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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
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(王宮の地下)1

 俺はパティ毛利と近況も話し合った。

「ボブとは最近どうなの」遠慮がないパティ。

 ボブ三好。

三好侯爵家の分家筋の男子で、

僕だけでなく平民には辛辣な対応に終始している奴。

「ポブ三好殿は僕と目も合わせてくれなくなりましたよ」

「あの子は昔からそうなのよね。

身分に拘り過ぎて、逆に自分を不自由にしているわね。

もっとも、貴男が相手の場合は嫉妬ね。

見下していた人物が自分より上になったものだから、

どうしていいのか、分からないのでしょう。

今さら、友達面もできないし」

「ええ、今さらですね。

僕としても、友達面されると怖いので御免です」


 後ろのアシュリー吉良の表情が険しくなってきた。

焦れている様子。

ついには口を出してきた。

「パティ様、そろそろ参りましょうか」

 パティの顔が微妙に変化した。

僕とアシュリーを見比べる視線。 

でも口にはしない。

言葉を飲み込み、どちらにともなく言う。

「難しいものね。

まあ、いいわ」アシュリーに頷き、僕に視線を戻し、

「ところでダンタルニャン佐藤子爵様、

貴方の御家来衆に魔法使いはいますか」意外な質問をくれた。

 彼女が僕を子爵様呼ばわりする時は、何かある。

「いませんが、それが何か」

「王宮区画の惨状はご存知かしら」

「遠目にですが、瓦礫でかなり酷い状態に見えます。

でも王宮区画ですから、近衛軍の魔法使い達が対処するのでしょう」

「普通ならそうです。

・・・。

子爵様のお耳に入れて置きますね。

管領のボルビン佐々木様より評定衆にお触れが回りました。

風魔法や土魔法の使い手を揃えて王宮区画へ参るようにと」


 管領職、ボルビン佐々木侯爵。

現国王が未成年時、その後見をしていたこともあり、絆は強い。

そんなボルビンが管領職として、

異例なお触れを出すからには只事ではない。

俺は尋ねた。

「管領職と評定衆ではどちらが上なんですか」

「古来よりは評定衆が上。

管領職が定席になったのは、つい最近ですから、

どう考えても管領職は下でしょう」

「世間では管領は国王の右腕と言われていますけど」

 するとアシュリー吉良が割り込んできた。

「それは無責任な世間の戯言。

国王を真下で支えるのが評定衆。

管領に指図される覚えはないわ」

 パティが苦笑いで言う。

「お父様から聞きました。

管領が評定衆にお触れを回すのは越権行為だそうです。

・・・。

つまり、それだけ管領様は追い詰められている」

「何に・・・。

そうか、風魔法や土魔法は瓦礫の除去。

王宮区画の除去は近衛軍の魔法使いだけでは足りない。

さりとて街中を受け持っている国軍は動かせない。

そこで評定衆が持つ魔法使いという訳か」

「評定衆限定ではなく、その影響下にある血縁貴族家も含めるそうよ」

「大掛かりですね。

もしかして、国王陛下の御一家に関わる事態ですか」

「たぶん・・・、地下に避難されてるとは思うけど・・・。

それ以外には考えられないわ」


 国王ブルーノは家族と共に地下室に避難していた。

地上部の建物が全て潰れ落ちても、

高度な術式が施されているので何の影響も出ていない。

時間の経過から頃合いとみて、ブルーノは外に出ようと、

警護の近衛兵に命じた。

「そろそろ外の空気が吸いたい。

直ちに扉を開けよ」

 警護の五人が扉に駆け寄った。

ところが外に繋がる扉は微動だにしない。

ガタともしない。

隊長が振り返った。

「瓦礫が邪魔しているみたいです」

「瓦礫か・・・、何とかならぬか」

 侍従長が宥めた。

「外の者達を信じましょう。

必ず来てくれます」

 王妃のベティが愛娘・イヴを抱いて歩み寄って来た。

「階下の貯蔵庫に非常食がありました。

これで当分は食い繋げます。

辛抱しましょう、この子の為にも」

 ブルーノは全員を見回した。

妻と子で二人、侍従長を含む侍従が四人、侍女が三人に女官が二人、

そして近衛兵が五人。

みんなの命をブルーノが預かっていた。

迂闊な言動は慎まなければならない。

「分かった。

ところで、ここの通気口はどこに繋がっているんだ」鼻をムフムフさせた。

 近衛の隊長が答えた。

「地下水路です。

ちょっと臭いますが、ご辛抱下さい」


 国都の下を地下水路が縦横無尽に走っていた。

地上が計画的に造られたのに対し、

地下水路は魔物の侵入を防ぐ工夫もあり、複雑怪奇な迷路になっていた。

地図なしでは点検にも修理にも入れない、そんな有様だった。

 そんな水路に沿った通路を進む一団があった。

地図と魔道具【携行灯】を持つ斥候を先頭にして、

水路に落ちぬように慎重に進んでいた。

全員が武装していた。

まちまちの装備だが、良質の物ばかり。

とても個人で購える物ではない。

 斥候が足を止めた。

「先で交差しています。

右でよろしいのですね」確認を怠らない。

 真後ろの男が傍に寄り、地図と交差している地点を見比べた。

「地図を信用するなら、ここで右だな」

「万一はないですよね」

「俺達を騙して何とする。

奴等はそこまで馬鹿じゃない」

 男は後ろを振り返った。

「獲物までもう少しだ」

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