろう」


 二人の周りに国の首脳陣が集まって来た。

代表して菅領のボルビン佐々木が自分の胸に手を当て、

片膝ついて朗らかに言う。

「ようござました。

この老骨、寿命が縮みましたぞ」

「心配かけたな」ブルーノは歩み寄って老人の肩に手を置いた。

「ええ、心配しましたとも」

「相変わらずのようで安心した」ブルーノは言いながら、全員を見回した。

 評定衆に、王族の当主達、そして側近の者達。

顔が見えぬのは今回の件で怪我して伏せているか、亡くなったか。

そして、肝心のあいつ。

王弟・バーナード今川公爵が視界に入った。


 ブルーノはバーナードを一番怪しんだ。

国王の脱出経路に詳しいと思える人物で、

琉球オアシスと台湾オアシスの間で新たに見つかったオアシス、

その所有権を左右できる人物と繋がっているのは彼しかいない。

薩摩地方と大隅地方、そして薩南諸島、

これらの寄親に何代にもわたって任じられている貴族・島津伯爵家。

爵位こそ伯爵だが、西部方面の重鎮である。

だからして彼の家の長女が王弟・バーナードの正室に迎え入れられた。

 そのバーナードと視線が絡み合った。

他の者達同様に片膝ついてはいるが、挑む目色。

この期に及んで、何かを企んでいる気配。

ブルーノは彼に真正面から尋ねようと思った。


「ご無事でようございました」

 そう声がかけられた。

近くに兄・カーティス北畠公爵の顔があった。

長子ではあるが側室の子である為、王位継承権はブルーノの下。

今も下位にあるが、それでも一切文句を漏らさない人物で、

王族内での評判はすこぶるいい。

 カーティスの従者が一つの長物を背後から主人に手渡した。

袋に入れられてはいるが、明らかに長剣と分かった。

受け取ったカーティスが両手で大事そうに持って、進み出て差し出した。

「これを瓦礫の中から見つけました。

鑑定させたところ、陛下の物ではないかと」


 ブルーノは受け取り、袋からそれを取り出した。

見事な長剣が現れた。

鞘といい、鍔といい、拵えだけで価値が見て取れた。

しかし身に覚えはない。

「私のではないな」

「そうですか、それは残念」

 ブルーノは長剣を袋にしまい、戻そうとした。

カーティスがそれを受取ろうと、両手を差し出した。

 魔力の発動。

ブルーノは唖然とした。

目の前の空気が揺らいだ。


 カーティスはこの時を待っていた。

逃さない。

弟が無防備な今しかない。

密かに習い覚えた無詠唱で、攻撃魔法を放った。

 火魔法・ファイアボール。

最短距離で弟を直撃した。

破裂すると自分も巻き込まれるので、それはない。

代わりに貫通する様にした。

 

 ブルーノは時が止まった様に思えた。

最短距離で放たれた火球がゆっくり自分に迫る。

身動きできぬ自分。

走る衝撃。


 誰もが我が目を疑った。

目撃者が大勢いる中での、この突然の出来事。

皆が皆、思考が停止した。

ブルーノが上げた悲鳴だけが辺りに響き渡った。

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[一言] 「ブルーノは長剣を袋にしまい、戻そうとした。カーティスがそれを受取ろうと、両手を差し出した。魔力の発動」 怪しんでいる者が武器を手にしているとき、あるいは身近に武器を持とうとしているときに…
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