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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
119/373

(ダンジョンマスター)8

 別れ際にアリスと侯爵の間で約束がなされた。

アリスは自由にティナを訪れても構わない。

その代わりにティナに危機が訪れた際はアリスが保護する。

侯爵は快く応じ、ついでに俺に誘いを掛けた。

「よかったら当家に仕えないか」

 俺は即答した。

「仕官には興味がない」

 侯爵は苦笑い。

そこで俺達はティナを残して帰途に就いた。


 侯爵のデューク武田はCランクで鑑定スキル☆持ち。

俺より年上の気持ちの良い若者であった。

そんな彼に見送られて俺達は表門から外に出た。

 歩いていると不穏な空気を感じた。

油断していた。

探知スキルと鑑定スキルで原因を探った。

 大掛かりに侯爵邸を包囲している連中がいた。

辻々に人員を配置しているのだが、穴もある。

勘付かれぬように、わざと空けているのだろう。

合図一つあれば直ぐに塞がれるに違いない。

 連中は俺達には目もくれない。

全神経を侯爵邸に向けていた。

どうやら侯爵邸の妖精を奪還しに来る者を待ち構えている気配。

 アリスも低レベルの気配察知機能で感知したらしい。

『何か変よね、肌がヒリヒリするわ』

『原因が分からないのか』

『ちょっとね・・・。

えっ、もしかして分かるの。

教えなさいよ』

 連中との距離が近いので鑑定スキルも仕事がし易い。

『奉行所の連中だ。

中に覚えている魔波がある』

『誰よ』

『アリスが倉庫で半殺しに二人だ。

ザッカリーのところの奴だよ。

【奴隷の首輪】を付けられてる反応がする』

『ここで後腐れのないように殺そうかしら』

 俺は軽い考えで、とある悪戯を思い付いた。

『試してみたい事がある。

このまま気付かぬ振りをして進もう』

『大丈夫なの』腕を疑われた。

『少しは信用しようよ』


 あの二人、サンチョとクラークは一緒にはいない。

【奴隷の首輪】が嵌められているとはいえ警戒対象のようで、

侯爵邸を挟んで表と裏に分かれて配置されていた。

 俺は連中の目が逸れたのを機に横丁に入った。

誰の注意も引かなかった。

手頃な物陰に潜み、手近にいるサンチョを攻略する事にした。

 【奴隷の首輪】を綿密に鑑定して分析。

正規の物だけにコーティングまで施されていた。

それらを理解した上で、さあ、チャレンジ、チャレンジ。

術式洗浄スキルの出番。

まず【奴隷の首輪】全体に施してあるコーティングを消去。

続いて主人の欄の使役している者の名前を消去。

そして間を置かず、新たな名前を記入。

妖精アリス。

アリスの魔波をコピーして名入れ。

さらにアリスの魔波のコピーで【奴隷の首輪】全体をコーティングした。

「契約スキルを獲得しました。

術式洗浄スキルと統合して契約魔法とします。

契約魔法を魔女魔法に組み込みます」


 一連の事を告げるとアリスは呆れ返った。

『何て事を・・・。

それで成功したの』

『たぶん、成功だな。

試しに念話で命令してみたら』

 アリスは躊躇いながらも念話した。

『サンチョ、聞こえる、聞こえたら頭の中で返事して』

『はい、聞こえます、御主人様』即答だった。

『ステータスまで分かるのね、便利だわ』アリスが悪い笑顔で俺に言い、

『それで命令だけど、取り敢えず逃げなさい。

奉行所の連中から逃げて、どこかのスラムに隠れるのよ。

私が迎えに行くまで隠れているの、いいわね。

その際、捕まりそうになったら反撃を許可します、遠慮は無用です』

 最後は如何にも脳筋らしい一言。

途端、騒ぎが起きた。

ドタバタと足音、怒鳴り声、制止する声、魔法の破裂音、悲鳴。

 サンチョは元冒険者でCランク。

スキルは水魔法☆☆、気配察知☆☆。

魔物との戦いだけでなくスラムの修羅場も潜り抜けた猛者。

体調さえ万全なら逃げ切れるだろう。


 続けて俺はクラークを探した。

こちらの騒ぎに気付いたのか、

反対側にいた者達が急ぎ駆け付けて来た。

その中にクラークがいた。

どうやら俺には気付いていない様子。

 クラークを尾行し、その足が止まったところで攻略を開始した。

二人目だから迷いはない。

これも妖精アリスの奴隷にした。

 クラークは老人ながらも力は衰えておらず、今もってBランク。

スキルは闇魔法☆☆、契約☆☆の二つ。

獣化☆☆なるユニークスキルも持つ出来物。


 アリスが確認した。

『クラーク、聞こえたら返事して』

『はい、クラークです。御主人様』

『奉行所の連中から逃げなさい。

サンチョと合流して私が呼ぶまで隠れていなさい。

その際、捕まりそうになったら反撃を許可します、遠慮は無用です』

 こちらでも騒ぎになった。

こうなると辺りは、てんやわんや。

収拾がつかない。


 アリスが疑問を口にした。

『どうして私の奴隷にしたの』

『なんとなく』

『それは・・・。

考えもなしなの』

『ごめん』

 サンチョとクラークの魔波を追跡した。

途中、倒されてる奉行所の者が散見された。

殺してまではいない。

サンチョとクラークは逃走が第一と考え、

追っ手への止めは控えているようだ。

 西区画のスラムが騒然としていた。

原因は追われる者と追う者。

スラムの荒っぽい連中を巻き込み、各所で諍いが生じていた。

 俺達は静かな場所に移動した。

アリスが念話で二人に呼びかけた。

『サンチョ、クラーク、生きてたら返事して』酷い言様で、

この辺りの目印になりそうな建物を教えた。


 アリスが真剣な眼差しで俺に尋ねた。

『これからどうするの』

『んー』

『本当に考えなしね、呆れた』

 なので俺は考えた。

俺は何がしたいのか。

はて・・・、冒険者しか思いつかない。

アリスをどうしたいのか。

押し掛けて来た眷属に何を求める。

なにも・・・、思いつかない。

 サンチョとクラークを奴隷にしたのは・・・。

ただ単に自分の力量を試したかっただけ。

その目的は達した。

これからは・・・。

 アリスが素っ頓狂な声を上げた。

『そうよそうよ、そうだよね』

『なにが・・・』

『二人には立派な悪党になってもらおう。

良い考えだと思わない』




★★☆☆★★☆☆

 おはようさん、サンサン。

で・・・。

すみませぬ。

すみませぬ。

整理整頓済みの在庫が尽きました。

なので、申し訳ねえっす。

これよりは週一の更新になります。

 お暇な方は拙者の別の作品にお立ち寄り下さいませんか。

ねえ、下さいますよね。

ほとんど過疎ってるんです。

えっ、寄って下さる。

ありがとうさん、サンサン。

歴史ジャンルです。

「彼方に飛ばされて」でございます。

今朝も更新したばかりです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >侯爵のデューク武田 デュークは公爵。 「侯爵の公爵武田」はさすがにおかしいかと。
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