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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
165/373

(解放)3

 ダンカンが問う。

「魔物狩りより街中の仕事と仰っていますが、

現に貴女方は魔物を狩っておられる。

そこには如何なる理由が・・・」

「簡単な事です。

女の子達の家庭教師とパーティの警護、

この二つで結構な報酬になるのです。

これは断れません。

そしてもう一つ。

ダンに有ります。

彼は魔物の引き運が強いのです。

ダンジョンに潜る訳でなし、森に入る訳でなし、

ただ平地で薬草採取するだけなのに、必ず魔物に遭遇するんです」

 言い終えるとシンシアは俺に視線を転じた。

そう言われても・・・。

仲間達に助けを求めた。

すると仲間達の視線は全て俺に向けられていた。

目色から判断すると、みんな同じ考えのようだ。

まさかな・・・。

取り敢えず過去を振り返ってみた。

あっ、直ぐに思い至った。

何時も何時も魔物に彩られていた。

 シンシアが言う。

「ダンは勘が鋭いのでしょう。

的確に来る方向と数を知らせてくれます。

そして得意の弓で半数近くを倒します。

全部ではありませんよ。

必ず女の子達の経験になるように、適度な数を残してくれるのです。

表現が大変失礼だとは思いますが、敢えて言います。

ダンは誰よりも頼りになる弟分です。

一緒しない訳がないでしょう」

 これに仲間達が深く頷いた。


 叙爵・陞爵の〆が来た。

お世話になった方への御礼言上だ。 

折を見て、ポール細川子爵邸を訪れた。

勿論、手ぶらではない。

実家から送られて来た品々を持参した。

三河大湿原で狩ったミカワワニにミカワサイなどを用いて、

村の職人が工夫した民芸品の数々だ。

それを見てポール殿が目を丸くした。

「これはこれは、大変なものだ。

美しいだけでなく、実用的だ」

「それを聞けば村の者達が喜びます」

「馬車といい、この民芸品といい、ご実家は何を目指しておられるのだ」

「片田舎でひっそりと生きて、しかも余裕のある生活でしょうか」

「なんと贅沢ですな」


 月が替わると物事が動き出した。

領軍が領地に向けて進発したのだ。

俺はそれを見送る為に街道に出た。

 一行の先触れとして国軍の一個大隊が現れた。

騎馬隊、幌馬車隊、歩兵。

国旗と軍旗を並走させて粛々と進む。

彼等は領軍に随伴し、領地に隣接する新駐屯地に入るそうだ。


 次は奴隷の群れ。

大半は用意された幌馬車に乗っていたが、人数が多過ぎて、

屈強そうな大人達は歩かされていた。

 俺に気付いた大人が反対側に唾を吐き、ジッと睨みつけて来た。

まあ、そうなるだろうな。


 代官として任地に赴くカールから事前に聞かされていた。

「奴隷は連座が適用された者達ばかりで、凶悪犯は一人もいません」

 連座は犯罪者の家族親族に適用される罪状だ。

「それは助かる。

凶悪犯がいないと扱いが楽だよね」

「そうとばかりは言えません。

連座なので、ほとんどが家族丸ごとです。

子供もいれば、身体の不自由な老人もいる。

なかには乳幼児も」

「あっ、そうか。

連座だから容赦なしか」

「そうです。

余計な費用が嵩むと思われます」

 怪我とか病気は雇用主持ちで治さねばならない。

奴隷には奴隷の人権があり、それを怠ると雇用主が罰せられる。

「分かった。

ところでその連座の刑期は長いの」

「長くても十年前後です」

「そうだと子供が不憫だね、・・・んーと。

ねえ、カール、子供達に教育を施す事はできないかい」

「教育ですか」

「領地の多くの村は壊滅したと聞いている。

だったら刑期が終えた彼等を迎え入れて良いんじゃない」

 カールは安請け合いはしない。

「それは頭に入れて置きます。

現地での作業の進捗状況次第ですね」

 幌馬車から乳幼児らしき泣き声が聞こえて来た。

罪を犯した当人達は、この光景をどう見るのだろう。


 後尾は領軍が務めていた。

この領軍は当初、中隊規模であったのが、予想を超えて膨らんだ。

ポール殿とは縁のない貴族の余剰子弟が家臣の余剰子弟を連れて、入隊を望んだからだ。

進発する頃合いには二個中隊に。

それで中隊長のアドルフを大隊長に昇進させた。

この兵力なら大樹海の魔物の間引きも余裕だろう。

嬉しい誤算だ。


 最後尾にいた二騎が俺の方へ寄せて来た。

前にいるのは代官・カール。

もう一騎はカールの背中に隠れて見えないが、たぶん、副官だろう。

カールが流麗な敬礼をした。

「それでは領地に向かいます。

私がいないからと言って、無茶はしないで下さい」

 俺は答礼した。

「勿論だよ。

心配しないで」

 カールの背後の顔が見えた。

見知った顔。

獣人・イライザ。

八百屋マルコムの娘のイライザだ。

俺と視線が合うと、しまったという表情になった。

俺は声をかけた。

「イライザ、何してるのかな」

 カールが場をイライザに譲った。

イライザは諦めたのか、背筋を伸ばして敬礼した。

「はい、カール様の副官に任じられました」

「へえー、・・・成人したの」

「一年前倒しで、成人しました」

 周知の慣習なので、批判はできない。

おそらくイライザの気持ちを知っている母・オルガの入れ知恵だろう。

これだけではない。

入隊から副官までもそうだろう。

オルガは細川子爵邸のメイドをしていたので伝手がある。

ポール殿は関与してなくても、執事を動かせば副官までなら任じられる。

俺は溜息しか出ない。

「カールを宜しく頼むね」

「任されました」

 屈託のないイライザの表情。

反対にカールは、ヤレヤレ感。


 尾張の実家から使者が次々に来た。

「伊勢侵攻の尾張軍が壊滅しました。

伯爵様のご子息二人は捕えられたそうです」

「伯爵様が後詰される予定でしたが、取り止めになりました。

伊勢方と交渉されるそうです」

「伊勢方との交渉が進展しません。

このままでは交渉決裂もありうるでしょう」

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