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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
16/373

(ギター)6

 予想通りだった。

壁紙の種類は一つ。

俺がPCで使用していた風景シリーズであった。

ランダム設定した。

 設定に続いてアプリをクリックした。

光学迷彩☆☆。

探知☆。

鑑定☆。

それぞれのプロパティを開いて読む。

俺の記憶にあるPCを参考にしたのだろう。

懇切丁寧に文字化してあった。

 スキルというものに当初、戸惑いもしたが、

ゲーム慣れというものは恐ろしい。

スムーズに扱えるようになった。

イメージすれば三つのスキルを同時並行で発動できる事も確かめた。

 問題はユニークスキルにあった。

無双☆☆☆☆☆をクリックすると、

「ここはダンジョンではありません」の文字。

ダンジョン内限定だそうで、あとはウンでもスンでもなかった。

 ダンジョンマスター☆に至っては、

「周辺の魔素が少ないのでダンジョンを創造しても維持が出来ません。

魔素の濃い場所への移動をお勧めします」の文字。

まあ、その通りなんだろうが、融通が利かない、お役所仕事か。

ユニークなんだから、もう少し緩くして欲しいものだ。

 虚空☆は分かり易かった。

虚空と呼ばれる亜空間に設けられた収納庫の事であった。

収納容量は決められているが、内部の時間は停止したまま。

錆びもしなければ腐れもしない優れもの。

加えて完成品として収納された物を取り出して使用した際、

破損した物は、再度収納すると自動的に修復されるのだそうだ。


 HPとMPの使用量をチェックした。

HP(222)残量、45。

EP(222)残量、23。

 忘れていた。

EPだ。

MPなら分かる。

ゲームならマジックポイント。

それならEPは。

俺が念力を使っているからエスパーポイント・・・なのだろう。

たぶん、そうなんだろう。

そして文字化しているということは、EP表記でも問題なしということ。

この緩さにグッジョブ。


 そうだ。

魔法。

EPで魔法。

試しに火の魔法が使えないかと、掌の前に向けて念力を集中した。

イメージは着火。焚き火。

・・・。

工夫したが徒労に終わった。

残念だがそれでも収穫の方が遙かに大きい。


 あっ、そうそう。

「無病息災」のお陰で怪我がありませんでした。

「千吉万来」のお陰でBランクになり、沢山のスキルを得ました。

感謝、感謝。

今後も丹田の呼吸法を継続します。


 空色が夕方近い。

俺は帰ることにした。

探知スキルで周辺を確認しながら足を進めた。

麓の道を石切場を抜けて北の集落へ向かった。

 途中、出会った者達の様子が変だった。

俺を見て唖然とする者。

目を点にする者。

避ける者。

棒立ちになる者。

手にした物を落とす者。

何か・・・、何かおかしい。


 橋を渡ろうとしたら、向こうから獣人の娘ケイトと黒犬五郎が現れた。

俺を探しに来たのだろう。

いつもなら怒りの声が飛ぶのに、今日は違った。

ケイトは橋の真ん中で足を止めた。

五郎も止まった。

「ダン、髪の毛・・・」言い淀むケイト。

 俺は頭に手を当てた。

何も付いてはいない。

怪我もしていない。

禿げてもいない。

「ダン、そうじゃないの。

髪の毛の色が違うの。

銀、ううん、白銀。

他の銀髪とは少し違うの。

輝いているの。

・・・。

一体、どうしたの」


 意味が分からないが、橋の下の川面を覗いた。

幾つかの小魚の群がいた。

そこに俺が映った。

鏡ではないので鮮明には映らないが、確かに頭髪の色が違っていた。

黒ではない。

妙に白っぽい色をしていた。

小魚の群の一つが動き出し、川面に波紋を描いた。

 俺は戸惑いながら橋を渡り、小川に下りた。

膝まで入って自分の髪の毛を確かめた。

やはり白っぽい。

銀と白銀の違いは分からないが、ケイトの言葉を信じた。

直ぐに頭を洗った。


 小川に下りてきたケイトに目を向けた。

「落ちてないわよ」ケイトが首を横にした。

 色が落ちた、と思ったが違った。

俺は短剣をケイトに渡し、衣服を脱ぎ捨ててスッポンポンで潜った。

何度も何度も潜っては頭を洗った。

顔を出してケイトを見る度に失望した。

 何の悪戯なんだろう。

ダンジョンマスターの呪いか。

俺は浅瀬に戻った。

下の毛を確かめた。

混乱して忘れていた。

まだ生えていなかった。


 浅瀬に戻った俺に五郎が飛び掛かってきた。

遊んでくれ、と言わんばかりの勢い。

俺は五郎を受け止めると抱きかかえ、振り返って川に放り投げた。

犬には深くないところだ。

すると五郎が上手な犬掻きをみせた。

「く~ん」と俺に甘える声。

 しようがないので俺は五郎と遊んでやることにした。

じゃれ合った。

傍でケイトの声が聞こえた。

「そろそろ帰るわよ」

 引き離そうとして、手を伸ばして来た。

俺を掴む。

グニュ。

途端、股間に激しい痛み。

「あーーー」

 思わず川の水を飲んだ。

溺れそう。

橋の上には人が集まっていた。

通りがかった者達が足を止めて見物していた。

彼等彼女等の声が降り注いだ。

「あっ、あそこは」

「痛いだろう」

「見ている俺も痛い」

「容赦がないわね」

「生娘って恐いわ」

 ケイトも狙った訳ではなさそう。

「手を掴もうとしたの」狼狽し、「間違えた、ゴメンネ」慌てて放した。

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