表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
185/373

(営巣地)3

 俺は長老に言い返せない。

正しいかどうかは知らないが、理屈は分かる。

それがこの森の常識なのだろう。

だからと言ってワイバーンの営巣地を見逃すのも、なんだかなあ・・・。

 長老が反論せぬ俺をジッと見た。

『我等にとってはワイバーンよりも人間の方が質が悪い。

荒地や草原を見つけると、勝手に開拓して村にする。

森や林を見ると、当然とばかりに切り開き道を通す。

こんなに迷惑な連中は魔人か人間の二種だけだ』

 えっ、魔人・・・、魔人っているの。

寓話の中の魔人は知っているけど・・・。

それは置いといて、俺はワイバーンに国都が襲われた事を説明し、

『半分ほどを討伐しましたが、肝心のワイバーンキングを逃しました。

このまま終わるとは思えません。

必ずや機を見て、再び国都を襲うでしょう。

それを阻止する為に俺達は来ました。

何と言われようと営巣地を攻撃します』目的を話した。

『プー、攻撃、攻撃プー』鼻息の荒いハッピー。

『私も攻撃に参加するわ』アリスは言い切った。


 長老は腕を組んで溜息をついた。

少し考えてから俺を見た。

『そちらの事情は分かった。

しかし困ったものだ。

落とし所が分からぬ』

 俺も困った。

妖精の里と敵対関係になりたい訳じゃない。

妥協点を探ろう。

『営巣地を残せば良いのですね』

『そうじゃ、できるか』

 であれば、できる。

『ワイバーンキングとクイーンは討伐しても良いですね』

『キングとクイーンはどうなっても構わん。

肝心なのは営巣地じゃ』

『分かりました、何とかしましょう』


 俺はアリスとハッピーに伝えた。

『湖の上にキングとクイーンを誘い出して討伐するよ。

その2翼は俺が相手する。

二人には2翼に加勢しようとするワイバーンの討伐を任せる。

それで良いかい』

『私にもキングかクイーン、どちらか1翼を回してよ』

『ピー、キング、クイーン、どちらかピー』

 二人の意気込みが分かった。

断れない。

『できるのかい』

『任せて』

『ポー、任せて、任せてポー』

『二人でクイーンを討伐してよ』


 俺は光学迷彩を解いた。

風魔法ではなく重力魔法の飛行スキルで湖上に向かった。

手頃な辺りでホバリングし、【ツインの複合弓】を取り出した。

前回は風魔法に対抗する為、魔水晶の光魔法を選択した。

今回はそれと比較する為、魔卵の重力魔法を選択した。

矢は同じく鉄矢。

EPの数値は・・・、光魔法は15だったが、

遠距離なので重力魔法は20からのスタートにした。

 ワイバーンクイーンは営巣地上空にいた。

配下2翼を従えて旋回を続けていた。

遮る物がない湖上なので、一度だけ俺に視線を向けて来た。

でも小さいと侮ったのか、フンとばかりに視線を元に戻した。

 好都合。

俺は配下2翼を狙うことにした。

脳内モニターでズームアップ。

手前のは右目、奥のは頭部。

続け様に射た。

光より速度は落ちるが、ワイバーンが纏う風魔法には影響されない。

狙い通りのコースを二本の矢が飛ぶ。

 2翼は全く気付かない。

鉄矢が右目に深々と刺さった個体は身体を傾けて落下。

頭部に突き刺さった個体も同じ。

悲鳴一つ上げずに落下する2翼をクイーンは不思議そうに見送り、

やおら周囲を警戒するように見回し、そして、最後に俺に目に留めた。

探るように睨む。


 俺はクイーンを挑発することにした。

水魔法、ウォータボール・水弾を放った。

距離はあるが狙い通り着弾・・・。

やはり、クイーンが纏う風魔法で弾かれた。

 クイーンが怒りの咆哮。

旋回を止めた。

俺に正対した。

再び咆哮。

全速力で飛んで来た。

 釣れた。

針はなくても大物を釣り上げた。

俺は動かない。

 クイーンはとてもご立腹の様子。

まっしぐら。

周囲に気を配る余裕はなさそう。


 高々度にはエビスゼロとエビス一号が待機していた。

当然、アリスとハッピーが機上していた。

『行くよ、ハッピー』

『パー、アリスん、降下、降下パー』

 瞬時に加速し、急降下した。

エビスゼロは機体にアリスの妖精魔法を纏わせ、

エビス一号はハッピーのダンジョンスライム魔法を纏わせ、

錬金魔法で造られた機体を更に魔法で強化していた。

 エビスゼロはクイーンの右の翼に狙いをつけた。

エビス一号は左の翼に狙いをつけた。

太い胴体よりも弱いだろうと二人で考えたのだ。

 クイーンが気付いた時には終わっていた。

両翼に穴を開けられ、その痛みの声を上げた。

湖上をその悲鳴が渡って行く。

 俺は自分が造り上げた機体が心配になった。

『機体に異常は・・・。

先端は潰れてない、大丈夫』

『ないない、大丈夫』

『プー、仕留める、仕留めるプー』

 二機は湖面すれすれで反転、クイーンの頭部に突っ込んで行く。

無謀にも突っ込むかと思いきや、違った。

それぞれが得意の魔法を放った。

アリスは右から妖精魔法の風槍・ウィンドスピア。

ハッピーは左からダンジョンスライム魔法の水歯車・ウォータギア。

 息の合った攻撃魔法が叩き込まれた。

弾けるクイーンの頭部。

HPがゼロになったのを俺は探知と鑑定で確認した。

このままにしては置けない。

もったいない、もったいない。

湖面に落下して行くクイーンの傍に転移した。

虚空の空きスペースにクイーンを収納した。


『ダン、どうかしら、私達の仕事は』

『ピー、仕事、仕事ピー』

 綺麗な頭部が欲しかったが、それは言わない。

『満点だよ』

『だよねー』

『プー、満点、満点』

 喜びも束の間、主役の登場だ。

営巣地からクイーンよりも強力な魔力が湧いた。

それが上空に舞い上がった。

ワイバーンキング。

ホバリングして俺達を視認、睨み付けた来た。

 遅れて配下が付き従う。

8翼。

それぞれが咆哮した。

かなりお怒りのようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ