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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
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(ダンジョンマスター)10

 アリスは説明を終えると俺の肩に腰掛けた。

幼年学校君の仕上がりに自信があるのだろう。

自信に満ちた顔。

 俺は幼年学校君を始動した。

タイムロスなしで認識された。

本体コアを通して向こうフロア全景が脳内モニターに映し出された。

安全確認したので転移でゴーgo。

 俺とアリスを魔力が包むと軽く身体が揺らいだ。

次の瞬間には風景が変わっていた。

目の前に本体コアが鎮座していた。

コアは前と同じ輝かんばかりの鮮紅色。

それ以外は殺風景だった。

体育館規模の大きさで、内側六面はツルツルに磨き上げられた岩壁。

数箇所から差し込む陽の明かり。

空調も優れもの、快い温度湿度、フロア中を巡る微風。

環境は良いけど・・・。

風呂、トイレ、キッチンは・・・。

まあ、住み込む訳ではないから問題なしか。

あっ、助けた妖精二人は・・・。

姿が見当たらない。


『あの二人は眷属じゃないから、私同伴以外の時は、

このコアフロアへの立ち入りは禁止よ』

 アリスの口から意外に生真面目な理由を聞かされた。

ごめんよアリス、君を見直したよ。

思わずアリスを掌に乗せてその頭を撫でてしまった。

『どうしたのよ急に』何とも言えぬ表情で見返すアリス。

『偉いなあと思って』

『私が偉いってやっと分かったの。

まあ良いわ、褒められてあげる』小さな胸を張り、

『案内するから付いて来て』と指図した。

 アリスに従って一方の岩壁の方へ向かった。

『壁に他とは違う魔力を感じる部分があるでしょう。

見つけたら掌をつけてマスターとして認識させるの。

認識されたら壁を押すような感じで前に踏み出すの。

そうすると壁を通り抜けるわよ』

 鑑定スキルでそこを見つけた。

掌で触れると反応が返ってきた。

認識された。

そのまま壁を押すような感じで足を前に進めた。

全く抵抗がない。

俺自身が光にでもなったかのような感じで岩壁の向こう側へ通り抜けた。

原理も理屈も分からない。

施された術式のお陰か、それともマスターの権限、いやいや、アリス様。


 隣のフロアは奇抜であった。

コアフロアの二倍の広さ一面に大小様々な宝箱のような箱が整然と、

何列にもわたって並べられていた。

ほとんどの蓋が開けられていて、それを唖然と見ていたら、

奇妙な声がした。

『パー、マスター』下から念話で話しかけられた。

 スライム・・・。

表層が透明で、核の部分は青色、全体の直径が60センチほど。

大雑把な球体で、ただ動く度にポヨ~ンポヨ~ンと、

崩れる感じで伸び縮みしていた。

完全にイメージに近いスライム・・・だよな。

 釣られたのか、箱の陰から似たようなスライムが次々に現れた。

『マスター、来たのか』『プー、マスター』『マスター』『マスター』

わらわらと十数匹が足下に集まって来て、

ポヨ~ンポヨ~ンと緩く跳ねながら、俺の足に体当たりを繰り返す。

痛くはないので遊ばせておいた。

 観察すると核の部分の色に違いが有るのが分かった。

同じ青系なのだが、それぞれ濃淡が有るのだ。

濃藍色から群青色、露草色、空色・・・。

 俺が首を捻っていると、それを見かねたのか、アリスが端的に説明した。

『このスライムはマスターがダンジョンを創造すると、

必ず現れて配下になるの。

ダンジョンスライムって呼ばれているわ。

見掛けはこうだけど、錬金魔法の使い手ばかりよ。

ダンジョン創造の手伝い、補修、棄却。

魔物の召喚、廃棄。

そして見て分かるように、

武器、防具、衣服、ポーション等をこの宝箱に生み出すの。

ダンジョン限定で無双するレアスライムよ。

とにかく得手不得手とサボリ癖があるけど、我慢して可愛がってね』


 よく見ると近くの宝箱にスライムが入っていた。

底で鈍い光を放ちながら、プルプル小刻みに震えていた。

『これは』

『これがスライムの錬金魔法よ。

どのくらい掛かるかは分からないけど、何かを生み出すわ』

 まるで鶏の産卵。

近くの別の宝箱からスライムが出て来ようとしていた。

産卵で疲れ切っているのか、ズルズル感で一杯。

今にもプッチンと半分に千切れそう。

俺は歩み寄って念話した。

『疲れたね、ご苦労様』

 目や口の場所が明確ではないが、

そのスライムが一部分を俺の方にクニャッと向けた。

『マスター、ピー』喜んでる感じが伝わってきた。

 俺は宝箱の中を覗いた。

するとドロン金貨が散乱していた。

鑑定スキルの出番。

「ドロン金貨百枚です」脳内モニター。

本物のお墨付き。

 宝箱から出たスライムが蓋を閉め、そのまま通路にバタリ。

直ぐに寝息が聞こえて来た。

俺の顔色を窺っていたアリスが言う。

『ドロン金貨が欲しいと思ったでしょう』

『まさか』誤魔化した。

『人間はお金に弱いから。

さあ、キリキリ白状なさい』

『はい、ごめんなさい。

欲しいです』

『スライムが作った物は盗まない。

いいわね』

『はい、反省してます』

『それにアンタ、マスターでしょう。

アンタもダンジョン内限定の無双が出来るのよ。

欲しかった自分で作れば』

 朗報。

俺もダンジョン内なら金貨鋳造が出来るそうだ。

冒険者しなくても、いいんじゃね。


 あっ、ドロン硬貨って鋳造はダンジョンなの、それとも国家なの。

真っ当な疑問に頭が冷えた。

それにアリスが答えてくれた。

『ドロン硬貨は千年以上も前から存在しているの。

最初の発行元なんて知らないわ。

聞いた事もないし、関心を持った事すらないわ。

でも、世界共通だからダンジョンが本元かもね。

今は各国で鋳造しているみたいだけどね』

 たぶん、千年前に比べると人口が増えて硬貨が足りないのだろう。

それで国も硬貨鋳造に乗り出した。

そう考える方が正解かもしれない。

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