(ギター)5
鳥の甲高い鳴き声で俺は目を覚ました。
木漏れ日の中にいた。
草地をベッドにしていた。
どのくらい寝ていたのだろう。
慌てて半身を起こし、左右を見回した。
見覚えのある岩場があった。
それで状況を思い出した。
青白い光を放つ光体と戦った筈だ。
あれは・・・。
前後左右だけでなく上まで探してみたが見つけられない。
勝ったのか退けたのか、分からない。
負けてないのだけは確かだ。
丹田が気になり、手を当ててみた。
念力によるマグマ化の影響は・・・。
普通に温かい。
切羽詰まってマグマの海をイメージしたのだが、後遺症は見られない。
発動された念力は対象だけに効果を与え、
発動した当人には無害なのかも知れない、と都合良く解釈した。
脳内モニターに突然現れた文字の問題もあった。
あの時の文字表示の原因は全く思い当たらない。
状況を思い起こせば俺は瀬戸際にあった。
警告されなければ、どうなっていたのか。
今さらながら背筋が凍る。
あの警告があったから助かった。
生命の危機を切っ掛けにモニターが勝手にグレードアップした、
とまたまた都合良く解釈した。
途端、脳内モニターが起動した。
これまでは俺が五感を解放し、
脳内モニターをイメージする手順だったのだが、勝手に起動した。
だとしたら、俺の都合の良い解釈の肯定か。
文字が現れた。
「ダンジョンマスターを討伐しました」
はあー、ダンジョンマスター・・・。
俺の疑問をスルーして文字表示が進む。
「丹田で溶解し、その全てを回収しました。
光体を無害化して再生しました。光学迷彩に関連付けします」
はあー、はあー。
回収とか、関連付けとか、何言ってるの。
疑問には全く答えてくれない。
「スキルを四つ獲得しました。
探知☆、鑑定☆、憑依☆、光学迷彩☆。
ただし憑依は人間には使用不可能です。消去します。
これまでのズームアップ機能、気配察知機能、地図機能、識別機能、
俯瞰図、この五つは探知スキルに統合しました。
光体を関連付けたことにより光学迷彩がレベルアップしました。
光学迷彩☆☆となりました」
これは・・・。
これは、もしかして・・・、そうなのか。
「ダンジョンマスターをユニークスキルとして評価、設定します」
考えてみると前世のゲームで慣れ親しんだ単語の羅列。
分かり易い。
腑に落ちた。
「ユニークスキルを三つ獲得しました。
無双☆☆☆☆☆(ダンジョン内限定)。ダンジョンマスター☆、虚空☆」
それから、それから。
「ステータスを更新します。
名前、ダンタルニャン佐藤。
種別、人間。
年齢、九才。
性別、雄。
住所、足利国尾張地方戸倉村住人。
職業、なし。
ランク、B。
HP(222)残量、45。
EP(222)残量、25。
スキル、光学迷彩☆☆、探知☆、鑑定☆。
ユニークスキル、無双☆☆☆☆☆(ダンジョン内限定)、
ダンジョンマスター☆。虚空☆」
凄いな俺。
夢にまで見たステータス画面じゃないか。
しかも九才でこのランク。
どうやってランク付けするのか分からないが、
喜んで納得することにした。
俺が読み終わるのを待っていたかのように、
文字が一斉に消えて知らないモニター画面になった。
青一色の画面にアプリが六つ並んでいた。
光学迷彩☆☆。探知☆。鑑定☆。
無双☆☆☆☆☆。ダンジョンマスター☆虚空☆。
電源オンオフはないが、まるでPCのスタート画面。
俺の前世の記憶にあるPC画面を参考にした、としか思えない
思わず鼻で笑ってしまった。
PCの設定なら分かる。
同じようなものだろう。
兎にも角にも、あれだ、あれ。
手始めは壁紙だろう。
青一色は味気ない。
何とかしなくては。
あっ、肝心のマウスがない。
もしかしてタッチパネル。
画面にタッチするのか。
でも、どうやってタッチする。
手掛かりはない。
あるのは念力だけ。
タッチするイメージでアプリをクリック。
設定画面が現れた。