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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
159/373

(叙爵)17

 俺はスライムを鑑定した。

予想通りダンジョン限定の無双なので、何の参考にもならなかった。

眷属するのに不安はあるが、当のスライムは俺に期待している目色。

アリスも分かり易い目色。

期待は裏切れない。

 一つの名前が思い浮かんだ。

『ハッピー』

 途端、アリスを名付けした時と同じ痛みが脳内を走った。

そして、立ち眩み。

「ステータス欄に変更がありました」脳内モニターに文字

「名前、ダンタルニャン。

種別、人間。

年齢、十才。

性別、雄。

住所、足利国尾張地方戸倉村生まれ、国都在住。

職業、冒険者、幼年学校生徒、アリスの名付け親、ハッピーの名付け親、

山城ダンジョンのマスター。

ランク、B。

HP(333)残量、301。

EP(333)残量、213。

スキル、弓士☆☆。

ユニークスキル、ダンジョンマスター☆☆、虚空☆☆、魔女魔法☆☆、

無双☆☆☆☆☆(ダンジョン内限定)。

加護、神竜の加護」


 アリスの時に比べてEPの数値が増えたせいか、

受けるダメージは少ない。

ハッピーに目を遣った。

何故か、スライムは固まっていた。

個性と言うか、特有のプルプル感が皆無なのだ。

 奇妙な事が始まった。

解凍された氷の様に溶け出した。

水ならぬゼリー状になって床に薄く広がって行く。

実に不気味。

 ある程度の広がりで止まると、新たな動き。

ゼリー状態のまま宙に浮き上がって行く。

俺の目の高さまで来て止まった。

そして丸まり始めた。

 完全な球体になった。

直径40センチほど。

喜びの念話が届いた。

『ハッピー、ハッピー、ハッピー』

 気に入ったのだろうか。

『その名前で良かったの』

『とっても。

幸せな気分だよ僕』

 俺は両手を差し出した。

『ここに飛び込んで来てよ』

『は~い』

 飛び込んで来たハッピーを胸元で受け止めた。

軽い。

温かい。

プルプル感が消え、ゴムの塊のような弾力がある。

 アリスも嬉しそうに飛んで来た。

ハッピーに手を伸ばして撫で回す。

『プルプルじゃなくてブルブルね』

 俺はハッピーを鑑定した。


「名前、ハッピー。

種別、ダンタルニャンの眷属スライム。

年齢、1才。

性別、女。

住所、山城ダンジョン。

職業、なし。

ランク、C。

HP、125。

MP、125。

スキル、ダンジョンスライム魔法☆☆☆。

ユニークスキル、異種言語理解☆☆☆、収納庫☆☆☆、変身☆、

飛行☆」


 色々と突っ込みたい。

性別が女・・・。

それよりも何よりもユニークスキル、変身って。

俺寄りじゃなくて、アリス寄りなの、どうして・・・。

俺はハッピーに提案した。

『アリスのような姿形になれるかい』

『は~い』拒否しない。

 俺の胸元から飛び出すと、

床をポーンポーンと跳ね、高く跳んで宙返り。

完璧なコピー。

同じサイズの白い子猫姿になって宙に浮かぶ。

『どう』

『そっくりだね』

『でしょう、僕って出来るんだよ』

 俺は気になった点を尋ねた。

飛行☆スキルだ。

『宙に浮かんでるけど、どうしてかな』

『どうしてって、・・・出来るからだよ』

『どの位の高さまで浮かんでられるの』

『そこまでは試してないよ。

でも、たぶん、高く高くかな』

『もしかして飛べるのかな』

『うん、飛べるみたい』俺の頭上を周回してみせた。

 飛ぶスライムを初めて見た。

どうして・・・。

もしかして俺の重力☆絡みで飛行☆を得たのか。

考えるのは止めて、別の注文を出した。

『アリスと区別したいから、体毛を黒にしてくれないか』

『い~よ』再度の宙返りで黒い子猫姿になった。

 アリスが悲鳴のような声を上げて、ハッピーに突進、抱き着いた。

『キャー、可愛いわねえ』 


 ダンジョンスライム魔法のランクが落ちているのが気にかかった。

一度、当人が劣化具合を確認して、鍛え直すのが最善だろう。

でも俺は時間が限られている。

昼間は忙しい。

夜は成長期なので眠い。

となるとアリスを頼るしかない。

『ハッピーを鍛えて欲しいんだけど』

『任された』即、了承。

 一顧だにしないのが怖い。

俺は注文を付けた。

『噂になると拙いから人目に触れぬようにね』

『分かってるわよ』

『できれば国都内じゃなくて、山や森で魔物狩りをしてね』

『分かってるって』

『アリスが狩るんじゃなくてハッピーが狩るんだからね』

『しつっこいわね、任せなさい』

 アリスはハッピーに声をかけた。

『行くわよ』

『はいさー』

 仲良くコアフロアに消えて行く。


 クラリス吉川侯爵は自邸の執務室にいた。

上番の日ではないので朝から書類の山に取り組んでいた。

早々に一件の書類で手が止まった。

異例の叙爵・陞爵されたお子様子爵の一件だ。

 ダンタルニャン佐藤子爵。

焼き討ちに遭って亡くなったエリオス佐藤子爵の後継者だ。

ダンタルニャンはエリオスの嫡男ではない。

養子でもない。

面識すらないそうだ。

 表向きは共に、白銀のジョナサン様を始祖としていた。

ダンタルニャンはジョナサン佐藤家の本家で生まれているのだが、

一方のエリオスは怪しいもの。

遥か昔に分家したとする家系図を王宮に提出していたが、

肝心の本家の家系図には載っていない。

そこを国王が突いた。

エリオス系の門閥を黙らせ、強引にお子様子爵を誕生させた。

 そのダンタルニャン佐藤子爵家の行動を記した一件書類だ。 

クラリスは書類仕事を補佐していた秘書の一人に命じた。

「この書類を提出した者を呼びなさい。

詳しく聞きたいわ」

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