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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
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(帰省)19

 課題は時空と重力だ。

ドラゴンの鱗は後回しにして、この二つのスキルを磨かねばならない。

でも時間が限られている。

昼間は家族や友人達の目があり、自由にはならない。

夜中しか空いていない。

 皆が寝静まってから習得する事にした。

探知と鑑定でもって調べた上で、

光学迷彩と空飛ぶ椅子の連携で村外れに移動した。

当然、野次馬としてアリスが付いて来た。

『なにするの、面白い事なの』という訳だ。

『そこまで期待されると困るんだけど』

『期待を裏切らないでよね』


 神竜の加護で得られたスキル。

格落ちとアリスは気安く言うが、そのまま使う勇気はない。

そこで錬金でゴーレムを造り出した。

いわゆる泥人形の類。

土魔法でも造り出す事は可能だが、出来上がり具合がというか、

レベルが違うのだ。

土魔法だと当初は泥からだが、錬金は違う。

何の問題もなく金属から生み出せる。

頑丈と精巧という二つの点で圧倒的に錬金が上。

 俺が造り上げたゴーレムは人間を摸した物。

マネキン人形。

人体は水分で出来ている。体重の60%以上が水分というので、

外側はカリカリ、内側はジューシー、タコ焼きをイメージして仕上げた。

 目鼻がないのをアリスに突かれた。

『気持ちが悪いわね』

『そこまで人間に近付けたら、壊せなくなるだろう』

『信じられない、壊すの前提なんて』

『そういう物なんだよ』


 何体も造ったマネキン人形でスキルを試した。

すると壊れる壊れる。

時空に耐えられない。

重力にも耐えられない。

何体も何体も壊れる、壊れる。

お陰でデータが得られた。

 予想していたが、格落ちのスキルでも人間にはキャパオーバー。

威力が半端ない、凄すぎ。

そこでデータから数値化し、人間用に調整した。


 結果、三日で習得した。

時空絡みでは亜空間と転移。

重力絡みでは飛行。

 亜空間はダンマスの虚空に似た機能。

収納スペースを自由に拡張できるので、こちらが上位互換かも知れない。

もしかすると他の利用法もあるかもしれないが、それは後回し、

後日の暇な日に検証だ。

 転移もダンマスの転移に似た機能。

でもこちらは、ちょっと危ないかな。

転移先に先客が居た場合だ。

ドラゴンの大きな体軀ならあらゆる物を圧する事が出来るだろうが、

人間であれば簡単には行かない、とにかく拙い事態に発展する。

その点、ダンマスの転移はある意味便利。

ダンジョンコアの親コアと子コアで、事前に転移先の安全が確認出来る。

 飛行は風魔法を弄り倒していたお陰で、スムーズにマスターした。

飛行酔いもせず、自由に空を楽しめた。

この飛行を転移と組み合わせる事を思い付いた。

転移先の安全が事前に確認出来ないのなら、

転移先の上空に転移すれば良いと安直に。


 卒業試験という訳ではないが、四日目の夜は飛行に充てた。

『私も付いて行く』とはアリス、野次馬根性が半端ない。

探知、鑑定、身体強化、光学迷彩と次々に連携させ、

アリスを肩に乗せて窓から飛び出した。

飛行。

そして上空の安全をズームアップで確認して転移。

さらに三河大湿原上空の安全を確認して転移。

安全確認さえ怠らなければ何ら問題はない。

『便利、便利』アリスの喜ぶ顔から、俺を使い倒す意図が透けて見えた。

『何か変なこと考えてないか』

『被害妄想よ』

まあ良いだろう、アリスだし。


 ジャングルのあの更地を目指した。

ドラゴンがあれした場所だ。

上空からでも駄目なのが、はっきりしていた。

まるで死んだかのような大地。

これでは百年単位で更地のままだろう。

 俺はここを復興再生しようと考えた。

それは良心ではない。

正義感とも違う。

単なる我が儘。

土魔法の実験場としてここを捉えた。

ここ以上に最適な場所は知らない。

それに貴族の仲間入りするのなら、土魔法を磨いても損はない。

 この広さの範囲に魔法を適用するとなれば広域魔法しかない。

それも特上の奴。

戦場を想定して修行している国軍魔導師にしか出来ない奴だ。

それに俺は挑んだ。

EPの残量からしても問題はないと判断した。

 上空に魔法陣を描けば、真夜中にしても誰かに気付かれる。

そこで何時ものように無詠唱・無魔法陣にした。

静かに温和しく、効果は最大限にだ。


 最初のイメージは雨。

雨水で地面を濡らす。

次のイメージは肥料。

窒素、リン酸、カリウムだけしか知らないが、

それを全域に粉塵のようにして振りまく。

三つ目は耕す。

浅くても構わないから、とにかく耕し、雨水と肥料を土地に練り込む。

そして最後は種蒔き。

何の種にして良いのか分からないので、米を蒔くことにした。

米は米その物が種であり、精米すれば食料になるという優れもの。

ここで育てば陸稲。

最適ではなかろうか。

 後は野となれ山となれ。

蒔いた種が鳥の餌になろうが、風で吹き飛ばされようが、

それは自然の摂理。

緑の大地になるまで関与するつもりはない。

 そこまで見ていたアリスがしみじみ言う。

『アンタ、才能の無駄遣いじゃない』

『褒めてくれて有り難う』

『褒めてなんかないわよ』

『えっ、違うんだ』


 ジャングルとの境目に不穏な空気を感じた。

獣達が俺の魔法に気付き、引き寄せられていたのだ。

特に最前列にはミカワゴリラの群が目立つ。

『せっかくだから狩っちゃおう』アリスらしい。

『う~ん、それもそうなんだけど・・・。

部位が武具の道具として売れるし、ポーションの材料にもなるんだ。

だから丁寧に狩って欲しいかな。

それに綺麗な骨組みも欲しい』

『骨組み・・・、なにするの』

『錬金で肉付けして、そこに魔卵を組み合わせれば、どうかなと』

『もしかしてダンジョンに』

『強いのが出来ればダンジョンボス。

ほどほどのは階層のボス。

後は討伐される役』

『ダンジョンの開業を諦めてなかったんだ』

『せっかくのスキルだしね』

『まあ良いわよ。

働くスタッフはスライムだしね』

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